鋭い人間観察力を武器にした“あるある”的なコントや、歌唱力のある歌声、特徴を捉えたものまね、さらには俳優として数々のドラマや映画に出演する演技力……など唯一無二の“ネタ”を披露し視聴者を魅了する友近。最新作映画『嘘八百 なにわ夢の陣』でも中井貴一や佐々木蔵之介といった実力派俳優がひしめくなか、独特の存在感で作品を彩っている。どんなジャンルでも共通して「人を楽しませたい」という思いを持ち舞台に立つという友近――その強い信念はどこから生まれているのだろうか。
バッファロー吾郎との出会い!
お笑い芸人になったときから「自分が面白いな」と思ったことを、どれだけの人が納得して笑ってくれるのだろうか――ということを確かめたいという思いがあったという友近。デビュー当時は、自身の信じる道をひたむきに進むも、なかなか目に見える形で結果がでなかったなか、最初に目を掛けてくれたのが、先輩のバッファロー吾郎だったという。
「芸人になって舞台に上がったものの、私がやっていることは、なかなか受けなかったんです。でもバッファロー吾郎さんが私の芸を見て声を掛けてくださって、自分の舞台に呼んでくれたんです。そうしたらバッファローさんのお客さんには受けたんです」。
自分が面白いと感じた“笑い”を信じてやり続けたことが結果として実を結んだと感じた友近。芸人を始めた1年目で、その感覚を得たことは、その後の芸人人生に大きな活力になったという。
「最初に笑いが取れなかったとき、自分の思いを捨てて本意ではない“笑い”をやっていたら、どうなっていたか。バッファロー吾郎さんのおかげで、そこを捨てずに済んだんです。その時はバッファロー吾郎さんのお客さんですが、いつか私も自分のネタで笑ってくれるお客さんを持ちたいなというモチベーションは原動力になっていました」。
だからと言って、決して順風満帆に進んでいったわけでもなかった。
「もちろん、自分のやりたいと思うネタを貫くことで、揉めたことも損したこともめちゃくちゃありました。でもやりづらいなと思われてもこのネタを続けた方がいいなと思えたのは、やっぱりバッファロー吾郎さんのお客さんが喜んでくれたという体験でした。あれがあったからこそ、きっとわかってくれる人たちはいるんだという気持ちで続けられたんです」。
いまの若い芸人に“もったいない”と感じること
ブレずに20年以上も続けてきた“面白さ”へのこだわり。しかし“笑い”に対する受け取り方は時代と共に変わってきていると実感することはあるという。
「私個人的には一番は共感が大事かなと思っています。笑いのツボって人それぞれ違うし、どれが正解というのはないと思うのですが、今年のM-1グランプリを見ていても『よくできたネタだな』と感心するし尊敬するのですが、どっか『そうだよね』と共感する部分が少ないのかなと思ったんです。
さらに友近は「もったいないな」と思うことも多いという。
「若手の芸人さんは……若手には限らないかな?最近のスタンスの傾向として『こうした方がいいですかね』『このネタ、発言大丈夫ですかね?』と結構スタッフさんへ質問する芸人さんが多いんですよね。自分が面白いと思ったことをやるのではなく、自分の立ち位置はどうであるべきかなど!乱暴な言い方をすると少し人の顔色を窺いながらバラエティーやネタをやる方が多いように思います。質問すればするほど表現も狭まっていってしまうし、そもそも視聴者や目の前のお客さんを意識した方がいいところを、ちょっと向いてる方向が間違ってるかな?と思ったりもします。なんだかもったいないというか……。
時代が変わっていくなか、普遍的なものを若い人にどう伝えるのか――。それはお笑いだけではなく映画の世界でも同じ。友近が出演する『嘘八百 なにわ夢の陣』は、骨董品という歴史的なものをテーマに、さまざまな“騙し、騙され”が内在したエンターテインメントだ。
「昭和のコメディが入ったような作品。一方で歴史的な素地が分かると知的な映画としても楽しめる、最近にはない趣があると思います。興味がない人に観ろというのは、どんなジャンルでも難しいとは思いますが、歴史的なこと、昭和の文化、さらに多彩な俳優陣、胡散臭さ……いろいろな方面に引っかかりのある映画なので、入口にさえたどりついたら、きっと面白く観られる映画だと思います」。
映画『嘘八百 なにわ夢の陣』2023年1月6日より全国公開