バンド活動やラジオDJも経験「何もないところから広がっていった芸人人生」 滋賀出身者として初の江戸落語家が若手の頂点に

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 入門15年までの落語家が話芸を競う「公推協杯 全国若手落語家選手権」で、滋賀県大津市出身の三遊亭わん丈さん(40)=東京都豊島区=が大賞を獲得した。滋賀県出身者では初の江戸落語家といい、古典と新作、両方の演目で芸を磨いてきた。「老若男女を笑わせることができる上品な落語家になりたい」と目標を語る。

 大津市の石山高を卒業後、北九州市の大学へ進学した。「人前に立つ仕事がしたかった」と、卒業後は九州を中心にバンド活動やラジオDJをしていたが限界を感じ、2010年に東京で活動することを決意。初めはラジオDJへの近道として落語家になろうとしたが、池袋演芸場(東京都豊島区)で落語そのものに魅了された。

 11年に師匠の故三遊亭円丈さんに弟子入りした。師匠を選ぶため、アルバイトをしながら週に5、6日、寄席に通い詰めた。「師匠は自分が一番笑った人にしようと思い、半年以上かけて選んだ」と振り返る。前座修業を経て16年に「二ツ目」に昇進した。

 同選手権では昨年8月から12月にかけ、若手落語家が予選を行い、3人が本選に進出。今年2月6日に東京都内で行われた本選で、わん丈さんは古典落語「お見立て」を表情豊かに演じ、観客と審査員の投票の結果、頂点に立った。「1番多い時で年間、1200回高座に上がった。何もないところから広がっていった芸人人生だったので、自分を見つけて誘ってくれた人やお客様に感謝の気持ちがわいた」と話す。

 大津市で二ツ目昇進披露公演を開くなどふるさとには特別な思いを抱く。多くの高座に立ち、近江八景など滋賀が題材の演目の復活にも取り組んでいる。「滋賀は大人の町。人が直感的に見て美しいと思うものが詰まっている。滋賀で頑張ってきて、落語が好きな人も増えてきた。もっと広めたい」と目を輝かせた。

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