リストラで退職「スキルも資格もない」「職探しは全滅」→残された道は「ライター」だった 52歳からの人生再スタート

平藤 清刀 平藤 清刀

会社を放り出されてみて「スキルも資格もないこと」に気づいた。就職活動は不採用通知すら来ないまま全滅。残された道が「書くこと」だった。52歳からの人生再スタートでライターの道を選んだしげぞうさん。今年還暦を迎え、まだまだ現役で活躍している。

所属していた部署が解散になり…

千葉県在住で、現在はライターとして活動するしげぞうさんは、ビジネス書、オウンドメディア、広報誌、ホワイトペーパーなどのライティングを生業としている。

1962年生まれで、今年は還暦を迎えた。会社勤めをするサラリーマンだったが、やむを得ない事情で会社を去ることになり、消去法でたどりついた仕事がライターだという。

「家電などの取扱説明書を制作する会社に勤めて、ディレクション業務をやっていました」

仕事の内容は、テクニカルライターやイラストレーターへの発注、印刷所の手配などが主で、特別な資格やスキルは必要なかった。

人生の転機が訪れたのは、51歳のときだった。

「会社の経営状態が芳しくなく、所属していた部署が解散になってしまいました」

このとき、会社に残れる条件を提示された。守秘義務があるため詳しくは話せないそうだが、かなり厳しい内容だったそうだ。しげぞうさんは事実上の退職勧告と察し、会社を去ることにしたという。

ハローワークでの職探しは全滅

会社を辞めた後ハローワークで職探しを始めたときは「なんとかなるだろう」と、高をくくっていた。だが、何の資格もない50歳過ぎを雇ってくれる会社はなかった。

失業保険を受給し蓄えを切り崩しながら職探しをしていたものの、不採用通知すら寄こさない企業が多かった。やがて1年が経ち、雇用保険の受給期間が終わってしまった。

どこかに雇ってもらうことは無理なのか。途方に暮れかけたしげぞうさんに、救いの手が差し伸べられる。

「2013年頃、サラリーマン時代に土日の休みを利用して、副業でWEBマガジンやアフィリエイト用の記事を書いていたんです。その当時のクライアントさんから『また書いてくれませんか』と声がかかって、ライターなら需要があるのかなと思いました」

こうして、しげぞうさんはフリーランスのライターとして人生の再スタートを切り、2016年には税務署へ開業届を出して個人事業主になった。

じつはフリーランスには、誰がいい出したか「40歳定年説」が囁かれている。ライターの世界であれば、同世代の編集者が会社で昇進したり異動したりして現場を離れると、ライターとの関係が切れてしまいがちになるそうだ。それが40歳前後の時期に訪れるという。

そう考えると、40歳定年どころか52歳デビューを果たしたしげぞうさんは、これから独立してフリーランスになろうと考えている同世代の人たちに、希望の光を灯したのかもしれない。

ところで、ライターは稼げるのか。気になっている人は多いはず。あくまで、しげぞうさんのケースだが、独立直後はサラリーマン時代の半分しか稼げず苦労したという。その後はやや上向いて、ライター業で生計を維持できるまでになった。

3年目からはブックライティングを継続して依頼されるようになり、サラリーマン時代の収入を超えたという。

「その分、所得税も跳ねあがりました」

そして、2020年初頭からのコロナ禍である。イベントの取材がなくなるのは分かるが、なぜかブックライティングも減ったそうだ。

「今年(2022年)はまた受注が増え、とくにブックライティングの依頼が毎月のように入って復活しました」

この間に、しげぞうさんは著書も出版している。

人見知りでもインタビュー取材はできる

52歳からライターを始めたしげぞうさんは、人生経験の長さが役に立ったことはあるのだろうか。

「人生経験が生きているとしたら、働く人の現場とか会社組織の構造とか、臨場感を知っていることです。たとえばビジネス系の記事を書く場合に、上司と部下とのやり取りだとか、会社が意思決定をするときは稟議を上げるとかね。それを分かっているかどうかで、文章の深みが全然変わってくると思います」

しげぞうさんはインタビューや取材を数多くこなしてきたが、元来の性格は人見知りだという。著者に代わってビジネス書を1冊書く場合、一般的に10時間程度のインタビューを数回に分けて行うが、それは苦にならないのだろうか。

「不思議ですね、全く平気です。本を書くという目的がはっきりしているからでしょうか。逆に、取材を終えて、帰りの電車に取材相手と一緒に乗っているときが気まずいです(笑)」

最後に、これからフリーランスや個人事業主として独立を考えている人へ、アドバイスをもらった。

「いきなり順調に仕事が入るわけじゃないし、生活もメンタルも苦しい期間があります。そこを頑張る覚悟があるなら、必死になってやってください」

下積みを経験すると、自分が頑張れる人間かどうかを見極めることができるという。また自分のやったことが、ダイレクトに評価される世界でもある。それは喜びでもあるが、評価されなければ仕事を失う怖さもあるから、独立を考えるならそれなりの覚悟は必要だ。

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▽しげぞうさん Twitter
https://twitter.com/ViepnzMdJAhvWHn

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