松江フォーゲルパーク(松江市大垣町)にいる大型の鳥、ハシビロコウの「水を飲む姿」が、SNSで反響を呼んでいる。フォーゲルパークのハシビロコウは以前にも、くちばしをカタカタと打ち鳴らす音が「まるで銃撃戦のよう」と話題になった。再び注目を集めているハシビロコウについて、担当者に話を聞いた。
「こぼしすぎ」な動画が話題に
ハシビロコウの名前は「フドウ」。動画は「豪快に水を飲み、盛大にこぼすハシビロコウです」という文章とともに2022年12月末、松江フォーゲルパークの公式ツイッターに掲載された。大きなくちばしで水槽から水をすくい、ごくごくと飲む…と思いきや、上下のくちばしの間からビシャビシャと水が大量にこぼれている。
勢いよく水を口に含み大量にこぼしながら飲むフドウの姿は早速、多くの人の注目を集め「飲んでないじゃーん!」「飲んだ以上に水こぼしてない?」「思わず笑みが」といったコメントが寄せられた。ツイートは1月27日現在、約2万件の「いいね」が付き、リツイート数は8千件を超える大バズりになった。
フドウが水を飲む動画は、松江フォーゲルパークの飼育員が撮影した。飼育員やスタッフにとって、フドウが盛大に水をこぼしながら水分補給をするのは見慣れた光景だったが、やはり「飲めているの?」との疑問はあったという。
松江フォーゲルパーク営業部営業・企画課の山田篤(あつし)さん(42)は「ちゃんと飲めているのかな?と、自分と同じように疑問を持つ人がいると分かった。楽しい、笑った、元気が出たといったコメントもあって、うれしかった」と頬を緩めた。
「水を飲めているのか?」という疑問については「満足している様子なので、飲めてはいると思う」(山田さん)と近くで観察する担当者ならではの解説。きちんと水分補給できているのなら、ひと安心だ。山田さんは「ハシビロコウのほかにもペリカンなど、くちばしが大きい鳥は基本的に同じように飲むのではないか」と話した。
フドウが水を飲むのは食事の後が多く、山田さんは「1日に数回は飲んでいるのでは」と話した。しかし、餌はフドウが食べたいタイミングで食べるため、水を飲んでいる姿に出会えるのは少し難しそうだ。
珍しい? 動き回るフドウに遭遇
取材当日、フドウはぐっすりとお昼寝中だった。ハシビロコウは寒さが苦手とのことで、今回は水を飲む姿はおろか、動いている姿は見られなさそう…と少し寂しい気持ちになる。取材を終え、帰りに再び展示ブースに目をやるとフドウが目覚め、壁側を向いてじっと立っていた。起きている!
「起きた直後はウオーミングアップがてら、いろんな動きをすることが多いです」という山田さんの言葉に心を踊らせながら、フドウの動きを見守った。
間もなくフドウは「ダダダダッッ」と特徴的な音でくちばしを打ち鳴らす「クラッタリング」や、おじぎのような仕草をした。クラッタリングやおじぎの仕草は、ハシビロコウが求愛や威嚇の意を表すための動作とされ、山田さんは「ブースの後ろに飼育員がいるので、それに反応しているのだと思う」と教えてくれた。
昼寝から目覚めたフドウはほかにも、ふわりと羽を広げて羽ばたいたり、歩いたりと、迫力あふれる様子を見せてくれた。「動かない鳥」が動き回る、貴重な光景を見ることができた。
やわらかめに仕上がった「鏡餅」も人気
松江フォーゲルパークの投稿でもう一つ「バズった」のが、真っ白でふわふわの小型鳥・コールダックを鏡餅に見立てた写真。「今年の鏡餅は例年よりやわらかめに仕上がりました」の言葉とともに添えられたのは、柔らかそうなコールダックが台の上に座った写真。真っ白な羽と、オレンジ色のくちばしは確かに、鏡餅を思い起こさせる色合い。ふわふわで、もちっとしていそうな見た目も餅にそっくりで、思わず触れたくなる。
ツイートは1月27日現在、約18万件の「いいね」が付き、4万件近くがリツイートされている。投稿には「モフモフしたい」「おいしそう」といったコメントが付き、ふわふわの「鏡餅」が多くの人の心を癒やしていることがうかがえる。
コールダックによる「鏡餅」は約10年前から行っている恒例行事。園内の広場に鏡餅を乗せる台の三方を置き、上にコールダックを乗せて展示している。今年は1月2~9日の8日間、毎日30分ずつ展示した。
フォーゲルパークの温室には5羽のコールダックがいて毎年、台に乗せた時の落ち着きの度合いや体の形、「もちもち具合」などを踏まえてスタッフが「鏡餅役」を選出している。今年の鏡餅に採用されたのはメスの「しらたま」(8歳)。しらたまは4~5年前から鏡餅役を担っていて、山田さんは「活発な性格だが、台に乗せると10分ほどでおとなしくなるため、(鏡餅に)適役」と言う。同じようにふっくらとした体形の「おもち」(メス、8歳)も、鏡餅に起用されたことがある。
昨年の「鏡餅ツイート」も人気があったものの、今年は約18万件のいいねが付くなど特に注目された(昨年は約10万件)。山田さんは異例の「バズり」に驚きながらも「ツイートを見て“鏡餅”を見に来てくれたような人もいた」と、うれしそうに話した。コールダックによる「鏡餅」は今後も続ける予定という。
松江フォーゲルパークがSNSに投稿する写真からは鳥たちの愛らしさ、面白さだけでなく動植物を日々、見守っている飼育員やスタッフの愛情が伝わってくる。今後のツイートも楽しみだ。
松江フォーゲルパークは午前9時~午後5時開館。夏季(4月1日〜9月30日)は午後5時30分まで。年中無休。