「一緒に暮らしたい」と心に決めた野良猫…でも、どう捕獲すればいいの? ご飯をあげ続けて2週間…秘策は「唐揚げ」

ふじかわ 陽子 ふじかわ 陽子

和歌山県で暮らす猫の独歩くん(推定8歳)は、パトロールが日課です。家の中をのしのしと歩き、窓からお外もチェック。何事もないと確認できたら、今度は家で仕事をするお母さんの膝でお昼寝です。お母さんでライターの二階堂ねこさんは、そんな独歩くんが可愛くてたまりません。

独歩くんはただ可愛いだけでなく、お母さんがつらい時に心へすーっと入ってきてくれた猫なのです。

多忙から離れた時、目に飛び込んできた猫

2018年春、お母さんは長年勤めた会社を体調不良のために退職する運びとなりました。とてもやりがいがあり、楽しく打ち込んでいたんです。しかし、それがあだとなります。忙し過ぎて、気付けば体がボロボロに…。

ぽっかりと心に穴が空いた時、家の周りに猫がいることに気付いたのです。何だか、慰めに来てくれたように感じました。この猫はキジ白柄で、とても不思議な雰囲気を持っています。

お母さんは「いずれ一緒に暮らしたい」、そう考えるようになりお父さんに相談。お父さんはお母さんが前向きになってくれたのが嬉しく、猫を迎えることに賛成してくれました。

でも、当の猫との信頼関係は築けていません。いきなり「うちにおいで!」と声をかけても、来てくれるはずもなく…。まずはご飯をあげてみることにします。近くに専用のトイレも置いて。

猫の名前は、お母さんの好きな作家の国木田独歩から「独歩」と名づけました。とても独立しているようにも見えたからです。

タオルを撫でて、猫と暮らすイメージトレーニング

独歩くんはお母さんが出したご飯に気付いてくれ、毎日食べに来てくれるようになりました。でも、触らせてくれません。お母さんは遠目に独歩くんを見ながらタオルを撫で、独歩くんとの暮らしを夢見ています。小学生の一人娘もまた、独歩くんとの暮らしを心待ちにしていた一人です。母娘で庭の独歩くんを微笑ましく眺めていました。

ご飯が食べ終わったら、お母さんはお皿を片付けてトイレ掃除。時々、使ってくれないこともありましたが、毎日清潔にしてあるので独歩くんも分かってくれたよう。徐々に独歩くんとお母さんの距離は縮まっていきました。

しかし、ここで重大な問題が発覚します。お父さんもお母さんも、野良猫の捕獲をしたことがなかったのです。このままなら、我が家はただの食堂になってしまう。

お母さんは近くの保護猫団体「城下町にゃんこの会」に相談しました。独歩くんと出会い3カ月ほど経過した時のことです。

授けられた秘策

城下町にゃんこの会は親身に相談に乗ってくれ、捕獲のアドバイスをくれました。秘策も教えてもらったんです。

お母さんはアドバイス通り、キャリーケースの中にご飯を入れます。独歩くんは警戒しつつ、キャリーケースに頭を突っ込んでご飯を食べてくれました。後ろ足を外に出したままだったんです。さすが野良猫。リスク管理が出来ている。

しかし、お母さんには授けられた秘策があります。その秘策を実行する前に動物病院へ連絡。「今日、連れていきます」と。

そして、秘策を実行する時が訪れました。キャリーケースの中でご飯をあげ始めて2週間が過ぎていました。お母さんはある物をキャリーケースに入れたのです。

その「ある物」とは唐揚げ。猫が大好きで香りも強い。しかも小さいですから、キャリーケースに入らざるを得ません。独歩くんもまた唐揚げに大喜びをし、キャリーケースにすっぽり収まって唐揚げを堪能します。

「裏切ったな!」

この瞬間をお母さんは逃しません。キャリーケースの蓋をパタッと閉め、そのまま車に載せて動物病院へ向かいます。キャリーケースの中の独歩くんは「裏切ったな!」と言わんばかり大暴れ。車内でキャリーケースから脱出しますが、今度は洗濯ネットに入れられ再びキャリーケースに。

動物病院での独歩くんの様子は、それはもう気の毒なぐらい落胆していました。お母さんのことを信頼していたのに、こんな所に連れてくるだなんて大ショック。去勢手術から逃れようと、お母さんに同行していた娘を踏み台にまでしたんです。

いくら逃げても、ここは動物病院。手練手管の獣医師と獣看護師から逃れられるはずもありません。あえなく独歩くんは捕獲され、去勢手術を受けることに。

手術は無事成功、麻酔が効いているうちに爪も切ってしまおうと、獣医師が爪切りを始めた途端に覚醒。診察室のパソコンのマウスを引っかけたまま、逃亡を図りました。すごく元気です。

新しいテリトリーは家の中

お母さんはこれからの独歩くんとの暮らしに一抹の不安を覚えながら、家へ連れて帰ります。独歩くんはケージの中でしょんぼり。けれど、しょんぼりしている間も、お母さんが出してくれたご飯はしっかり食べます。

3日ほどで自分からケージを出て、家の中を散策。お外に出ようとすることはありません。新しいテリトリーは家の中だと理解したよう。その後は毎日のお家パトロールが日課になりました。

独歩くんは名前の通り独立心が強く、あまり人間と遊んでくれません。抱っこは嫌いだし、可愛い写真もNG。でも、フリーランスとして第2の人生を歩み始めたお母さんを応援するように、いつもデスクのそばにいてくれるんですよ。

こうやって支えてくれる独歩くんに、お母さんはこう言いたいんですって。

「家族になってくれて本当に感謝しています。ありがとう」

独歩くんはきっと「あたりまえだろ」なんて顔をするでしょうが、お尻はお母さんにくっつけているはず。

そんなツンデレ猫の独歩くんもまた、お家猫として第二の「にゃん生」を歩んでいます。独りでいたお外生活とは違い、今はお母さんをはじめ家族と共に。

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▽飼い主さん(二階堂ねこさん)
https://twitter.com/nikaidoneko

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