「録音機器ですか?」隣席の人への一言 「スタッフに声をかけるべきだった」反省ツイートに反響

門倉 早希 門倉 早希

舞台挨拶に行った際、隣の人が手元で何かの機械を操作しており―。

「知ってる方も、知らない方も、少しでも多くの人に届きますように」とツイッターに投稿された文章に7.2万いいねがつくほど関心が高まっています。

投稿者の7cさん(@___ooo777)が語るエピソードは、以下のようなものでした。

7cさんがある舞台挨拶に出向いた際、隣の人が手元で小さな機械を操作していたそう。見たところスマホや携帯電話ではなく、大きさや形、光が点滅していることから録音機器の可能性が頭に浮かびました。舞台挨拶といえば、基本的に撮影や録画・録音は禁止のことが多く、今回の舞台挨拶も例外ではありません。

本人に直接確認するか、やり過ごすか迷ったという7cさん。しかし意を決し、「その機械は録音機器ですか?」と声を掛けました。すると相手の方は、機械は録音機器ではないこと、人工内耳を装用しており聞こえ方の調整をするためのもので、会場の音響に合わせて操作していたことを明かしたといいます。

それを受けて7cさんは相手に謝罪。投稿した文章内では「知識がないからと楽しみに来てる人を傷つけてしまうような声掛けをしてしまったこと、すごく反省しています」と述べました。そして、自戒の念とこのようなケースがあることを知ってほしいという思いから、投稿に至ったといいます。当時のこと投稿者の7cさんに、人工内耳については装用者でブログで日々を発信するぷーどるさんにお話を伺いました。

投稿者「生きやすく素敵な世の中になるのでは」

ーー投稿には反響がありました。

「今回のツイートをきっかけに、人工内耳や補聴器を使って生活している方からのご意見を多くいただきました。私が実際に目にした機械とは別に、スマホで調整できる補聴器の存在があることも新たに知ることができました。

自分の中の知識だけで物事を判断して、疑うようなお声かけをしてしまったこと、本当に申し訳なかったと思っております。知らないということが人を傷つけていい理由にはなりませんので、深く反省し同じ過ちをしないよう努めたいと思います」

ーーさまざまなコメントが届いていますね。

「また、スタッフの方にまずは声をかけるべきだった、というご意見も多くいただいております。一時の感情に任せて自分で声をかけることによって、トラブルになる可能性を考えることができておりませんでした。軽率な行動をとったこと、反省しております。

引用リツイートやコメントなどで多くの情報を教えてくださった皆様、ありがとうございました」

ーー反響も含め、今のお気持ちは。

「まずはここまで多くの方の目に留めていただき、ツイートして良かったと思っております。当事者ではないと知らないことが多く、知らないことが原因で無意識に傷つけてしまうこともあると学びました。

私の行動や言い方に関して厳しいご意見も数多くいただいております。しかし知識を得ることによって、あらゆる可能性を想像することができると思っております。ツイートをご覧になった皆様が、知り、気づき、理解し、助け合えるようになったらお互い生きやすく素敵な世の中になるのではないかと考えております。私も、ご指摘いただいたことを今後に活かしていきます」

人工内耳の装用者に話を聞いた

人工内耳の装用者は今回のエピソードについてどう感じるのでしょうか。人工内耳の装用者であるぷーどるさんにお話を聞きました。

ぷーどるさんは、聴神経の病気(Auditory Neuropathy)で難聴があり、2010年に人工内耳の埋め込み手術を受けました。以来12年間、人工内耳を装用して生活。ブログでは人工内耳装用者の日常について投稿されています。

ーー場所によって調整は欠かせないのでしょうか。

「私が使ってるコクレアの人工内耳には、チャンネルが4つあります。病院で言語聴覚士の先生に場所や状況に応じたマップ(聴神経を刺激するため装用者に合わせて作られるプログラム)を作成して頂いているのですが、普段の日常生活によく使うパターンを作ってもらっているので、たまに行くコンサートや演劇、広い会場での講演会などでは音が大きすぎて聞き取りにくかったり、または音が小さくて聞こえづらかったり、音が響いて聞き取りにくい、といったことが起こります。

そんな時は一番良く聞こえるチャンネルを探したり、音量や感度を変えたりする事はあります」
※コクレア:オーストラリアの人工内耳メーカー

ーー今回の話題もそういった調節の最中だったのかもしれませんね。ぷーどるさんもリモコンで調節を?

「聞こえ方の調節がiPhoneで出来るようになってからは、リモコンを使わなくなりました。なので指摘されたことはないのですが、iPhoneがリモコンの役割をしているとは皆さん知らないし、真面目なお話を聞いている時やコンサート聞いている時など、ちょっと聞き辛いからとスマホ出して操作していると『あの人、こんな時にスマホいじってるよ!』と思われないか気持ち焦る時があります」

ーー確かに、知らなければ疑問を抱く方もいるかも。

「ですので、人とのコミュニケーションの場やそのときの状況に合わせて、人工内耳である事をなるべく伝えるようにしています。公共の場でいうと、病院などでは事前に(問診票にも書き、先生にも直接)、習っているオカリナ教室でも新しい方が来られたら必ず伝えるようにしています。後ろから呼ばれたときに私が気づかず、『無視された?』というような誤解を防ぐためにも全員に知っておいてもらえればと思っています。役所や買い物などで聞き取れている時は、特に何も言いません」

ーー7cさんの投稿を受けてどのように思われましたか。

「あくまで私の場合にはなりますが、不審に思われたら聞いていただければありがたいです。こちらも『人工内耳のリモコンです』と説明しますので、分かってくださるとうれしいですね。

補聴器の人が自転車に乗っていてイヤホンを外すように注意され、補聴器だと言っても信じてもらえなかったというニュースを見ると悲しくなります。

人工内耳も同様にあまり広く認知されていないので、今回の投稿者さんからの発信で人工内耳や補聴器について少しでも知ってくれる方が増えれば、装用者としてありがたいことですし、とても嬉しいし助かりますね」

◇ ◇

投稿には「なるほど、知らなかったです。共有ありがとうございます 勉強になりました」「こういうときはスタッフに声掛けしてもらえるとうれしい」といった声のほか、「同じような機械を使ってるけど、事前にスタッフさんに言うようにしている」といった声も届きました。

ぷーどるさんのブログ「ひとりごと」:https://blog.goo.ne.jp/papipupepo12

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