「心からホッとする味」伝えたくて 「さつまいもの伝道師」いもりん 全国各地の品種熟知、イベントやTVで活躍中

西松 宏 西松 宏

 栄養価が高く、スイーツも美味しいさつまいも。「その魅力を伝え、笑顔の輪を広げたい」と、さつまいもをテーマにした全国各地のイベントやメディアなどで人気の女性がいる。「さつまいもの伝道師」こと、いもりんさんだ。

 10月29日、JR博多駅の商業施設では、南九州最大の栽培品種として知られるさつまいも・コガネセンガンの食文化や歴史、商品の魅力などを紹介するイベントが開催されていた。この日の朝はいもりんさんが来場してコガネセンガンで作ったスイーツを無料配布するとあって、約120人が集まった。

 いもりんさんは来場者一人ひとりに声をかけ、スイーツを手渡した。先着100人限定の商品はわずか15分でなくなる人気ぶり。イベントが終わると、いもりんさんは次のイベント会場へ。さつまいもの国際交流イベント(長崎県対馬市)のトークショーに参加するため、足早に博多をあとにした。

一人暮らし、ふかし芋食べ「求めていたのはこれだった」

 いもりんさんは広島県出身で、現在は関東在住。さつまいもをこよなく愛し、自らを「さつまいもの伝道師」と名乗る。さつまいもの魅力に目覚めたのは、学生時代だったという。

 「親元を離れて一人暮らしを始め、日々頑張っていたのですが、自分の中で何かをすごく求めているのに、それが何なのかずっとわからずにいたんです。ある夏の日、スーパーに行ったら、生のさつまいも(その時は紅はるか、紅あずま、安納芋)が売っていたんですよ。それを見た瞬間、ふといつも親が作ってくれていたのを思い出し、自宅でふかし芋を作って食べたんです。そうしたら、それが心の底からホッとする味で…。ああ、私がずっと求めていたのはこれだったんだと、その時気づいたんです」

 さつまいもと一口にいっても、全国に様々な種類があることを知ったいもりんさん。その後、さつまいもの種類、味、栄養、栽培のこだわりなど、独学で知識を深め、全国の生産者のもとを訪ねて回るようになった。また、さつまいもを用いた地域の料理やスイーツを食べ歩き、自身のブログに思いを綴ってきた。

 そうした「さつまいも愛」が知られるようになると、毎年開催され、全国の優れた取り組みをしている生産者を選ぶ「日本さつまいもサミット」(2021年)では「ファーマーズ・オブ・ザ・イヤー2020−2021」の食味審査員に。また、「なるみ・岡村の過ぎるTV」(朝日放送テレビ)で関西のおすすめさつまいも専門店の紹介をしたり、「Mr.サンデー」(フジテレビ)では、さつまいも推しの生き方が紹介されたりと、情報番組にも出演。食分野で新たなビジネスを創出する人の育成、認定をしている「食の6次産業化プロデューサー(レベル3)」の資格も取得した。

 現在は、全国各地で行われるさつまいも関連のトークショーなどのイベントでのトークや、各地のさつまいも名をリズムに乗せ、地域の人たちと歌って踊る「いもりん音頭」の披露、さつまいもを用いた地域振興のための商品開発のアドバイスやプロデュースなども手がけている。

 さつまいもの魅力についていもりんさんに尋ねてみた。「第4次焼き芋ブームの真っ只中でもあり、食卓では主役にも脇役にもなれる『エンターテイモメント』(注・「エンターテインメント」と「イモ」をかけた造語)な食材なんですよね(笑)。食感は主に3種類(ねっとり系、しっとり系、ほくほく系)、中の色も黄色系、オレンジ系、白系、紫系とカラフルな可愛さがあり、栄養も豊富で、自分推しの食べ方や品種を発見できる楽しさがあるのが魅力です」 

 冒頭で紹介した博多のイベントは、さつまいも生産日本一(2021年度)を誇る鹿児島のコガネセンガンの魅力を伝える催し。芋焼酎や芋菓子の原料として同県や宮崎県で使われ、開発以来、半世紀以上が経ったいまも南九州最大の栽培品種で「王者の芋」とも呼ばれるコガネセンガンだが、ここ数年、深刻な問題が起きているという。

 「生産地の鹿児島県鹿屋市にあるさつまいも畑を見て回ったときは心が痛みました。『さつまいも基腐(もとぐされ)病』という伝染病が4年ほど前から流行し、ここ数年、収穫量が年々減っていて、収束の兆しがなかなかみえていないとのことなんです。コガネセンガンは南九州の人たちの芋産業を長年支え続けてきただけに、とても心配です。いろんな人たちが力を合わせて解決策を講じていかねばならないと思うので、そうした危機がいま起こっているということを伝えたいです」といもりんさん。溢れるさつまいも愛からか、時折、涙目になりながら話した。

 今後は「まだ公開はしてないんですが、さつまいもを使った料理、スイーツなど、自分でアレンジ、開発したレシピもあるので、料理やおすすめの専門店紹介などをまとめた本を出すのが目標の一つです。『暮らしの中にさつまいも』とのコンセプトを大切にしていきたいと思っています」といもりんさん。「さつまいもを通じて、多くの人(生産・加工業者や消費者など)の輪を繋げていければ。その一翼を担えるよう、これからもさつまいもの魅力を発信していきたいです」と、ホクホクの笑顔で語った。

さつまいも伝道師いもりんのウェブサイト https://www.imorin-web.com

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