「患者と家族の心に寄り添う」末期がん以外の病気にも適用される終末期医療とは 医師に聞く

ドクター備忘録

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 がん治療などにおいて耳にすることが多い「緩和ケア」。患者さん本人はもちろん、そのご家族に対して、身体的・精神的な痛みを和らげながら“これからどうしていきたいか”をともに考える医療ケアを指します。「終末期医療」とも呼ばれ、主に末期がん患者が受ける治療法だと知られていますが、実は現在、がん以外の病気でも緩和ケアが受けられるように検討が重ねられているそうです。そんな緩和ケアについて、吉田病院付属脳血管研究所(神戸市兵庫区)の吉田泰久院長に詳しく聞きました。

――緩和ケアと聞くと、末期がん患者への終末期医療のイメージがあります。

実は現在、緩和ケアへの考え方が徐々に広がってきています。2018年には末期の心不全患者にも緩和ケアを行うという考え方が生まれています。どのような病気であっても“末期”という段階はあるので、社会的な側面も含めてケアしていくことを考える、という方針になっています。

――まずは痛みを取り除く、ということになるのでしょうか?

そうですね。身体的な痛みはもちろん、精神的な痛みや心の痛みも含めて和らげることから緩和ケアは始まります。また、そのような心の痛みや悩みは、患者さんだけでなくそのご家族も感じていることが多いので、同じようにケアしていきます。

――医師や看護師が相談に乗ってくれるのですね。

そのとおりです。医療者のほかにも、ソーシャルワーカーなどさまざまな立場の人たちが患者さんやご家族と関わり、もっとも望ましい形での臨終を迎えられるように努めています。

――緩和ケアとは終末期医療でもあり、積極的な治療を行わないということも意味するのでしょうか?

特にがんの場合は、そうだと言えますね。ただ、発症と回復を繰り返すなかで悪化していくことが多い心不全は、考え方が少々異なります。明確な終末期がわからない場合は、少しずつ変化していく自身の体について理解を深めていくことになります。

――脳の病気の場合は、緩和ケアは行われないのでしょうか?

脳卒中学会全体で考えられていますが、現時点ではまだ行われていません。というのも、脳卒中は軽度から重度のものまで、症状の差が非常に大きいのです。軽症から始まって徐々に悪化していき、さらに認知症の症状まで出てきてしまうと、気づいたときにはご本人の意思が聞けなくなってしまっています。ご家族に話を聞いても、患者さん本人の希望までは知らないことがほとんど。緩和ケアにおいてご本人の意思がもっとも大切なので、意思表示ができない方への緩和ケアは非常に難しいと言われています。

――ご家族の向き合い方も含めて、まだまだ難しい点がたくさんあるのですね。

そうですね。段階的に症状が悪化していく病気の場合、どのタイミングでご本人の意思を確認し、ご家族とともにどのように考えていくべきか、という判断が非常に難しいのです。

◆吉田泰久 社会医療法人榮昌会 吉田病院 / 理事長兼院長 /
1952年12月の開設以来70年近くにわたり、神戸市の救急医療のなかでも脳卒中患者の診療を主に担い、急性期から回復期、在宅まで一貫した脳卒中治療を提供している。
診療科は、神経外科、脳神経内科、内科、循環器内科、リハビリテーション科

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