「なんでも入るんよ、着物」。そんな一言とメモ帳に書かれたシンプルな着物のイラストがツイッターに投稿され、8万9000もの「いいね」が寄せられています。「(ほぼ)毎日着物」を着ているという投稿者の大西里枝(@RieOhnishi)さんは、京都で扇子の製造・販売を展開する「大西常商店」の若女将。なんでも着物に入れてしまう日常とは!?
大西さんによると、着物の懐には領収書や名刺、帯にはスマートフォンや鍵など大切なもの、両袖にはゴミが入るとのこと。まるで、着物にはさまざまな大きさや深さの、たくさんのポケットがついているようです。
投稿には「凄い秘密情報が…」「着物を着るとき、かばんはどうしたらいいかと思ってたけど、なるほど、いらないのね」「ゴミの収納、すごい便利ですよね。領収書は襟元なんですね!?たしかに、折れずにいいかも」「着物の収納力すごい。袂の「ゴミ」ってのを見て笑ってる。洋式ドレスより便利そう」など、驚きつつ納得するコメントが寄せられていました。
また、「これわかる~! 昔仕事で着物着てたけど、ほんと着物は収納たっぷり」という共感や、「改めて考えると着物にはポケットが無いのに、収納力抜群ですよね 私も浴衣を着た時とか....帯の中に色々詰め込みます。落ちる心配も盗られる心配ありません」「お茶会が終わった後に着物のいたる所から、お懐紙、使い終わったお懐紙や糸くずなどがボロボロ出てくるのを思い出しました」「踊りの先生はお太鼓の中にタオルやハンカチ、たまにメモまでいれてます」などの使用例が。
さらに、懐や袖があるなど、お坊さんが着る法衣と着物には共通するところがあるからか、「坊さんも一緒です」という声も寄せられていました。ツイートが話題になった大西さんですが、普段の生活の中で、どんなふうに着物のなかにいろんなものを収納しているのでしょうか。
「よくわからないものを袖に入れてしまいがちです」
――プロフィール欄に「(ほぼ)毎日着物」とあるのですが、普段着として着ていますか、それとも仕事着ですか?
「最初は仕事着として着用しておりましたが、やはり普段から着ていないと洋服に逃げてしまうので洋服を捨てて、普段着として着用しています」
――着物をよく着られるようになったのはいつからですか。
「家業に帰ってきた5年前から着用しています」
――いろんなものを懐、帯の中、袖の中に入れている時、落とさず移動するコツはありますか。
「懐と帯の中は絶対に紛失しないので、安心していますが、袖の中はふとした拍子に落としてしまう可能性があるので、最悪落としても困らないものをいれるのがコツです」
――最近着物に入れたもの、便利だと感じたエピソードを教えてください。
「スマホはいつも帯に挿しているので本当に紛失しなくなりました。ちょっとした買い物の際、エコバッグを持っていなくても袖に入れて持ち帰っています」
――実際には、どんなゴミを入れるんですか。
「色々ありますが、いつも洗濯機に着物を入れる前にゴミを出すのですが、よく忘れてしまって夫に怒られています。一番怒られたのは、魚の形をした醤油入れですね。お弁当についているやつをそのまま入れたらしく、我ながら呆れました。酔うとよくわからないものを袖に入れてしまいがちです。
毎回洗濯機にかける際に『袖からごみ出した!?』と夫から問い詰められており、『そういえばめっちゃゴミ入れてるな』と思ったのが、『着物がなんでも入る』というツイートをしたきっかけです」
――大西さんが着物に感じる魅力を教えてください。
「帯と着物で様々な組み合わせが楽しめるのがいいですね!洋服と違って、来ているだけで褒められるのもうれしいです」
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普段着として着ているからか、着物とのつきあい方がざっくばらんな大西さん。醤油入れのエピソードはなかなか豪快ですね。風呂敷がエコバッグになるというのはよく聞きますが、着物の袖もそうなるというのは驚きです。帯とのコーディネートが楽しめると同時に、スマートフォンなど大事なものや、お店で買ったものまでしまえる着物。大西さんのように軽やかに着られると素敵ですね。
そんな大西さんが4代目女将を務める「大西常商店」では、夏用の扇子だけでなく、日本舞踊用、茶席用、祝儀用のほかにも、家に飾って美しい扇子を取り扱っています。また昔ながらの遊びの「投扇興」と茶席体験や、ぬりえで楽しむ絵付け体験に日本の伝統文化と気軽に親しむことができる企画なども予約制で開催。
■大西里枝 扇子屋若女将(@RieOhnishi)さんのTwitter https://twitter.com/RieOhnishi
■大西常商店 https://www.ohnishitune.com/