母は“毒親”「妊娠なんかして、お前は汚い女だ」とまで言われて 二度と会うことはないけれど…今だから思う「母はかわいそうな人」

長岡 杏果 長岡 杏果

「母親には絶対服従で、自分の意思を持つことも許されませんでした。逆らうと暴力や精神的暴力を振るわれるため、親の前ではいくつになってもいい子を演じ続けなければいけなかった」と話すのは、春子さん(北陸在住・40代)。春子さんは、いわゆる「毒親」に育てられた過去があり、現在8歳の娘さんを育てています。

毒親とは「毒になる親」の略で、一般的には子どもを傷つけたり、支配したり、子どもにとって悪影響を及ぼす親のことをいいます。毒親に苦しめられたことで、大人になってからも生きづらさを感じている人がいるといい、春子さんもその一人だといいます。

「容姿もけなされてきたので、自分に自信が全く持てませんでした。自暴自棄になることもたくさんありましたし、生きることがつらくて、寂しさのあまりに、消えてしまいたいと思うこともありました。人間関係を築くことも苦手で、母と似た女性には嫌悪感を抱いてしまいます」

と語る春子さん。母親から受けてきた数々の“ひどい仕打ち”について、話してくれました。

   ◇   ◇

▽高校受験当日は、お弁当も朝食も作ってもらえなかった

すでに本命の私立高校は合格していましたが、母の決めた進学校を受験しなければなりませんでした。高校受験の当日は朝食もお弁当も作ってもらえませんでした。

「なんで私が作らないといけないの?私は仕事があるの」と言って、朝起きてくることもありませんでした。試験当日私は空腹で試験に臨み、お昼に軽食を買えるようなお店もなかったため、空腹と相まってとてもみじめな思いをしました。

試験中、空腹のせいでお腹の音が鳴り響き、恥ずかしさに耐えられなくなり、試験を放棄してしまいました。結果は当然不合格で、母からは「お前はばかだから落ちたんだ」とひどく罵られ、この出来事はいまだに母に言われることがあります。

▽交際を邪魔する母

彼氏ができると、ことごとく邪魔をされました。私の知らないところで、彼氏に嫌がらせをしていたこともありました。彼氏が私宛てに送ってくれたプレゼントを母が受け取り、私に内緒で捨ててしまうこともありました。母に聞いても「知らない」と言ってしらを切り、私宛ての郵便物はすべて開封して、母が中身をチェックしていました。

▽可愛いものは買ってもらえなかった

小さい頃から洋服・下着・髪型など女の子らしさを強調するものは一切与えてもらえませんでした。

少しでもおしゃれをすると、「男に見せたいのか」「いやらしい女だ、汚らしい」などと罵られ、見た目は男の子のように髪は刈り上げられ、常にズボンを履いて、下着は白の無地しか許されませんでした。

大学進学で一人暮らしをはじめ、そこでようやく自分がしたかった髪型や、服、下着を身に着けられるようになり、母の呪縛から解放されました。

▽母のために作った食事は捨てられる

学校の先生をしていた母は、夜遅くに帰宅することもありました。そんな母を気遣い、下宿先から実家に帰ってきたときなどは母のために食事を作りましたが、「私はこんなの食べたくない」と腹を立て、目の前で捨てられてしまいました。

私は母が喜んでくれると思っていたので、すごく悲しかったです。食事だけでなく、お土産を買ってきても気に入らないと言って捨ててしまうような人でした。

▽妊娠したら「汚い女」だとわめく

昔から母に「妊娠なんか認めない」「子どもなんか絶対つくるな」と言われてきました。

ですので、私は妊娠したことを母には黙っていたのですが、人づてに聞いた母から電話があり「妊娠なんかしてお前は汚い女だ」「あれだけ妊娠するなと言っただろ」とヒステリックにわめき散らしていました。

▽出産報告をしたら冷酷な返事

出産後には、一応母へ一報を入れたのですが、「お前なんかに育てられるわけがない」「孤児院に入れてください」と、予想だにしなかった母からの心ない返事に深く傷つきました。夫もあまりの冷酷なメールに怒り心頭でした。孫が生まれたことへの祝福のメッセージは皆無でした。

▽孫が入院しても心配もしない

娘が赤ちゃんの頃に、緊急入院をしたのですが、母から「なんで私がお見舞いに行くの?」「行くわけないやろ」とはねのけられてしまったのです。あと1日遅ければ死んでいたかもしれないとお医者さんから言われるほどの状態だったのですが、母は孫の心配をすることもありませんでした。

   ◇   ◇

現在の母親との関係を聞くと、「大きくなった孫の顔が見たいだろうと思い、6年振りに子どもと実家に寄っていい?と連絡をしましたが、『家には来ないでください』とのことでした。孫に会うことを望んでいないことが改めてわかったので、もう二度と母と会うことはないと思います」とのこと。その一方で、こんな思いを抱くようになったそうです。

「今となっては、母を恨むというよりは、すごくかわいそうな人だと思います。私たちに会えない、後ろめたさが心のどこかにあるのかもしれません。毒親になってしまうようなつらい出来事があったのかもしれませんし、子どもをうまく愛することができず、苦しんできたのかもしれません」

毒親になる親にも心の傷があるのかもしれない…。そう感じるようになったという春子さん。「大人になった子ども側も、親をかわいそうに思い、少しだけ許してあげることができたら、心の中の憎しみが緩和されるのかもしれません」とも話してくれました。

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