紅梅しょうゆ(島根県雲南市)が製造、販売する地元産コシヒカリの米麹(こうじ)と本醸造しょう油で作った鍋の素「コブクロちゃん」が、人気男性デュオのコブクロと同名だと話題になり、全国的に注目を集めている。商品を紹介した山陰中央新報デジタル(Sデジ)の記事を会員制交流サイト(SNS)で拡散し、ブームに貢献した人物に話を聞いた。
紅梅しょうゆは2016年に、液体調味料「醤油麹(しょうゆこうじ)鍋スープ」(200ミリリットルボトル、税込み572円)を発売した。鍋スープに雲南市産の唐辛子やショウガ、ニンニクを加えてピリ辛に仕立て、キャンプなどの野外調理用に、調味料を100ミリリットルの小袋タイプにしたのがコブクロちゃん(同550円)で、22年10月に発売した。コブクロちゃん発売を報じる記事は、山陰中央新報社発行の経済週刊誌「山陰経済ウイークリー」11月22日号に掲載され、Sデジで29日、記事が公開された。
コブクロは小渕健太郎さんと黒田俊介さんの2人によるデュオ。小渕さんが22年12月10日に福岡市であったライブで、インターネット上で見つけたという「コブクロちゃん」をファンに紹介した。紅梅しょうゆによると、この日の夜以降、全国から通常の10倍のペースで注文が入り、3日間で200個以上が売れ、しばらく在庫不足の状況が続いたという。ライブに参加したファンがSNSで「コブクロちゃん」を拡散し、それを見た全国のファンが注文したとみられる。
小渕さん本人がSデジ記事をライブで紹介
ツイッターを通じて話を聞かせてくれたのは、16年来のコブクロファンで、ツアーライブには必ず参加するという関西在住の「めしてろちゃんめん」さん。「コブクロちゃん」を紹介するSデジ記事をSNSで共有すると、小渕さんによる既読が付いたという。
「めしてろちゃんめん」さんは普段から、飲食店や新商品、コブクロに関する記事を検索し、良いと思ったものはSNSで共有している。福岡市でのライブを翌日に控えた12月9日、ニュースを流し見する中でたまたまSデジ記事の見出しを発見し「もしかしてコブクロとコラボした商品では」と思い、記事を読んだ。
コブクロに直接関係はなかったものの、商品名がカタカナまで全く同じだったため「これは面白い。コブクロの2人やファンの人にも知ってもらいたい」と、ツイッターやインスタグラムで記事を共有した。インスタでは小渕さんと黒田さんが気付くよう、2人のアカウントにタグ付けして投稿したところ、既読欄に小渕さんのアカウントが並んだ。他にも同様の行動をしたファンがおり、こういったファンたちの動きが小渕さんがライブで商品を紹介する一因になったようだ。
「めしてろちゃんめん」さんによると、翌日のライブのMCでは小渕さんが「ネットでこういうものを見つけたんだけど」と、コブクロちゃんのSデジ記事や紅梅しょうゆのホームページを会場画面に映し出して紹介した。小渕さんが「記事では『小袋タイプ』だけど、公式サイトでは『コブクロタイプ』って(笑)」と面白おかしく話し、黒田さんも「完全にロックオンされているやん」と返すなど、会場は大いに盛り上がったという。
最終的に小渕さんが「気になった方はぜひ、買ってみてください。僕も早速買いました。おいしそうだったので」と購入を呼びかけ、「コブクロちゃん」の注文が激増したようだ。「めしてろちゃんめん」さんは「知ってくれたらいいな、という気持ちで共有したものが大人気となり驚くと同時に、自分のことのようにうれしくなった。私もぜひ、食べてみたい」と「コブクロちゃん」のヒットを喜んだ。
製造会社は特需に驚き「詐欺にでもあったのかと」
紅梅しょうゆは思わぬ「特需」にてんてこ舞い。松尾まゆみ女将(おかみ)によると、ライブの最中の10日午後8時頃から注文が急増したといい「何が起きたのか分からず、最初は怖かった」と振り返った。SNSを通してコブクロのファンからいきさつを聞き、やっと特需の理由を知ったという。
ホームページでも騒動に触れ「当店のコブクロちゃんがコブクロさんのライブで紹介されました!こんなことが起こるんですね!」「急に大量注文があり、詐欺にでもあったのかと心配でその夜は眠れませんでした」「こんな奇跡が起きたなんてほんとコブクロさんに感謝です」と率直な思いがつづられている。
コブクロちゃんの評判は買った人たちの口コミでも広まり、ライブから1カ月で約千個を売り上げた。ファン以外にも、地元の客が話の種に買っていくことがあったという。
松尾女将は今回の縁を大事にしようと、ファンから薦められたコブクロのベストアルバムを購入した。毎日のように聴いていて「どれも心に染みる曲ばかり」とすっかりファンになった様子だ。
現在は「コブクロちゃん」の在庫状況は回復し、オンラインで通常通り購入できる状態だという。松尾女将は「小袋タイプだからと、気軽に付けた商品名がまさかこんなバズり方をするとは思わなかった。地元の食材を使った調味料を多くの人に味わってもらえてうれしい」と手放しで喜んだ。
「名もない花には名前を付けましょう この世に一つしかない」ー。コブクロの名曲「桜」にある歌詞のように、名前は人や商品にとってとても重要な要素。紅梅しょうゆとコブクロの間に生まれた不思議な縁が、これからも「永遠にともに」続いていってほしい。