京都市の門川大作市長が着ている着物は自費? 直撃すると、和装には市長の思いがこめられていた

どなどな探検隊(パートナー記事)

浅井 佳穂 浅井 佳穂

 「門川大作京都市長の着物は自費なの?」。京都新聞の双方向型報道「読者に応える」には、しばしばこうした投稿が寄せられる。果たして、市長は自費で着物を用意しているのか。着付けなどに公費は使われていないのか。情報公開制度を利用して探るとともに、門川市長にも直接聞いてみた。

 まず京都市に「市長が和装着用に関し支出した金額が分かる文書、保存されているもの全て」という内容で公文書の公開を請求してみた。すると数日後に電話があり、1通の文書が手元に届いた。

 送付されてきたのは「市長は、自身が保有する着物を自身で着付けており、市長の和装に関して公費での支出がない」という文言が記された文書だった。

 詳しいことを聞こうと、京都市市長公室秘書担当に和装着用について取材した。なぜ門川市長は私物の着物を着ているのだろうか。その理由は「京都に息づいていて世界に評価されている和装を自らが着用することで、着物の素晴らしさを国内外に伝えたいという思いから」だそうだ。

 でも、新型コロナウイルスの感染拡大以降、スーツを着た門川氏の姿も目にする。秘書担当は「緊急事態宣言が発表されている時期には着物を着ていないこともあった」とする。ただ、市長は場面に応じて着る機会を増やし、現在では可能な限り着物を着るようにしているという。理由として「コロナ禍だから着物姿はふさわしくない、という雰囲気を否定したいという思いと、伝統産業を振興するという考えから」だとした。

 では、市長は着物を何着持っているのだろう。秘書担当は「家でも着ているので市長の着物の数は分からない」と回答した。

 さらに詳しいことを知りたい。11月下旬、門川氏に直接、取材を申し込んだ。そもそも、なぜ私物の着物を着て公務を行っているんですか?

 「私が生まれ育った地域は和装産業の中心地です。京都でもかつてはかなりの人が着物を着ておられたが、今では減り和装産業の厳しさを実感しています。着物は日本の誇るべき服飾文化です。その文化を大事にしていくという考えからです」。市長は和装への思いを口にした。

 過去の京都新聞記事を調べてみると、市長就任前の市教育長時代は和装姿ではなかった。転機はあったのだろうか。きっかけは2008年秋、姉妹都市盟約50周年でのパリ訪問だという。

 市長は回顧する。「パリは服飾文化の聖地のようなところ。着付けの練習をしてなんとか着られるようになり、パリでは着物で通しました。大反響でした」。「それ以来、特別な日以外は着物で通しています」という。

 では、着物を着る日と着ない日をどう判断しているのだろう。市長は、これまでも防災訓練やスポーツ行事などでは「場にふさわしい装い」を心掛けてきた、説明する。その上で「緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令時にはスーツに防災服を着た。危機感を共有するためにスーツの方がいいと判断した」と話す。

 ちなみに市長、着物は何着持っているんですか?「季節ごとに3、4着を着回しています」とのこと。「傷んでくるので妻に頼んだり、近所に職人さんがおられるのでお願いしたりして補修しています」

 和装産業の窮状が叫ばれて久しい。市長は京都の先端企業のルーツが伝統産業にあったことに触れ、「和装はあらゆる文化行事の基礎です。これからも和装をはじめ伝統産業を大事にしていきたいと思います」と締めくくった。

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