子供が産まれたから飼いきれない
まるるちゃん(3歳・オス)は、フレンチブルドッグ。一般家庭で飼われていたが、飼い主に子供ができ飼いきれなくなったので、アニフェアという団体に渡され、そこで里親を探した。アニフェアでは、こうした飼いきれなくなった犬を引き受け里親につなぐ活動をしている。
神奈川県に住むYさん夫妻は、夫婦共に幼い頃から猫や犬のいる家庭で育った。結婚してから「いつかはペットを迎えたい」と思っていた。アパートから一軒家に引っ越したのを機に、生活が落ち着いたら犬を迎えることにした。
「そう決めてからペットショップやブリーダー、保護施設を見に行きました。私たちはたくさんの犬が家族が現れるのを待っていると知り、保護犬を迎えることにしました」
オンライン譲渡会
ネットで探すと1週間前に見学に行ったアニフェアのサイトにまるるちゃんが掲載されていた。Yさんは一目惚れした。どこがいいというのではなく直感が働いた。
「犬種は決めていなかったのですが、まさかフレンチブルドッグに一目惚れするとは思っていませんでした。小さい時に家にブルドッグがいて、飼うのが難しいことを知っていたのです。でも、夫はブルドッグ系の犬種を希望していました」
Yさんは近くに住む両親にも相談した。
「保護犬を飼うのは初めてだったことに加え、アニフェアではトライアル期間がないのです。申し込んだら1週間以内に引き取らなければいけません。問い合わせてみないと分からないということになり、保護の経緯や健康状態について電話で聞きました。年齢は2歳半前でした」
すぐにでも会いに行きたかったが、当時、アニフェアでは土日しか譲渡会をしていなかった。Yさんは土日まで待っていたら誰かに譲渡されてしまうかもしれないと思い、半ば諦めかけたが、オンライン譲渡会をしてもらえることになった。
2021年12月、Yさん夫妻はビデオ通話でまるるちゃんと対面、歩く姿やトイレの仕方、便の状態も確認できた。Yさんは心配性で優柔不断だが、なぜかこの時は「この子にしよう」と決心できた。
家族になれた
12月26日、Yさん夫妻は、まるるちゃんを引き取りに行った。一緒に暮らし始めたら可愛くて仕方なかったが、不安もあった。
「前のお家でどんな生活をしていたのか分からず、少しずつまるるのことを知る感じでした。一番大変だったのはお散歩です。あらゆるものに反応してひどく落ち着きがなく、真っ直ぐ歩けませんでした。リードが足に絡まって転んだこともありました」
何か問題が起こる前にと思いドッグトレーナーを付けて相談すると、「おそらく今までお散歩をしたことがない」ということが分かった。どうりで肉球が柔らかく、短い散歩でも脚の裏が血だらけになった。その他にもパピーの頃から何かと「経験」をしたことがない犬だと分かった。
「甘噛みも力加減を知らなかったし、おもちゃへの執着が異様に強く、興奮して気持ちが抑えられなくなるのです。他の犬や人にどう接したらいいのかも分からないようでした」
まるるちゃんを迎えてからまだ1年も経っていないが、Yさんはずっとまるるちゃんと一緒にいるような気がするという。甘えん坊で、いつもYさんの体のどこかに触れているまるるちゃん。Yさんがキッチンにいると、強力な視線を送ってくる。
「前の飼い主さんに手放されたからべったり甘えるのかなと複雑な心境になることもありますが、最初に画像で見た時の笑顔と今の笑顔は全然違います。家族になれて良かったなと思います」