元刑事、園長逮捕も示唆「1歳児は抵抗できない、虐待罪を導入すべき」園児への暴行容疑で保育士3人逮捕

小川 泰平 小川 泰平

 静岡県裾野市の私立「さくら保育園」で保育士の女3人が複数の園児に虐待をしていたとされる事件で、静岡県警は4日、暴行の疑いで3人を逮捕した。また、同市は5日、犯人隠避容疑で桜井利彦園長を刑事告発した。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は現地を取材し、当サイトに対して、今回の保育士逮捕に至る経緯を説明し、園長も逮捕される可能性を示唆した。

 暴行容疑で逮捕されたのは、同園で保育士をしていた沼津市の三浦沙知容疑者(30)、裾野市の小松香織容疑者(38)、長泉町の服部理江容疑者(39)。県警によると、3人は今年6月、1歳児にカッターナイフを示して脅し、足をつかんで宙づりにしたりといった問題行為や頭を殴るなどの暴行を繰り返した疑い。

 8月中旬に市へ情報提供があり、発覚した。3人の容疑者は園の聞き取りに「しつけだった」などと釈明し、市は園長と面談するなどして状況を調査する一方、3か月以上も保護者や市民には問題が公表されていなかった。市は12月1日、懲戒処分を受けた保育士2人が11月20日付で退職したと明かした。

 園内には虐待行為を捉えた防犯カメラがなく、県警は同僚保育士らの目撃証言に基づいて逮捕容疑や被害園児を特定。保護者に説明した上で被害を申告させていた。県警は5日、3人を送検。また、同市は同日、3人の虐待行為を口外しないように約束させる誓約書を全保育士に書かせたなどの犯人隠避容疑で桜井園長を刑事告発した。

 小川氏は「スピーディーに保育士3人の逮捕に至ったといえるが、市長がこの園長を犯人隠避で、3人の保育士を傷害もしくは暴行で刑事告発するという報道が3日にあったので、警察が捜査中に先に告発されたら格好がつかないということもあって、3日の土曜日に逮捕令状を請求し、4日の日曜日に保育士の逮捕に着手したということがいえるのではないか。また、裾野警察署だけでの捜査ではなく、静岡県警本部の人身安全対策課も捜査しており、警察の本気度がみえる。さらに市長が刑事告発に当たって自ら裾野警察署に出向いているのも非常にレアなケースだと思いました」と指摘した。

 今後の捜査のポイントについて、小川氏は「4日に家宅捜索をしていて、保育士の出勤状況等を調べながら、実際に虐待した事実について、逮捕された3人から取り調べをしているが、本件はもちろん、他の虐待の事実、共犯関係の有無も焦点になる。私は本日(5日)、現地に行きましたが、午前中には約20人の保育士が園の建物に入り、警察官も6人くらい入って事情等を聞かれていたようです。どこまで1歳児が意思表示できるのかということもあるので、現場を見ていた他の保育士にも聞いていると思います。現時点では個々の園児に対する暴行容疑ですけど、逮捕された保育士3人が共犯関係のような感じで1人の園児を暴行した例もあるのかなど、他の余罪的なことを調べていく。虐待が常態化していたという話も出ている」と付け加えた。

 一方で、小川氏は「私が近隣を取材して親御さんたちに話を聞いたところ、『逮捕された3人の保育士が行ったことは残念だが、他の先生は本当によくしてくれている。子どもさんを預けている親は働いている人がほとんどで、今回の事件で休園になったことで、仕事を休まなくてはならなくなった』ということでした。『この保育園がいいから来ているんです。市長から他の保育園に転園してもらうという話もあるようだが、それは困る。他の先生は(暴行するような保育士では)ないんですよ』と私に伝える親御さんが結構いました」と保護者の声を代弁した。

 注目される園長の逮捕について、小川氏は「捜査関係者にも話を聞いて、まだはっきりしたことは言えませんが、やっていることが非常に悪質です。(本人が)土下座するのはいいですが、立場的に上にいる園長が、勤務している保育士を集めて『絶対に口外するな』ということで誓約書をとるなど、犯人隠避だけでなく、強要罪になる。証拠隠滅のおそれもあるということで逮捕の可能性はあると私は思っています」と推測した。

 さらに、小川氏は「虐待と言っても、逮捕罪名は暴行罪で非常に軽い。そもそも、1歳児が被害に遭うことを前提にしていないんです。保育園で保育士に虐待されたら逃げることもできなければ、抵抗することもできません。防犯カメラ等も確かに有効ではあると思いますが、今回のようにトップ(園長)が隠ぺいをすることもあり得ます。虐待に関しては、単に暴行、傷害ではなく、新たな『虐待罪』等を導入すべきではないかと思います」と提言した。

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース