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1930年創業、社員9人の小さな出版社が刻む決意 78歳社長「本を作りたい人の欲望は廃れていない」

京都新聞社 京都新聞社

 滋賀県彦根市鳥居本町にある「サンライズ出版」は、湖国を代表する地方出版社だ。県内各地の歴史、文化を取り上げた書籍から、自費出版による自伝まで、バラエティーに富んだ本を取りそろえる。地域に根付いて96年。デジタル化などの波に押されて紙にまつわる産業が先細りする中、2代目の岩根順子社長(78)は「本を作りたい人の欲望は廃れていない。後世に残すべきものを本の形にして残していくことは、歯を食いしばってでも続けたい」と力を込める。

 岩根社長の父豊秀さんが1930年に創業した謄写印刷店「サンライズスタヂオ」が前身だ。創業当時はチラシ、ポスター、資料などの印刷を商店、行政から請け負っていた。

 転機を迎えたのは93年。明治初期まで各地の山々を渡り歩いた職人集団・木地屋(木地師)研究の第一人者で民俗学者の故橋本鉄男さんに印刷依頼を受けた際、出版事業へ乗り出すことを提案された。既に経営を引き継いでいた岩根社長は「『滋賀は歴史の宝庫。いろんな題材があるから、ぜひとも本を作ってくれ』と背中を押されちゃいました」と振り返る。

 翌94年、今も続くシリーズ「淡海(おうみ)文庫」の第1号「淡海の芭蕉句碑」を創刊した。「自分の土地が良いという宣伝ではなく、滋賀の成り立ちを冷静に見つめ、狭いテーマで深く掘り起こす」。橋本さんの教えに基づき、淡海文庫は、一般にはあまり知られていない湖国の文化や歴史、生活の足跡を掘り起こす看板シリーズとなった。

 出版を始めた当初は、社長が新刊数冊をかばんに忍ばせて本にまつわる寺や土産店、菓子店などを巡り、頭を下げて店頭に置いてもらったという。淡海文庫シリーズは現在76冊を数え、岩根社長は「目標の100冊は何としても目指したい」と意気込む。

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