外国人の日本料理人を招いた実務研修がこのほど、京都市内で行われ、欧米やアジアから参加した12人が老舗料亭などで伝統の技と味を学んだ。新型コロナウイルス禍で3年ぶりの実施となり、和食の本場・京都で10日間の実地研修を終えた海外の職人たちは「コロナでレストラン業界も大変だが、自然の恵みに敬意を払い、おもてなしの精神を大切にする日本の食文化を自分の国にも広めていきたい」と手応えを語った。
研修は、日本食・食文化普及人材育成支援協議会(東京都)が農林水産省の補助を受け2016年から行う。近年はコロナ禍でオンラインのみの研修だったが、今回は米国やブラジル、ポーランドなど8カ国の日本食レストランのシェフらが2月初めに来日した。
日本料理アカデミー(京都市)などを中心に、菊乃井本店、瓢亭、たん熊北店、木乃婦、美濃吉本店竹茂楼、京料理鳥米、万亀楼、魚三楼、中村楼、平八茶屋の京都の計10店が受け入れた。研修生たちは、各店で料理の仕込みやだしの取り方などを実践で学び、伏見の酒蔵や、京野菜の農家なども見学した。
最終日の10日に行われた報告会では、それぞれが得た知識や経験を紹介した。インドで日本産食材を使うレストランのオーナーシェフ、ブレハデーシュ・クマールさん(25)は「インドでは香りや味を強くつけるが、和食は食材の個性を生かしながら邪魔なところを取り除く工夫がされている」と振り返った。
店のしつらえや客とのコミュニケーションなど細部に気を配るもてなしの精神や、チームで協力する職人の仕事を評価する声も多く、フランス出身でオーストラリアが拠点のパティシエ、ジュリエット・ドゥトレローさん(31)は「誰かに言われたからやるのではなく自らやるという姿勢に感銘を受けた」と語った。
12人は菊乃井本店で協議会の村田吉弘会長から修了書を受け取った。ノルウェーのすし店に勤めるオスカー・スタチュラさん(27)は、「日本での貴重な経験を生かし、料理の世界を変えていきたい」と今後へ意欲をのぞかせた。