4月3日から放送予定のNHKの朝ドラ「らんまん」。主人公の槙野万太郎のモデルは高知県出身の植物学者・牧野富太郎である。従って舞台も当初は高知県で、土佐弁を使える高知県出身の広末涼子と島崎和歌子が出演を予定している。
万太郎の母、槙野ヒサを演じている広末涼子は高知市の出身で、実家は市内の繁華街で商家を営んでいた。牧野富太郎の実家は裕福な商家で環境は似ている。
「広末」は西日本一帯に広がっている名字で、とくに大分県、福岡県、高知県、岡山県などに多い。一方、「広末」をひっくり返した「末広」という名字も西日本一帯に広がっており、その分布は「広末」と重なっている。
「広末」や「末広」は子孫が次第に栄えていくという縁起のいい言葉。従って、この名字の由来は地名などではなく、自ら縁起のいい言葉を名字としてつけたものだろう。
「広末」は高知県では奈半利町と田野町に集中している。この2つの町は奈半利川をはさんで江戸時代から栄えた港町で、広末涼子の実家ももとはこの地域の出。商家が名字を名乗る際に、子々孫々まで栄えますようにと縁起のいい「広末」と名乗ったものとみられる。
一方、自由民権運動を支援している「民権ばあさん」楠野喜江を演じる島崎和歌子。「島崎」は全国ランキングで500位以内というメジャーな名字で、沖縄と東北以外に広く分布している。
この「島」とは海の浮かぶ島だけではない。平地の中にある小高い場所も「島」といった。また「崎」とは山の稜線が平地と交わるところ。つまり、「島崎」は平地の中にある小高いところから降りて来た稜線が平地とぶつかる場所を指す。こうした場所は各地にあり、そこに住んだ人が「島崎」と名乗った。
とくに埼玉県、富山県、高知県に多く、人口比でみると高知県が最多。さらに高知県内で最も多いのが南国市で、島崎和歌子も南国市の出身である。
なお、島崎和歌子は「しまざき」と言われることが多いが、正しくは「しまさき」である。というのも、高知県では「島崎」は「しまさき」と濁らずに発音するからだ。
なお、島崎演じる「民権ばあさん」は実在の人物で、実際には楠瀬喜多という。夫が死去して戸主となり、納税もしていたにも関わらず、女性だという理由で参政権が認められなかったことから自由民権運動に参加し、婦人参政権運動を続けた。この「楠瀬」は「くすのせ」と読み、高知県独特の名字である。