今年のノーベル医学生理学賞、何がすごい? 人類史を劇的に変えた衝撃の発見だった

ドクター備忘録

松本 浩彦 松本 浩彦

 今年のノーベル医学生理学賞はスヴァンテ・ペーボ博士が受賞しました。スウェーデン生まれのペーボ博士は、沖縄科学技術大学院大学の特任教授も兼任しています。その業績とは。

 私たち現代人は「ホモ・サピエンス」(新人)と呼ばれています。地球上にわれわれ「新人」が登場する数万年前。それ以前には「旧人」と呼ばれる、現代人とは異なるヒト属が存在していました。それが「ネアンデルタール人」や「デニソワ人」です。ペーボ博士はネアンデルタール人のDNA解読に成功し、ロシアに住んでいた別の旧人「デニソワ人」も発見します。

 現代人の祖先は、約7万年前にアフリカからユーラシア大陸を経て世界中に移住しました。ネアンデルタール人やデニソワ人は、アフリカから拡散した「新人」とは別のヒト属で、同時代を生きながら独自の文化と生活を営んでおり、その系譜は4万年前に途切れています。

 しかしDNAの解明で、現代人の祖先がアフリカから世界中に移住していく過程で、ネアンデルタール人やデニソワ人という別のヒト属と交配していたことが明らかになります。われわれホモ・サピエンスの多くは、ずっとアフリカに残り続けた人々を除いて、ネアンデルタール人のDNAを受け継いでいるのです。

 10万年前、地球上には様々な種類のヒトがいました。ヨーロッパとアジアにネアンデルタール人、デニソワ人は東アジアから世界中を移住します。ジャワ島にはホモ・エレクトゥスが居ました。しかし氷河時代が終わると、たった一種、われわれホモ・サピエンスだけが生き残ります。しかし過去の様々なヒト属の遺伝子は現代に生きる我々に受け継がれている。人類史を劇的に変えた衝撃の発見です。

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