「期待したことをやってない」現在のAIの在り方に疑問を呈すツイートに共感の声 人間はAIとどう付き合うべき?

竹中  友一(RinToris) 竹中 友一(RinToris)

近年、目を見張る革新を遂げているAI技術ですが、GUNKAさん(@gunka0111)はそんなAIについて疑問を呈するツイートを投稿。大きな反響を呼びました。

GUNKAさんは、「AIにやってほしいこと」と「AIがやってること」をそれぞれ挙げて比較。

【AIにやってほしいこと】
 ・飯を作る
 ・家の掃除をする
 ・服を洗濯して干して畳む
 ・ゴミを出す
 ・猫のクソを捨てる
 ・面倒で時間がかかる手続き諸々
 ・労働をして金を稼いでくる

 【AIがやってること】
 ・おしゃべり
 ・お絵描き
 ・執筆
 ・作曲
 ・ゲーム

確かに、人間がAIという技術に元来求めていたこととは、本来大変な仕事や作業を代わりに行ってもらうことにより、より楽に快適に暮らせるようにしてくれることでしょう。ですが、現在AIが行っているのは、人間の趣味やクリエイティブな要素の部分が大きいイメージがあります。

例えば、最近話題になっているAIイラスト。これまで、人間が一生懸命に考え、時間をかけて作ってきた絵やデザインが、AIによって簡単に短時間で作成できるようになってしまいました。

GUNKAさんは、この現状に対して、「ひったたくぞ」と素直な感情を吐露。

なお、今回のツイートについて「私自身AIに対して知見があるわけではなく、なんとなく昨今のAIを見て思った感想レベルのもの」ともGUNKAさんは話されています。しかしながら、その指摘は鋭く、リプ欄にも共感の声が。

「人間が働いて、AIが趣味をしてくれる」
「逆になる予定だったのに」
「なんでよりにもよって想像力のいるところをAIがやって単純作業を人がやることになってるんですかね」

AIに対しての疑問についてつぶやいたGUNKAさんのツイート。

確かに、「人間の作ってきた芸術をAIに取って代わられる」という風潮には、少々危機感を覚えます。GUNKAさん自身もTwitterやpixiv等でイラスト制作を行っており、だからこそツイートにあるような気持ちを抱かれたのかもしれません。

しかし、だからといってAI技術の発展を止めることはできません。今後、AIの創造性などの技術が上がることで、人間は居場所を失ってしまったりはしないのでしょうか。

AIを創作に取り入れているクリエイターはどう考える?

実際にAI技術を取り入れた創作活動を行っている方は、現状をどのように感じているのでしょう?

漫画原作者として実際の漫画家の方とタッグを組んだ作品も生み出しつつ、最近では「Midjourney」という画像生成ソフトを使った漫画制作も並行して行っているRootportさん(@rootport)にお話を聞きました。

まず、Rootportさんは「画像生成AIがあれば人間の漫画家やイラストレーターは不要だとは、私は思いません」と話します。

――AI技術の向上するなか、人間の役割がなくならないと思われる理由は何でしょうか?

Rootportさん:芸術や娯楽は、運輸や通信とは違います。たとえば自動車があれば馬車はいりません。飛行機があれば飛行船はいりません。インターネットがあれば伝書鳩は不要です。ところが、写真が発明されても画家は絶滅しませんでした。ラジオやレコードが発明されても、歌手やオーケストラは絶滅しませんでした。テレビが普及した今でも、映画は興行成績を塗り替え続けています。スマホでNetflixやYouTubeを見られる時代に、日本では「落語」という伝統芸能が愛され、「落語家」が職業として成り立っています。どうやら芸術や娯楽は、技術革新に対する耐性が高いようです。

――イラストや漫画でも同様のことは言えるでしょうか?

Rootportさん:AIは美麗なイラストを高速で大量生産するのは得意です。ですが、人間の感情に訴える絵を描くのは、やはり同じ人間の方が得意なのです。

――しかし、それでもAIによって、人間のクリエイターの存在意義や在り方は変わってくる気もします。

Rootportさん:技術革新は産業の構造を変えます。すべてが今まで通りというわけではありません。過去にも、写真の登場により「肖像画家」の仕事がなくなったり、テレビの登場により「報道映画」というジャンルが消滅し、ドキュメンタリー映画というジャンルに吸収されたりといったことがありました。昨今の画像生成AIでいえば、一部のソシャゲのイラストに見られるような「できるだけ個性を抑えたイラストを大量生産する」という職業の需要は、残念ながら失われるはずです。AIの発達を前にして「安全地帯」はほぼありません。私たちはみんな、新しい世界に適応することを余儀なくされるでしょう。

――そのような状況のなかで、今後人間はAIとどのように関わるべきなのでしょう?

Rootportさん:ずいぶん前から、チェスや囲碁や将棋などのボードゲームの世界では、人間はAIに勝てなくなりました。ところが現在、これらボードゲームの世界でもっとも優秀な成績を収めるのは、人間でもAIでもなく「人間とAIの共同チーム」だそうです。同じことが、今後、世の中のあらゆる場所で起きると私は考えています。漫画原作者も漫画家も、いずれはAIに勝てなくなるでしょう。しかし、その時代にもっとも優秀な成績を収めるのは、AIでも人間でもなく、「AIを味方につけた人間」だと私は予想しています。

  ◇  ◇

Rootportさんは「いつかの日か、すべてのクリエイティブな活動をAIに奪われるときが来るかもしれません。しかし落語が誕生して数百年経った今なお残り続けていることを考えれば、その日が来るまでにも数百年は猶予がありそうだと、私は思います」とも。

遠い未来のことはともかく、今はまだまだ人間が活躍できる余地は残されていそうです。我々人間も希望を捨てず、AIを味方にもつけながら、取り組みを続けていくことが大切なのかもしれません。

Rootportさんは現在、Midjourneyで作画した漫画作品、『ガラテア・プリクエル』をTwitterで随時公開中。女性が絶滅してしまった超未来の世界を舞台に、「捨てられたアンドロイドの女の子を幸せにする話」とのことです。

さらに、同じくAIとタッグを組んで制作された『サイバーパンク桃太郎』が、Web漫画サイト「くらげバンチ」にて連載中。3月9日より単行本も販売されています。

■GUNKAさんのTwitterはこちら
 →https://twitter.com/gunka0111

■GUNKAさんのpixivはこちら
 →https://www.pixiv.net/users/4095791

■RootportさんのTwitterはこちら
 →https://twitter.com/rootport

■Rootportさん画像生成AIを駆使して制作した『サイバーパンク桃太郎』はこちら
 →https://kuragebunch.com/episode/4855956445075094973

■『サイバーパンク桃太郎』の単行本はこちら
 →https://www.amazon.co.jp/Rootport/dp/4107725731

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