貞子を倒すのは松たか子と小松菜奈!?韓国映画界の鬼才に影響を与えた日本文化を聞く

石井 隼人 石井 隼人

泣けるゾンビ映画として日本でもヒットした韓国映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)やNetflix全世界ランキング1位を記録した『地獄が呼んでいる』(2021年)の監督として知られるヨン・サンホ。

エンタメ大国である韓国が生んだこの鬼才は、ジャパニーズカルチャー好きであることでも知られており、お気に入り漫画家に『ヒミズ』『ヒメアノ~ル』の古谷実を挙げたりしている。

そんなヨンが原作と脚本を手掛けた『呪呪呪/死者をあやつるもの』(2月10日公開)には、彼の日本愛がチラリと顔を覗かせる。本作が日本で大ヒットした暁には、日本生まれのあのホラーキャラクターとのコラボ作もあるかもしれない!?満面の笑みでオンラインインタビューに応じてくれたヨンにさっそく聞いてみた。

ヒントは松たか子と小松菜奈!?

死体が残忍な殺人を犯すという怪事件の真相を探る美人ジャーナリストのイム・ジニ(オム・ジウォン)の前に現れたのは、何者かによる術によって操られたゾンビ=ジェチャウィたち。目には目をとばかりに、イムは四国帰りの少女呪術師ソジン(チョン・ジソ)の力を借りて黒幕に肉迫していく…。

少女呪術師ソジンが修行の地として選んだ場所を「四国」と具体的かつローカルな設定にしたこだわりに日本愛が滲む。そもそも四国帰りの少女呪術師ソジンというキャラクターを生んだインスピレーション元は、映画『来る』(2018年)で松たか子と小松菜奈が演じた最強の霊能力者・比嘉姉妹なのだという。

「脚本を書く上で私に影響を与えたのは國村隼さんが出演している韓国映画『哭声/コクソン』と日本映画の『来る』です。『来る』で松さんと小松さんが演じた比嘉姉妹は最強の霊能力者であり、スーパーヒロイン。少女呪術師ソジンをヒーロー化されたキャラクターとして描く上で参考にしました。ソジンが四国で修行していたという設定も、日本のホラー小説からヒントを得ています」とヨン。

貞子を倒す企画も妄想

日本映画やテレビドラマのみならず、日本の漫画や小説にも造詣が深い。「鈴木光司さんの『リング』『らせん』は学生時代に読んでいる」というヨンに、四国帰りの少女呪術師ソジンと日本が誇る怨霊キャラ・貞子とのコラボレーションの可能性を聞いてみた。すると興味深い返答が!

「貞子とソジンのコラボではなく、比嘉姉妹とソジンのコラボの方がイメージしやすいかもしれません。『来る』の原作者である澤村伊智さんは比嘉姉妹シリーズを何作品も書いていますよね?そこで比嘉姉妹とソジンがコラボできたらとても面白いものになると思います。比嘉姉妹とソジンが力を合わせたら、もしかしたら貞子を倒すことができるかもしれない」と妄想を膨らませる。

時間も予算もなくて…

『呪呪呪/死者をあやつるもの』で貞子並みにインパクトを残すのが、グレーのパーカースタイルのゾンビ=ジェチャウィ。一糸乱れぬ動きで集団行動をする異様さは従来のゾンビの怖さとは違った恐ろしさがあり、パーカーのおかげで中世の魔導士を彷彿させたりもする。ジェチャウィのビジュアルイメージはゾンビ騎士団が暴れる『エル・ゾンビ I 死霊騎士団の覚醒』(1971年)へのオマージュかと思いきや、実は苦肉の策から出た妙案だった。

「グレーのパーカーを着ている案はキム・ヨンワン監督から出たものです。ジェチャウィを演じるエキストラの一人一人に全身がボロボロになったようなリアルな特殊メイクを施す時間も予算もなかったので、何かで頭や体を覆い隠す必要がありました。そこで出てきたアイデアがパーカー。頭や体を隠す役割をすると同時に、全員同じ格好にすることで何者かに操られて集団で同じ行動を起こす統一性を強調する説得力も生まれました。この作品を南米でPRする際は魔導士風のジェチャウィを全面に押し出してインパクトを与えることに成功。ピンチを逆手に取ったわけです」と舞台裏を教えてくれた。

『ガンニバル』監督とのコラボも?

本作でヨンは原作と脚本のみを担当。演出はキム・ヨンワンに一任した。「一糸乱れぬジェチャウィたちによるカーチェイスは手に汗握るもので、ジャーナリストのイム・ジニと少女呪術師ソジンの絆や関係性は脚本に書かれている以上にエモーショナルです。私が監督を務めていたらもっと静かな作品になっていたと思うので、キム監督の演出には脱帽です」とそのセンスを高く評価する。

ちなみにヨンがそのセンスに羨望の眼差しを向ける若手監督が日本にもいる。それは監督デビュー作である自主製作映画『岬の兄妹』(2019年)が高く評価され、現在Disney+で『ガンニバル』が配信中の片山慎三監督だ。

「片山監督の作品は連続ドラマも含めてすべて見ていますが、俳優たちの力を引き出すディレクションが素晴らしく、カメラワークも秀逸です」と絶賛し「私自身、日本語の作品をいつか作るという夢を持っているので、実現する機会があれば片山監督とコラボしたいです。彼とは色々な企画について情報交換をしている最中なので、日本のファンの皆さんにはそれが実現するよう祈っていただきたいです」と嬉しい報告とともに、日本のファンに呼び掛けている。

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