「やっとプロポーズもできました」29歳IT社員、新しい働き方を選び東京から大阪へUターン

「どこでもオフィス」ヤフー社員に聞く#6

金井 かおる 金井 かおる

 国内の大手IT企業が続々と働く場所を選ばないロケーションフリー化に舵を切っています。ヤフー株式会社は2014年にオフィス以外も含め、働く場所を自由に選択できる「どこでもオフィス」をいち早く導入。その後、制度の改正を重ね、2022年4月から居住地を全国に拡大、飛行機出社も可能となりました。まいどなニュースは、この制度を使って「自分らしく働く」ヤフー社員に話を聞きました。

「住む場所が大阪になった、それだけの感覚」

 ヤフー株式会社インターナルコミュニケーション室に所属する石黒奎太朗(けいたろう)さん(29)は、大阪の大学院を卒業後、東京のヤフー本社で4年間勤務。2022年4月から拡充した「どこでもオフィス」制度を使い、住み慣れた大阪へUターンしました。現在は大阪を拠点に、月2~3回は新幹線で東京本社に出社するという生活です。

──インターナルコミュニケーション室の主な業務は。

「社内イベントや社内広報記事、動画での情報発信などを担当しています。週に1本『今週のYahoo! JAPAN』という動画を作っています。いわゆる動画版の社内報です。社内の事情やカルチャーを感じられるきっかけになるよう工夫しています。弊社は国内のいろいろな場所に拠点があるので、現地まで行ってカメラを回して取材することもあります」

──東京から大学時代を過ごした大阪へ戻ろうと決心したきっかけは。

「大学時代からお付き合いしている人がいて、卒業後は僕は希望通り東京の本社勤務に、彼女は地元大阪で薬剤師として働き始めたので、遠距離恋愛を続けていました。彼女は大阪生まれで地元好き。さらに薬局という地域密着型の仕事。将来について話し合うたびに、拠点をどちらにするか結論が出ず、平行線のままでした。しかし社会人4年目のタイミングで会社は新しい働き方に移行。月15万円以内であれば交通費も出るので、定期的に東京の本社にも行けます。そこで合わせるのは僕の方だなと決心し、彼女のいる大阪に戻りました。この制度ができたおかげで、働く場所の制限がなくなり、やっとプロポーズもできました。彼女に寄り添うことができた感じがして、よりがんばっていこうという気持ちにもなりました」

──大阪での仕事は慣れましたか。

「東京にいた時もオフィスにはあまり行かず、ほとんどオンライン中心の働き方だったので、東京の家でも大阪の家でも変わりません。今までの働くスタイルは変えずに、住む場所が大阪になった、それだけの感覚です。自宅だとノルマを決めて集中して働いているので、やりたい作業がはかどります」

──社内で上司や先輩、同僚とのちょっとした立ち話でアイデアが生まれることもあると思うのですが、離れていることで物足りなさは感じませんか。

「ブレスト(ブレインストーミング、複数名で議論しアイデアを出し合うこと)したいときはzoomやSlackなどコミュニケーションツールをうまく使っています。例えば、zoomでのミーティングが終わった後も、つないだままでブレストをしながら仕事をすることもあります。会社からはオンラインでもオフラインでも使える懇親会費が月5000円まで補助されますので、大阪のヤフー社員とつながる機会や東京の同僚との親睦を深める機会も増やしています。また、月に何度かは出社して、同僚や先輩と対面でのコミュニケーションもできるので、物足りなさは感じていません。

大学の同期たちと「オフィス」活動に熱中

──大阪に戻り、周囲の反応は。

「『帰ってきてくれたんだ』『おかえり』と。大学の同期や社外の人たちと会って話す機会が増え、休日がすごく充実しています。その延長で大学の同期たちと『大学の研究室の時代はよかったよね』という話になり、仲間で集まれるコワーキングスペースを作ろうという話で盛り上がり、研究室を再現した自分たちの部屋を作りました。行きたい時に行ってもいいスペース。自分達では『オフィス』と呼んでいます(笑)」

──賃貸オフィスではなく、家を借りた?

「コワーキングスペースを契約することもできますが、いっそのこと安い家を借りてしまおうということになりました。住むわけではないので、ユニットバスでも、アクセスが悪い場所でもよかった。自分たちのスペースがあればよかったので。みんなでお金を出し合い、大阪府下の共用利用可の古い賃貸マンションの一室を借りました。最初は2人で始めて、今は4〜5人ぐらいです。『仕事が早めに終わったからオフィスにいるわ』『仕事終わったから俺も行くわ』みたいな感じで集まります。コアタイムで来る日も決めていて、隔週の土曜日はお昼から集まり、自分が好きな領域や得意分野を記事としてまとめて、ナレッジシェアをし合っています」

「もともと情報系の大学院にいたんですが、卒業後はその世界からだいぶ離れてしまいました。なので仲間たちから今のトレンドなどを教えてもらっています。ライバルではないですが、みんながんばってるから俺もがんばらなきゃと。大学時代、同じバックグラウンドだったからこそ、この集まりが楽しくて楽しくて仕方ないです。勉強してきたことをシェアし合ったあとは、それぞれがプライベートの勉強などをしながら、食事をしたり、自由に使っています。家に余っているゲーム機を持ち寄って、プロジェクターを使って大画面でマリオカートをしたりすることも。『負けた人は食器洗いね』などと言って楽しんでいます」

──気心の知れた仲間たちと切磋琢磨し、仕事にもいい影響がありそうですね。

「これも大阪に帰らなかったらできなかったことです。仕事のパフォーマンスを維持したまま、プライベートのことも考えられるようになったから新しいこともできた。今の働き方だからからこそだなと思います。リモートで働かなかったらそこまでの余裕はなかったと思います」

▼「どこでもオフィス」拡充 ヤフーは2022年4月、社員の通勤手段の制限を緩和、居住地が全国に拡大された。これまでの同制度では、国内なら好きな場所で働けることになっていたが、居住地に関しては、出社指示があった際、午前11時までに出社できる範囲に限定されていた。制度拡充とともに午前11時ルールが撤廃され、国内であればどこでも住めるようになった。出社は電車、バス、新幹線に加え、特急や飛行機、高速バスも可能になった。交通費は15万円まで、どこでもオフィス手当や通信費補助計1万円、社員間の懇談会費5000円(いずれも月あたり)。希望者にはタブレット貸与。対象は全国の正社員、契約社員、嘱託社員の約8000人。

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