12月に入り、気温も下がって冬の訪れを肌で感じるこの季節。セーターなどの冬物を新調する人も多いのではないでしょうか。
冬物は毛(ウール、カシミア、アルパカなど)や絹といったデリケートな素材も多く、お手入れ方法が気になるところ。「洗濯機で洗って縮んでしまった…」という話はよく聞きますし、自宅で洗っていいのか迷う人もいるのでは。
そこで、セーターなどによく使われる毛や絹素材について、クリーニング業界の最大手である「白洋舍」(本社:東京都大田区)の担当者に教えてもらいました。
白洋舍に聞いた、家庭洗濯で服が縮む理由
ーーそもそも、どうして衣類は洗濯で縮むことがあるのでしょうか。
「縮む原因は素材によって異なりますが、主な原因は水の場合が多いです。
・綿、絹、レーヨン:水を吸収すると糸が太くなり、糸同士が交差する部分のうねりが大きくなるため、寸法が短くなります。綿のニット素材が乾燥機で縮むのは、たたく力がかかることにより、編目が詰まりやすいためです。綿の縮みはアイロン等で修正できるケースもありますが、絹やレーヨンの縮みは修正できない場合が多いです。
・毛:水分を吸収する際、繊維表面のウロコが開きます。洗濯のもみ作用が加わると、このウロコ同士が絡まりあい、縮みます(フェルトのようになるのでフェルト化と言います)。毛がフェルト化してしまうと、修正できない場合が多いです」
ーーでは、そういったデリケートな素材を自宅で洗いたいときは?
「縮みやすい素材=毛、絹とすると、洗濯表示に手洗いマークが無い限り、基本的には自宅では洗えません。水につけると、それだけで縮んでしまう可能性があるためです。
毛、絹で手洗いマークがあれば、おしゃれ着洗い用洗剤(洗剤の用途欄に、使用できる素材として毛、絹の表示があるもの)で揉まずに、やさしく押し洗いをする。干し方は、日陰での平干しがお勧めです」
ーーもし縮んでしまったらクリーニング店でも戻すのは難しい?
「毛、絹は一度縮むと戻せません…。白洋舍でも戻すコースはありません。他クリーニング店でも、そのようなメニューはないと思います。
ご家庭では水を使用しない洗浄方法(=ドライクリーニング)ができないので、絶対に縮ませたくない衣類はクリーニング店に依頼するのがベストですね」
ーー家庭洗濯禁止の衣類はクリーニングに出すと基本ドライクリーニングに?
「洗濯表示のなかにドライクリーニングに関する表示もあります。家庭洗濯禁止はドライクリーニングOKのケースが多いので、そのような場合はドライクリーニング扱いになります。
なお、家庭洗濯禁止の衣類でも、商業水洗い(ウェットクリーニング)可能であれば水洗いをおすすめしたり、家庭洗濯もウェットクリーニングもドライクリーニングも禁止なら、白洋舍ではハンドケアクリーニング(拭き洗いによるお手入れ)でお預かりします」
ちなみに、ドライクリーニングとは油を原料とした専用の溶剤を用いるクリーニング方法。水を使用しないので、通常のクリーニングよりも水を通すことによる収縮、型崩れ、色落ち等のダメージが抑えられます。
洗濯表示、どれが何を指す?
いつもなんとなくで洗濯していましたが、洗濯表示の大切さがよくわかりました。洗濯表示は2016年に改正され、日本独自の規格から国際規格に合わせた表示に変わり、全41種あります。
そんなにたくさんあるとなると、すべて覚えるのは難しそう。そこで、洗濯表示の見方をまとめました。正しくお手入れして、お気に入りの衣類を長く着続けていきたいものですね。
【家庭でできる処理】
桶のようなマーク:家庭洗濯処理(中の数字は洗濯液の上限温度、手を入れた表示は手洗いのみ可)
三角:漂白処理(普通の三角は塩素系・酸素系漂白剤で漂白可、2本線入りは酸素系漂白剤で漂白可・塩素系は不可)
四角:乾燥処理(縦棒1本入りはつり干し、縦棒2本入りは脱水せずにつり干し、横棒1本入りは平干し、横棒2本入りは脱水せずに平干し/左上に斜線が入っていれば陰干しを指す)
四角の中に丸:(洗濯後の)タンブル乾燥処理(黒点2つは排気温度上限80℃でタンブル乾燥可、黒点1つは排気温度上限60℃でタンブル乾燥可)
アイロン:アイロン処理(中の黒点の数により、1つは110℃を限度にスチーム無しで可、2つは150℃を限度に可、3つは200℃を限度に可)
【家庭ではできない処理】
丸:ドライクリーニング処理(Pはパークロロエチレン及び石油系溶剤によるドライクリーニングが可、Fは石油系溶剤によるドライクリーニングが可)
丸のなかにW:ウェットクリーニング処理
【付加記号】
×マーク:その処理は禁止
マークに付加された横線:洗濯作用の強さ(線無しは通常の強さ、1本線は弱く、2本線は非常に弱く)
マークの中の黒点:温度の高さ(1個が低温、数が増えるほど高温)