6年間ケージの外に出るのは繁殖のときだけ お手もお座りもしなくていい…心優しい飼い主が見つかり第2の犬生へ

松田 義人 松田 義人

元繁殖犬で保護団体に助けられたチワワのコハクちゃん。保護当時かなり痩せ細っており、帝王切開の痕や乳腺腫瘍も見つかり、苦しい生活をしていたことが想像できました。保護団体の方によれば、「6年間ケージから出たことがなかった」とも。

このコハクちゃんを迎え入れ、第2の犬生のサポートをすることになったのが現在の飼い主さん、mimaryo1970さんでした。

抱っこしてみて「なんかビビッときた」

mimaryo1970さんは、2020年6月、「保護犬の柴犬を迎え入れたい」と、保護犬譲渡会に出向きました。どうも柴犬は人気がある様子で、お目当てにしていたワンコには別の方にトライアルが決まりました。

「そっかー」と少々肩を落とし、他の保護犬たちを見て回りましたが、一頭の小さなチワワのワンコが目に入りました。ケージの中でジッと固まり一点を見つめています。

保護犬譲渡会のスタッフに「抱っこされますか?」と声をかけられ、mimaryo1970さんがおそるおそるそのわんこを抱き抱えてみると、「なんかビビッときた」と思ったそうです。

果たして、mimaryo1970さんはすぐにトライアルを希望し、ペットシーツなどの消耗品も揃え、その日のうちにコハクちゃんを家に迎えいれることにしました。 

6年間のうち、ケージから出されるのは交尾するときだけだった

コハクちゃんは、琥珀色の毛色をしていることからこの名で呼ばれていました。mimaryo1970さんと出会う前、預かりボランティアさんの家で半年ほどを過ごしながら、譲渡先を探していたようですが、一度別の家庭でトライアルに失敗しているとも。

その話を聞いたmimaryo1970さんは「どうしてだろうか」と少々不安に思ったそうですが、

実際に迎え入れたコハクちゃんは極めて大人しい様子。むしろ「ここはどこ? また知らない場所に連れて来られたのかな」と不安そうな表情を浮かべており、ケージの上から手を伸ばして抱き上げようとすると震えて怖がります。

冒頭でも触れた通り、コハクちゃんは6年間ケージの中からほぼ出たことがなく、外に出されるのは「繁殖のためにオスと交尾をするときだけだった」と言います。

その過酷すぎたであろう生活を想像すると、コハクちゃんが抱き上げられることに恐怖に感じることもよくわかり、そしてmimaryo1970さんは心を痛めました。

手術の結果、コハクちゃんの乳腺腫瘍は良性だった

mimaryo1970さんは正式にコハクちゃんを迎え入れる決意をしました。保護時に確認された乳腺腫瘍については、保護団体が費用を負担してくれることとなり、迎え入れてまもなく、コハクちゃんは手術をすることになりました。

手術が決まってからmimaryo1970さんは「お願いだから良性の腫瘍であってほしい」「コハクちゃんができるだけ苦しまない手術であってほしい」と毎日祈り続けたと言います。

果たして手術を受けたコハクちゃんですが、乳腺腫瘍は良性で、mimaryo1970さんはホッと胸を撫でおろしました。同時に「コハクちゃん、ごめんね。痛かったね。でも、よくがんばったね」と優しく撫でてあげ、当面はコハクちゃんの心身にできるだけ負担がかからないよう努めて接するようにしました。

「うちの子になって幸せですか? お母さんは幸せです」

手術の際の抜糸も終え、正式にmimaryo1970さんのお家の子となったコハクちゃん。mimaryo1970さんの気持ちが通じたのか、次第に心を開くようになりましたが、それでも数ヶ月、一度も鳴き声を発しません。そして、劣悪な環境で育ったせいなのか食糞するクセも抜けません。それでもmimaryo1970さんは「何をしても怒ったりしないよ」とコハクちゃんに心を寄せました。

そして、家に来てから数ヶ月経った頃、mimaryo1970さんはコハクちゃんにこんな言葉を寄せました。

「保護団体の方に命を繋いでもらって良かったね。預かりボランティアさんも優しくしてもらって良かったね。うちの子になって幸せですか? お母さんは幸せです。『お手』『お座り』……何にも出来なくても傍に居てくれるだけでお母さん 、お姉ちゃん。お兄ちゃんは幸せやでな」

まだ完全ではないものの、少しずつ心を許すようになった

あまりに長く過酷だった生活を経験したコハクちゃんは、まだ警戒心があるようで、完全には心を開いてくれません。でも、少しずつ心を開いてくれはじめ、顔を近づけてくれるようになりました。また、mimaryo1970さんの息子さんがパンを食べていると近寄っていくようになったり、mimaryo1970さんが外出すると、プンとスネた表情になることも。「こんな、ちょっとした変化がすごく嬉しい」とmimaryo1970さんは言います。

これから先も、コハクちゃんがmimaryo1970さんのことを「本当の家族なんだ」と認識し、完全に心を開いてくれるまでは時間がかかるかもしれません。しかし、mimaryo1970さんの元であれば、コハクちゃんの生活がずっと温かく、そして幸せな日々になることは間違いないはずです。

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▽ブログ「保護犬コハクとの日々」
https://ameblo.jp/mimaryo1970/entry-12774289327.html

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