木材の容器に入ったつまようじの写真とともに、これまで実際に言われた理不尽なクレームとして「つまようじが木の匂いがするんだけど…」と驚きの経験を伝えたのは大阪の菊水産業株式会社(@kikusui_sangyo)。そのときの話を聞きました。
同社は、大阪府の地場産業であるつまようじの会社。国産爪楊枝のほか、和菓子で使われる黒文字(くろもじ)楊枝などを製造・販売しています。地場産業として持ち手に溝がある国産爪楊枝を製造している企業はここだけです。
リプライには「爪楊枝は何で出来てると思われてたのかをぜひお聞きしたい笑」「えっ(;゚Д゚)! 今までどんな爪楊枝をつこてたんやろ」「むしろいい爪楊枝は木の香りがすると思ってる(黒文字楊枝)」と、不思議に思うコメントが多数あがりました。
「木でできているので…本当にかすかに香る程度です」
「現在日本で皆さんがお使いになっている一般的な爪楊枝で、主に小売店で販売されているリーズナブルな製品は中国産がほとんどなのですが、材料は白樺です。種類としては竹製の物、ウツギと呼ばれる木からできている物、高級料亭などで出る黒文字楊枝などがありますが中国産がほとんどです」と担当者。
そんななか、国産にこだわって、白樺で爪楊枝を作り続けている同社。白樺で作ると木の香りがするものなのでしょうか。担当者は「国産、海外産関係なく、多少は香ります。ただ本当にかすかに感じる程度で、杉やヒノキのように強いものではありません。口に入れるものですからね、そういった面でも昔から白樺材が使われているのだと思います」。
今回のクレームは、卸先の問屋に届いたものの返答に困ったそうで同社に問い合わせがあったとのこと。「問屋さんには『爪楊枝の材料は北海道産の白樺を使用していて、木材なので木の匂いが若干するのは仕方ないです』と答えました。その後問い合わせが来ることはありませんでしたので、お客様はきっと納得されたのだと思います」と解決したといいます。
「爪楊枝の持ち手にクレームがついたこともあります」
ほかにも過去にも意外な問い合わせとして、「爪楊枝の持ち手に溝があると思うんですが、その溝があまり付いていないというクレームと溝が付きすぎているというクレームが来たことがあります」とも話してくれました。
その溝は砥石に付けた溝の上を爪楊枝の材料を通らせて付けるため砥石が摩耗して溝が浅くなる事や、0.数ミリ単位の直径の差で溝が浅くなる事があるそう。
「砥石が摩耗して溝が浅くなると、砥石を新しくし、溝をダイヤモンドで付け直してまた機械にセットします。新しい砥石にセッティングしたては、溝が深く付いてしまう事もあります」。そのため、つまようじとして利用する上での影響はありません。溝の深さについて疑問を抱いていた方には、参考になればいいですね。
火災で廃業の危機に
国産爪楊枝は、1980年代には年間約700億本が製造され、その規模は世界シェアの半分を占めるほどだったと言います。しかし中国製品が出回るようになると、国内生産はピーク時の1%以下にまで落ち込みました。そんな状況下で、同社は2021年10月に、もらい火によって事務所、作業場、倉庫が全焼、在庫も燃えてしまうという不運に見舞われました。
いっときは廃業の可能性はあったものの、クラウドファンディングなど多くの応援もあり、無事事務所や作業場を移転。工場も改装工事を経て、製造を再開できました。
「まだ元に戻らない部分や大変な事はありますが、沢山の方々のご支援や応援のおかげでなんとか存続できています。当社の北海道の白樺材を使った“つまようじ”は薬品を一切使用しておらず、直接口に入れる物だからこそ品質にこだわり製造しています」と担当者は話してくれました。
同社は爪楊枝のほか、国産の竹を使い職人が制作した調理道具やトレーなどの日用品も販売。詳細は公式サイトから確認を。
菊水産業株式会社公式Twitter:@kikusui_sangyo
公式サイト:https://kikusuisangyo.co.jp/