つり革に「109」の広告! 高度成長期デビューの東急7000系車両、大阪南部で現役であり続ける理由

新田 浩之 新田 浩之

高度経済成長期にデビューしたJR103系が2023年3月18日をもってJR和田岬線から引退しました。一方、あまり知れていませんが大阪南部には改造を受けながらも高度経済成長期にデビューした元東急車が今でも働いています。

地元密着の水間鉄道で働く元東急車

高度経済成長期にデビューした元東急車が働く鉄道会社とは大阪南部の貝塚市にある水間鉄道です。水間鉄道は南海本線と接続する貝塚駅と水間観音駅を結ぶ全長5.5キロの路線を有します。営業距離5.5キロは全国的に見ても大変短いのですが、駅数は10駅にも及びます。

現在の水間鉄道の主力車両である1000系は元東急7000系を起源としています。7000系は高度経済成長期の1962年に登場。アメリカのバッド社による技術提携により、日本初のオールステンレス車両としてデビューしました。

同車は昭和の東急を代表する車両でした。1990年代初頭になると新型車両の登場により、地方中小私鉄へと転勤しました。地方中小私鉄からすると、メンテナンスフリーなステンレス車体と音が静かな高性能車両が手に入ることもあり、7000系へのオファーが相次いだのです。

7000系が東急から水間鉄道に来たのは1990年のこと。当初は東急時代と同じ「7000系」を名乗っていましたが、2006年より前面行先表示のLED化といった改造を行い「1000系」に変りました。

各地で近代化に貢献した東急元7000系ですが、近年は世代交代により数が少なくなりました。水間鉄道の他には青森県の弘南鉄道、石川県の北陸鉄道で働いています。そのため、年を追うごとに水間鉄道の元7000系が貴重な存在になっています。

実際に水間鉄道1000系に乗車しました。筆者が乗車した車両は中間車を先頭車に改造した車両です。前面行先表示のLED化の甲斐もあり、あまり古さを感じさせません。

一方、車庫に休んでいたオリジナル顔の1000系もいました。余談ですが、水帯のせいか、埼玉県の秩父鉄道に存在した元7000系(秩父鉄道2000系)に似ていますね。

車内は昭和の電車を感じさせるシンプルなつくり。最新車両でよく見かける座席端の仕切り板などがないため、開放感があります。

 水間鉄道に乗ったらつり革にご注目

つり革を見ると、サヤには何と渋谷にあった「ファッションコミュニティ109」の広告がありました。「ファッションコミュニティ109」は1979年に開業し、現在は「SHIBUYA109」となっています。おそらく1980年代の広告でしょうが、デザインセンスの良さが光ります。

そして現在も扇風機は現役です。このように水間鉄道を訪れると、ちょっと懐かしい昭和に出会えます。

終着駅・水間観音駅にある築約100年の駅舎は駅近くにある水間寺の三重塔をイメージしたデザインとなっています。1999年には国の登録有形文化財に指定されました。

関西空港駅から水間観音駅までは南海と水間鉄道で40分ほど。搭乗までの合間に元東急7000系に会いに行きませんか。

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