京都府京田辺市の近鉄新田辺駅前の電柱に、何か止まっている。「フクロウ」に見えるが、動く気配はない。通りすがりの人がたまに存在に気付き、不思議そうに見上げている。その正体は—。
実は、耳がある方のミミズクの模型。高さ約40cmのポリエチレン樹脂製で、本物そっくりに作られている。ムクドリなどの鳥害対策として関西電力の関連会社が設置し、昨年7月から、3代目が見張り役を担う。
フクロウは、ムクドリやスズメ、セキレイなど小鳥たちの天敵。電柱に模型を置くことで、小鳥が周辺を飛び回り、電線に止まることを防ぐ効果があるといわれる。全国各地で設置され、山城地域には現在、新田辺駅のほか、近鉄小倉駅近くにも置かれているという。
京田辺市環境課によると、新田辺駅一帯では、2008年ごろからムクドリの大群が飛来するようになった。ムクドリは留鳥で、春に産卵期を迎えた後、6月以降は集団でねぐらを作る習性がある。6~11月ごろまでの期間は同駅周辺をねぐらとして、夕方になると集まってくるとみられている。
この辺りは人通りや店舗が多く、市民らから糞や鳴き声への苦情が絶えない。市は、街路樹の枝の伐採や光や音を使った対策を試みるものの、鳥たちは止まる場所を変えていく。ミミズクの模型は19年6月から置かれたが、その存在にも慣れてしまったようだ。「あの手この手で対策を講じてきたが、もう手詰まり」(市環境課)と頭を抱えている。
新田辺駅の徒歩圏内には住宅地が広がる。同課は「追いやった鳥の被害が、市民生活に影響を及ぼしてしまうことは避けなければならない」と、鳥害防止へ模索を続ける。