「前任校で妊娠した生徒がいました」ある高校で紹介されたエピソードが話題「責めるより寄り添って」 避妊や中絶についての教育も必要

渡辺 陽 渡辺 陽

2013年4月から、HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)は、12〜16歳の女子を対象に定期接種が行われるようになりました。12歳といえば小学校6年生か中学1年生ですが、最初の性交渉を行う前に接種して、感染を予防するという目的があります。

これは、10代の女子が妊娠する可能性もあるということを意味しています。もし妊娠したら…というのは本人の問題でもありますが、周囲の人はどう受け止めればいいのでしょうか。

元保健室の先生で、現在はフリーランスの性教育講師をしているというにじいろさん(@beingiscare)は、実際に経験した話として、Twitterにこんなエピソードを投稿しました。

「『前任校で妊娠した生徒がいました』。私の性教育講話が終わった後、ある先生がマイクを持ってこう話し始めた。その後に続いた言葉が予想外だった。『みんな、もし周りの友達が妊娠したら、あかんやんって責めるんじゃなくて、その子に寄り添ってほしい』と」

さらに、にじいろさんは、

「性教育後の先生のまとめの話は、どうしても『気をつけましょう』といった内容になりがち。それも分かるし、『何かあったら相談してね』も大切やけど、周りの人がどうするかという視点での話は新鮮で、とても印象的だった。私も同じ思いなので嬉しかった」

と続けました。

その妊娠した生徒は周りに良い友達がいて、無事に出産、卒業したそうです。

頭では理解できても、実際に「寄り添う」ことはできるでしょうか。にじいろさんにお話を聞きました。

—実際に妊娠に関する相談はありましたか。

「『妊娠したかも』という相談は結構ありました。結果的に妊娠していないことの方が多いですし、妊娠していても出産より中絶のほうがずっと多いのですが。高校教員をしていると多かれ少なかれ経験することだと思います」

—妊娠や中絶に関する教育は十分行われていますか。

「十分とは言えません。基本的に日本の義務教育では避妊や中絶は学びません。実際に起こり得る問題として生徒に話しておく必要があると思います。高校の保健の教科書にも避妊や中絶のことが書かれていますが、現実的な情報が不足しています」

ーー知らないまま妊娠してしまうのでしょうか。

「高校生であってもなくても、今妊娠を希望していないのなら、避妊するのがベストだとは思います。でも、100%確実な避妊は存在しません。高校生でも大人でも意図せぬ妊娠は起こりうるものなので、誰であっても必要なサービスや保護を受けられることが大切です。特に高校生には批判ではなく支援が必要だと思います」

ーー「あかんやん」と批判されたら辛いでしょうね。

「責められたり否定されたりすると、心を閉ざしてしまうことが多いのです。どうしたらいいのか分からなくて、誰にも言えない、誰も分かってくれないと絶望的な気持ちになってしまいます。その結果、最悪の場合は新生児遺棄や自殺につながる可能性もあります。寄り添ってくれる人(味方)がいれば、冷静に考えたり、いくつかの選択肢の中から自分で選んだりすることができると思います」

—選択肢について知らない子が多いのでは。

「『産みたい』と思っても、産むなら何が必要か、どんな困難があるかということが、高校生では想像しにくいでしょう。選択肢を教えることも欠かせません。産んで自分で育てる、産んで託す(特別養子縁組など)、人工妊娠中絶、それぞれのことをある程度知ってから生徒が自分で決め、最終的にどの選択をしても支援することが大事です」

妊娠するからには父親も存在するわけですが、にじいろさんは「確かに逃げたりするような残念な男性もいますが、決してそんな男性ばかりではありません」と言います。10代の女子はもちろん、男子にも手を差し伸べてくれる人が必要でしょう。

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