各地のスーパーで値上がりを続けている卵について、生産者が悲痛な声を上げている。「卵1パック200円台は高すぎ!と言われますが、これ以上値段を叩かないで下さい」。ツイッターでこう発信した背景には、1パック当たりの生産者の利益が2%ほど、というシビアな数字がある。また、販売の激化で値段のたたき合いが行われた結果、「卵=物価の優等生」というイメージが定着した歴史も。収支が見合わずに辞めていく業者も多いという。
卵業界の窮状を訴えたのは、山形県でニワトリの育成、卵の生産、加工品の製造・販売などを手掛ける「半澤鶏卵」の半澤清哉さん(28)。スーパーや外食業の担当者に「急に値段が上がって、絶対に儲けているでしょ」と言われるという。スーパーで視察中には、買い物客同士が「卵高すぎ」「ぼったくりすぎ」と話す声がよく聞こえてくることも。卵産業の現状を知ってもらいたく、ツイッター上で発信した。
実際の利益は2%あれば、いいほうだ。現在、半澤鶏卵の従業員は60人超で、3カ所で5万羽のニワトリを飼育している。スーパーで卵10個入り1パックを200円で売る場合、店にもよるが、スーパーの利益は約15%、配送コストは約5%。卸売り価格は160円になる。そこからコストを差し引く。
半澤さんによると…生産農場(鶏舎やその設備の償却費、設備更新費、雛代、飼料代、ワクチン代、検査費用、水道代、ガス代、電気代、配送費、人件費等)、パッキング工場(洗卵選別&パッキングの設備償却費、設備更新費、資材費、検査費用、水道代、ガス代、電気代、配送費、人件費)、その他(販管費、営業経費、建物償却、水道代、ガス代、電気代、人件費等)-がコスト一覧。「スーパーに卵が1つ並ぶだけでも多くのコストが掛かってきています」と話す。
値段のたたき合いで「物価の優等生」が定着
ではなぜ、卵は「物価の優等生」と言われてきたのだろうか。販売シェアを奪い合う競争が激化し、スーパーに取り引きしてもらうために卸値や販売価格を下がっていった。平成初期に1万件ほどあった養鶏場は、今は1800件に減少。そのため、卵は特売の目玉品として安いイメージが定着しているという。半澤さんは「小中規模の生産者にとっては収支が合わずに、辞めていかれるケースが多くなっている」と説明する。
値段高騰の一因である鳥インフルエンザについては「1羽でも発生したら一緒の区域で飼育していたニワトリは全て殺処分対象になる。売り上げは1年近くゼロになります」と説明。卵をおいしいと言ってもらえるのはうれしいこととしつつ「適正な価格で取り引きできる世の中になってほしい」と理解を求める。