子どもが同じ年齢だと起こり得る「子どもの学歴」によるマウント。いい学校に通っている、通っていないで、おかしな序列が生まれることがありますね。実はこういったマウントは、ママ友内だけではなく、職場でも起こることがあるそうです。Yさん(40代・会社員)も、子どもが通う高校の偏差値をめぐって職場の雰囲気が悪くなった経験があるといいます。
子どものことで盛り上がってきた3人だったのに…
Yさんが所属する部署には、Yさんを含めて同じ年齢の子を持つ同僚・上司が3人いました。職場内に同じ年齢の子どもがいると、共通の話題として子どものことで盛り上がることも少なくありません。
しかし、高校受験を控える学年になると、これまでしていた他愛もない会話が、徐々に辛辣なものに変わっていったそうです。
「模試の判定がいまいちだった。だけど、ランクは下げさせたくない」
「高校ならどこでもいいわけではないから。〇〇高校なんて、絶対に行かせたくない」
そんな会話が徐々に増えてきて、お互いの子どもがどこの高校を目指しているのか、探り合うようになったそうです。Yさんの息子はあまり勉強が得意ではないのですが、職場の人はなぜか進学校を受験すると決めつけていたようでした。
受験がいよいよ近づいてきて、Yさんは同僚や上司から子どもの受験校のことを聞かれました。Yさんは息子が正直に受験する高校を話しましたが、聞いてきた同僚と上司は、どちらも自分の子どもが受験する高校については、言葉を濁して明確には答えませんでした。
「子どもの学歴」が親のステータスになるのを目の当たりに
高校の合格発表があった翌日、いつもと違う「張り詰めた雰囲気」が部署内に漂っていることにYさんは気づいたそうです。何気なく誰もが過ごしているようで、子どもの受験校と合否を知りたい同僚と上司が、腹の探り合いをしていたほか、ほかの職場の面々もその様子を固唾を呑んで見守っていたのです。
悶々とした時間が流れていましたが、口火を切ったのは、20代の後輩でした。何気ない雰囲気で、「皆さんのお子さん、どこの高校を受けたんですか?無事、合格したんですか?」と質問し始めました。
その後輩の言葉に、“待っていました”と言わんばかりに返答したのは、Yさんの上司でした。上司の子どもは県内で2番目に偏差値が高いといわれる進学校・B高校に合格していました。
しかし、とっても誇らしげな上司を横目に、すぐさま同僚が返事を重ねます。「うちの子は、まぐれかもしれませんが、見事A高校に合格しましたー!」と、県内一の進学校に合格したことを報告したのです。
同僚のうれしそうな表情を、上司がとても怖い顔でにらんでいたのを、部署の社員全員が見ることになったのは言うまでもありません。
一方、Yさんが「息子はC高校に合格した」と伝えると、同僚と上司は「あっ!おめでとう。本当にその学校を受験したんだね!」と真顔で聞いてきたそうです。そして「とりあえず高校生になれてよかったね。将来が大変そうだけど」「3人の中で高校のランクが違いすぎるけど、その高校では遊びに夢中になれて楽しそうだね」といったようなことを言われたといいます。
Yさんはこのとき「子どもの学歴」が親のステータスになるのを目の当たりにしたそうです。それからというもの、同僚と上司は事あるごとにぶつかり合う一方で、Yさんには「気楽でいいね」と言うようになったそうです。
次第にストレス…異動を申し出て
また、Yさんは「新人教育」を担当していましたが、息子の高校進学をきっかけに、上司からは「子どもがかわいそうだね、学力を身につけられなくて」「自分の子どもすらうまく育てられないんだね」と言われるようになりました。
次第にストレスを抱えるようになったYさんは、会社の上層部へ相談し、異動を申し出ました。会社側は同僚・上司にも聞き取り調査を行い、「子どもの話題を利用した心理的パワハラにあたる」言動であると認めてくれたそうです。
Yさんは希望通り部署を異動し、上司は厳重注意を受けました。また同僚はそんな上司を見下すようになり、Yさんが元いた部署内はより殺伐とした雰囲気になったといいます。