床の間のフェルメールは本物それとも偽物? 実は「アートのクローン」 制作の東京芸術大名誉教授に聞いた

浅井 佳穂 浅井 佳穂

 床の間に飾られたフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」やマネの「笛を吹く少年」。どこからどう見ても本物そっくり。素人目には本物か偽物かは判断がつきません。そんな芸術品の「クローン」を展示する作品展が、京都市下京区にある東本願寺の飛び地境内「渉成園」(枳殻邸)で開かれています。

 会場には約30点が並んでいます。いずれも最新技術を生かし東京芸術大学が開発した「クローン文化財」やその進化形の「スーパークローン文化財」「ハイパー文化財」です。

 展示開催に携わる東京芸術大の宮廻正明名誉教授によると、これらのクローンは、高精細の写真を精密に撮影し、さらに東京芸術大の学生らが実際に油彩をするなどして再現したといいます。

 目を引くのはフェルメール作品。本物はオランダの美術館にありますが、会場ではガラスもなく目の前で見ることができます。パリのオルセー美術館所蔵のモネによるスイレンをモチーフにしたシリーズの初期作「睡蓮の池 緑のハーモニー」も顔を近づけられます。マネの「笛を吹く少年」は絵画のクローンだけでなく、その描かれた少年を絵画から再現し立体にした「スーパークローン」の作品まであります。

 現存しない絵画のクローンもあります。ゴッホが手がけたヒマワリの作品群の中でも「芦屋のひまわり」と呼ばれる絵画は太平洋戦争中の空襲で焼失。空襲以前に撮影された写真をもとに復元され21世紀の私たちが見ることができます。

 このほか、法隆寺の釈迦(しゃか)三尊像を3Dプリンターで出力し彩色を細密に再現した仏像や、同じ釈迦三尊像をガラス製で造った進化形の「ハイパー文化財」もあります。

 しかし、本物とそっくりのクローンを作る意味はどこにあるのでしょうか。宮廻名誉教授は「クローンであれば警備上の心配はそこまで必要ありませんし、温度や湿度の管理にも気を配る必要がありません。そのため、美術館でない場所でもガラスなしで展示することができるのです」と話します。一方で、クローンのため専門家でも本物と見分けが付きにくいそう。「そのため管理は厳格にしないといけません」と宮廻名誉教授。

 気軽に海外に行くことができない現在、こうして名品とうり二つの作品を間近に見られるのは貴重な機会かもしれません。

 渉成園での展示「こうりん-クローン文化財上洛」は29日まで。入園には庭園維持寄付金(500円以上)が必要です。

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