阪急宝塚線、日中に特急が走らない理由 神戸本線や京都本線と異なる独特の路線環境がネック

新田 浩之 新田 浩之

阪急宝塚本線(大阪梅田~宝塚)には他の阪急線と同じく、多くの種別が存在します。しかし、日中時間帯には特急が存在しません。なぜでしょうか。

日中時間帯には特急がない宝塚本線

宝塚本線には5つの種別(普通、準急、急行、通勤特急、特急日生エクスプレス)が存在します。このうち、特急系種別は2種類(通勤特急、特急日生エクスプレス)です。

通勤特急は平日朝ラッシュ時、特急日生エクスプレスは平日朝夕ラッシュ時に運行されます。運行区間は通勤特急が川西能勢口→大阪梅田、特急日生エクスプレスは川西能勢口駅から能勢電鉄線に乗り入れ、大阪梅田~日生中央間です。つまり、特急系種別は日中時間帯に運行されないどころか、宝塚駅にすら乗り入れません。

日中時間帯に宝塚駅に乗り入れる優等種別は急行です。急行の停車駅は十三、豊中~宝塚間の各駅となり、急行区間は全体の半分にも達しません。

おなじく「本線」と名の付く神戸本線や京都本線は全線にわたって日中時間帯であっても特急を運行します。

過去には特急を運行していた時期も

過去には日中時間帯にも特急を運行していた時期がありました。2000年6月に一部区間の高架化に伴い、ダイヤ改正を実施。日中時間帯に梅田(現大阪梅田)~宝塚間を走る特急を20分間隔で設定し、急行と交互に運行しました。

停車駅は十三、豊中、石橋(現石橋阪大前)、池田、川西能勢口、山本です。梅田~宝塚間の所要時間は現在の急行よりも4分短い29分でした。

しかし、運行開始からわずか3年後の2003年8月ダイヤ改正にて、特急と急行を統合する形で快速急行を新設。これに伴い宝塚本線を走る日中時間帯の特急はわずか3年で終わりました。

快速急行の停車駅は特急停車駅に蛍池駅と雲雀丘花屋敷駅が追加され、豊中~山本間は連続停車に。ところが、快速急行も短命に終わり、2006年10月ダイヤ改正で廃止されました。

特急が設定しにくい路線環境

2003年8月に特急が廃止された一因として、日中時間帯の雲雀丘花屋敷~宝塚間にて特急通過駅での運転間隔の不均衡が挙げられました。また快速急行の廃止では山本~宝塚間の乗客の少なさが取り上げられました。

これ以外に考えられるのは1日あたりの乗降客数がずば抜けて多い駅がないことです。宝塚本線における1日あたりの乗降客数3万人弱~4万人の中間駅は豊中駅(36843人)、蛍池駅(29812人)、石橋阪大前駅(32381人)、池田駅(34461人)、川西能勢口駅(32651人)で、5駅連続となります。

一方、十三駅を除き4万人を超える中間駅はありません。5駅連続止まる列車に「特急」と命名するのは厳しいでしょう。

また川西能勢口~宝塚駅間の中間駅5駅の間に乗降客数の差はそれほどありません。最も多い山本駅と最も少ない清荒神駅の差は約7000人です。この差を持って停車駅を選定すると、通過駅には不満が残ることでしょう。

参考までに神戸本線西宮北口~神戸三宮間の中間駅において、乗降客数が最多の駅と最少の駅の差は約13000人です。

二つ目は終着駅ターミナルの規模が小さいことです。終着の宝塚駅がある宝塚市は20万人ほど。宝塚駅の乗降客数は33870人で、阪急全体で14位です。

つまり宝塚本線は神戸本線や京都本線のように大都市と大都市を結ぶ路線ではない、ということがわかります。

他2路線と比較すると終着駅に向かう乗客の流れは強くありません。むしろ、大阪梅田駅から中間主要駅へ向かう需要が高いのです。

三つ目は追い越しができる主要駅がないことです。特急をはじめとする優等列車を設定する場合は普通と連絡できる追越駅が必要です。

ところが、先述した主要5駅のうち、上下線で追い越し設備を有する駅はありません。優等列車と普通が接続するダイヤが組みづらく、特急通過駅の乗客に不便な思いをさせてしまいます。

このようなことから、宝塚本線では日中時間帯に宝塚駅に向かう特急が設定されないと結論づけられます。 

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