「ケーキ屋さんを建てています」。熊本県阿蘇市内にあるこんなユニークな看板が話題を集めている。投稿主がツイッターに写真を公開すると28万いいねがつき「こういうユーモア好き」「ワクワク感、半端ない」「開店前から最強の宣伝」などといったコメントが寄せられる反響ぶり。投稿主と、この「ケーキ屋さん」に話を聞いた。
「なんてワクワクする看板なんでしょう!」との言葉を添えて、この看板の写真をツイッターに投稿したのは、あか牛などの農畜産物や、茅葺屋根を作る茅束(すすき)の販売などを通じて草原の再生、保全を行なっている「(株)GSコーポレーション」(熊本県阿蘇市)の男性職員(29)。「阿蘇の日常や四季の風景なども投稿していて、あの看板はたまたま見つけたんです。まさかこんなに反響があるとは思いもせず、ただただ驚いています」と話す。
看板の「ケーキ屋さん」とは、現在、熊本県菊陽町で「PATISSIER HIRO(パティシエ ヒロ)」を営む高橋宏樹さん(42)。季節のタルトやシュークリームなどが美味しいと評判の洋菓子店だ。「看板は施工業者の社長さんが考えて作ってくれました。初めて僕がこの看板を目にしたときは、ああ、看板立ててくれたんだな、ありがたいなくらいしか特に思わなかったんですよ(笑)」。当初の看板の文案は「洋菓子店」だったそうだが、わかりやすい表現がいいとのことで「ケーキ屋さん」という言葉に落ち着いたそう。
高橋さんは9年半前に福岡から菊陽町にやってきて同店を開店。「当初は自分が思ったようにいかず、1、2年目は本当に苦労の連続でした。3年目くらいからようやく経営が軌道に乗りはじめ、今は地元の多くのお客様に支えられて、ここまでやってこれたと実感しています」
高橋さんは阿蘇にある奥さんの実家に住み、同店まで毎日、通勤している。「阿蘇の大自然の中でいつか店を出すのが夢だった」といい、このほど思い切って移転を決意した。現在の店は12月末で閉店し、来年1月末ころ、建設が進められているこの看板の地で、新たなスタートを切る予定だ。
新しい店では、喫茶スペースを設け、雄大な阿蘇の山々を眺めながら美味しいケーキを楽しめるそう。「ここでケーキを食べたら思わず笑顔になって、『おなかも心も満たされた』といってもらえるようなケーキ屋さんになれたら」と高橋さん。「まだ店が完成する前からこんなに注目していただいて、本当にありがたいです。借金は最初の店のオープン時の3倍くらいになってしまいましたが、その時よりも100倍以上、胸が高まっています。人生は一度きり。やりたいと思ったことをやらないとですね(笑)」。看板だけでなく、これからできるお店もワクワク感あふれるケーキ屋さんになりそうだ。
「(株)GSコーポレーション」のツイッターは@asogscorp
「PATISSIER HIRO」のインスタは@patissier_hiro_kumamoto