「特急」が「普通」に抜かれる!?…山陽須磨駅で繰り広げられる“衝撃の光景” 直通運転する阪神との事情が交錯

新田 浩之 新田 浩之

一般的に特急が普通に抜かれることはありません。しかし山陽電気鉄道の山陽須磨駅では特急が普通に抜かれるという全国でも珍しいシーンが日常的に繰り広げられます。早速、高速神戸駅から山陽電車に乗り、山陽須磨駅に行ってみました。

まずは阪神の特急須磨浦公園行きに乗る

阪神線は元町駅を経て西代駅まで。西代駅から山陽須磨、山陽明石、山陽姫路方面は山陽電鉄線になります。高速神戸駅まで阪急電車に乗り、同駅で阪神大阪梅田駅発・特急須磨浦公園行きに乗り換えます。この列車は阪神本線内は直通特急と同じ停車駅ですが、元町~須磨浦公園駅間は各駅に止まります。

高速神戸駅を出発して15分、主要駅のひとつ山陽須磨駅に着きました。須磨浦公園駅は山陽須磨駅の西隣りに位置し、同駅に直通特急は停車しません。4番線には普通山陽姫路行きが停車し、ほとんどの利用客は4番線へ乗り換えます。

「まあ各駅に止まっても特急だから、こちらが先に発車するだろう」と思っていたら、何と普通山陽姫路行きが先に発車するではありませんか! 正しく普通が特急を追い抜きます。しかも抜かれた特急は6両編成なのに対し、普通は3両編成。正直、違和感がありすぎます!

当然のことながら山陽須磨駅を発車した特急須磨浦公園行きはガラガラ。須磨浦公園駅到着時は片手で数えるくらいの降車客しかいませんでした。

須磨浦公園駅に到着すると、すぐに引き込み線に入り、折り返し特急大阪梅田行きの運用に就く準備をします。その横を直通特急が通過します。なお帰りの大阪梅田方面では普通が特急を追い抜くシーンは見られませんでした。

事実上は普通から普通へのバトンタッチ

なぜ、こんな摩訶不思議なシーンが展開されるのでしょうか。実は特急を追い抜いた普通は山陽須磨駅始発です。先述したとおり特急須磨浦公園行きは山陽電鉄線内は各駅に止まりますから、事実上、山陽須磨駅で普通から普通へのバトンタッチが行われるわけです。

これは大阪梅田方面でも行われ、普通山陽須磨駅止まりは山陽須磨駅で須磨浦公園駅始発の特急大阪梅田行きに接続します。

運転間隔に車両の数…さまざまな事情が関係して

しかし素直に考えれば須磨浦公園止まりではなく、直通特急のように山陽姫路駅まで乗り入れば、山陽須磨駅での乗り換えは不要なはずです。

そもそも特急須磨浦公園行きが存在する背景には、阪神と山陽のそれぞれの事情があります。阪神は10分間隔、山陽は15分間隔を基本としています。阪神側は直通特急・特急が上下各6本必要ですが、山陽側は上下各4本でよいということです。

つまり各2本が阪神線内は特急、山陽線内は各駅に止まる必要があり、それが特急須磨浦公園行きと考えられます。

二つ目は両数の問題です。阪神側の特急は6両編成で運行されますが、山陽側の普通は3両編成~4両編成が基本です。西代~須磨浦公園駅間のホームは6両編成に対応していますが、須磨浦公園駅以西の直通特急通過駅は3~4両編成対応となり、6両編成は停車できません。

これは1968年に阪神と山陽が相互直通運転を開始した際、阪神車は須磨浦公園駅止まりだったことに起因します。

なお昼間時間帯の山陽姫路発の普通は1時間に4本のうち2本は山陽須磨駅止まりです。これにより昼間時における山陽須磨~西代間の直通特急通過駅の停車本数は1時間あたり各4本になり、輸送力が適正になるよう工夫されています。

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