1年を振り返る、年の瀬恒例の「流行語大賞」が発表されましたが…いま、ネット上では集英社オンラインが独自調査した「あなたが思うホントの流行語大賞2022」が話題です。
そこでは「2022ユーキャン新語・流行語大賞」年間大賞に選ばれた「村神様」(プロ野球・東京ヤクルトスワローズの村上宗隆選手の活躍をたたえた言葉)がランク外となる一方、文春砲で女性トラブルが報じられた読売ジャイアンツの坂本勇人選手の「けつあな確定」が1位になりました。
主要なテレビ、新聞がスルーした坂本選手の女性トラブルにまつわるワードを報じたことで、「集英社最高」「忖度一切なしの真の『流行語ランキング』」「一生ついていく」とネット上で称賛されました。大手出版社である集英社がなぜ独自調査までして「ホントの流行語」を報じたのでしょう。集英社オンラインの志沢直子編集長と同社オンラインニュース班の鈴木洋明デスクに聞きました。
本当に流行語なの?
集英社オンラインの独自アンケートは、「あなたが思う“ホントの2022年流行語”は?」と題して、2022年11月22日から11月30日にかけて行ったネット投票に加え、12月1日~3日にかけて渋谷、秋葉原、新橋の3カ所で街頭調査を実施。16歳から60歳までの幅広い年齢層から300人の声を拾いました。
ーーなぜホントの流行語大賞を独自調査したのでしょう。
鈴木デスク「ユーキャンの流行語大賞にかねてから違和感があり、ネット上でも『本当に流行語なの?』といった疑問の声が多かった。じゃあちゃんと調査してみよう、ということで、若いライターと一緒に街に出て、アンケート調査しました」
結果は以下の通りでした。(8票獲得した10位が二つあったため、11ワードのランクインとなっています)
10位「ドーハの歓喜」 8票
10位「きつねダンス」8票
9位「インボイス制度」9票
8位「ポケモンSV」10票
7位「ちゅきちゅきポーズ」11票
7位「菅井友香卒業」11票
5位「ちいかわ」12票
4位「チェンソーマン」14票
3位「SPY×FAMILY」15票
2位「ブラボー」31票
1位「けつあな確定」36票
ユーキャンの流行語大賞トップ10とかぶったのは「きつねダンス」のみで、後は「ドーハの歓喜」、「ブラボー」といったサッカーワールドカップでの日本代表の活躍を表したワードや、アニメ化された人気漫画「ちいかわ」、「チェンソーマン」、「SPY×FAMILY」などが席巻しました。そして、1位は読売巨人軍の坂本勇人選手の「けつあな確定」が選ばれました。
坂本勇人選手は文春砲で女性トラブルが報じられ、その相手女性とのLINEのやりとりから明るみになったのが「けつあな確定」でした。高速道路の渋滞で待ち合わせに遅れた相手女性に対して、「けつあな確定な」と送ったメッセージが街中のスラングとして使われるようになったといいます。
渋谷、秋葉原の男性が「けつあな確定」日常的に使う
ーー「けつあな確定」に票が集まりました。
鈴木デスク「渋谷や秋葉原の30代、40代の男性が多かったですね。飲み会に遅刻してきた人に『お前けつあな確定な』といった感じで、ネタとして軽く使っているようでした。女性に対してひどい言い方をした言葉ですが、『こういう風に使ってしまうんだな』と意外な気がしました」
ーー主要なテレビ、新聞社が報じなかったワードですが、1位のまま伝えることに躊躇(ちゅうちょ)しませんでしたか。
志沢編集長「決して上品な言葉ではありませんが、調査結果通り報じることに迷いはありませんでした」
「記事配信後、2日くらいして急に読まれるようになりました。『集英社がマジですげえことやってる』『忖度してない』とネットで話題になり、拡散した印象です」
若い書き手を育てるために 街頭取材の理由
集英社オンラインは2022年3月末に立ち上がり、ニュース班は11月中旬に発足したばかりです。なぜ生まれたばかりのウェブメディアが、攻めた企画を実現できたのでしょう。
志沢編集長「集英社は漫画を筆頭にエンタメのイメージが強いのですが、 週刊明星(現在は休刊)や『週刊プレイボーイ』は時事ネタも扱ってきました。主催する開高健ノンフィクション賞はノンフィクション作家の登竜門になっています」
ーーウェブメディアでは対象者に直接取材をしない「コタツ記事」が主流です。
志沢編集長「コタツ記事にはコタツ記事の良さがありますが、内容の薄い記事ばかり出していたら、いずれ限界に突き当たると思います。集英社は雑誌作りで手作り感を大事にしてきました。手間をかけたものは裏切らない。テレビや新聞に速報性ではおよびませんが、これからもかみ砕いて、深みのある記事を出していきたいと思っています」
鈴木デスク「私はずっと週刊誌畑で記者をやってきて、街頭取材が一番取材力が付きました。コロナ禍もあって直接取材する機会が減り、コタツ記事がウェブ上で増えているのは確かです」
「今回の街頭アンケートでは、街頭取材を通じて若いライターを育てたい、という裏テーマもありました。今回のような街頭でのアンケート調査が若手ライターの取材力向上につながり、今後、事件取材などに生かされると思っています。読者が紙からネットに移っていく中で、週刊誌で培った取材手法を、ネットメディアでも伝えていく必要があると感じています」
集英社オンラインでは「今年、本当に紅白に出場してほしかった歌手は?」「“2022年”の顔」についても街頭アンケートを独自で行っています。
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集英社オンラインは2022年3月の立ち上げから読者数が右肩上がりを続けており、今回の「ホントの流行語大賞」以上に読まれた記事がいくつもあるといいます。雑誌取材のノウハウを惜しみなくつぎ込んだ集英社オンライン。これからも読者に刺さる記事を楽しみにしています。