「よそ者を排除」「メンツを重視」!? 島根県が「寛容性ランキング」で最下位に その理由とは

宍道 香穂 宍道 香穂

 都道府県別の「寛容性」を測った調査で、島根県は寛容性の高さを表す数値が全国47都道府県で最下位という結果が出た。島根県出身者としては「やっぱりそうか」と思うが、寛容性の具体的な中身はどういった点なのか気になるところ。調査の詳細や島根県の傾向と課題を聞いた。

調査の概要、設問

 調査は不動産情報サービス「LIFULL(ライフル)」(東京都千代田区)の社内シンクタンク「LIFULL HOME'S総研」が実施し、2021年9月、報告書を発表した。ライフルホームズ総研は2017年から毎年、住みやすさをテーマにした調査を実施する。調査の結果はホームページで公開している。今年は地方創生のヒントとして「寛容性の高さ」に着目し、アンケートを実施した。

 他人や物事をおおらかに受け入れる「寛容性」は、多様性のある社会を作る上で必須の要素。調査では各都道府県の出身者、在住者の計約3万人を対象に「他県からの移住者を快く受け入れる風土か」「自分と違う意見、価値観を受け入れる雰囲気があるか」といった設問に回答してもらい都道府県ごとの寛容性の高さを調べた。

 島根県の寛容性を示す指標は36・1ポイントで全国最下位の47位。46位は秋田県で36・3ポイント、45位は富山県で38・8ポイントと、いずれも日本海側の県が並んだ。秋田との差はわずかで、競り負けた感じだろうか。

 寛容性指標が最も高かったのは東京都(77・2ポイント)。2位は神奈川県(73・2ポイント)、3位が大阪府(69・5ポイント)で、4位以下は千葉県、埼玉県と続く。首都圏を中心に、人口の多い地域は寛容性が高い傾向にあると分かる。人口の少ない日本海側と首都圏や大阪府で、ここまで違いがはっきりするものかと感じた。

島根の傾向、寛容性の低さの要因は?

 地域ごとの寛容性の高さ、低さはどんなことに表れるのか。ライフルホームズ総研の島原万丈所長によると「凝縮性と開放性」がカギという。

 凝縮性とはコミュニティー(集団)の内側へ向かって集まる性質のこと。ルールや規則でコミュニティーがまとまっていて、集団の内側にいる人々にとっては過ごしやすい雰囲気と言える。一方、集団の外側にいる人や周囲と違うことをしようとする人は排除の対象となりやすく、寛容性の低さにつながっている。東北地方や島根県は特に「凝縮性」が高く、支配的な気質を感じている人が多いという。

 調査で島根県在住者、出身者には「人間関係が濃密でつながりが強い」「損得よりも名誉や面子(めんつ)を重んじる傾向がある」「規律や道徳に厳格で生真面目な印象がある」といった「凝縮性」を象徴する項目に同意する人が多く、いずれの割合も全国平均を大幅に上回っている。

 凝縮性が高くなる要因について島原所長は「農業で栄えた地域や藩制度が強く機能していたことも、よそ者を排除するという気質の醸成に影響しているのでは」と推測する。逆に、宿場町や港町として栄えた地域は「よそ者」が入ってくることが日常的にあるため、コミュニティーが固定されにくく、排他的な気質となりにくいと考えられる。

 同じ山陰地方でも、鳥取県は45・5ポイントで29位だった。島根県と比べて鳥取県西部を中心に港や道路、鉄道で栄え「よそ者」を迎え入れる雰囲気があり、寛容性の高さにつながっていると考えられる。

 開放性は凝縮性の逆で、自分と違う考え方を受け入れたり「いろんな人がいる」と個人を尊重したりする性質のこと。開放性が高い地域では他人と違うことをしても排除されにくいとされる。

 寛容性指標が最も高いのは東京都で、2位が神奈川県、3位が大阪府と続く。いずれも「自分とは違う意見や価値観を尊重する寛容さがある」「初対面でもすぐに打ち解ける開放的な雰囲気がある」といった項目に同意する人が多く、開放性の高さが表れている。日本各地から人が集まってくる都会地は良くも悪くも他人に干渉しない人が多く、受容性や寛容性の高さにつながるのかもしれない。

寛容性が高い社会とは? どうすれば解決する?

 島原所長は「住みよい社会を作る上で、寛容性の高さは不可欠」とする。寛容性が高い社会を作るためには、どうすればいいのか。島原室長は一例として「自分の価値観を他人に強要しないこと。価値観を変えるのではなく、ふるまいやマナーに気を配ると良い」とした。

 また、島原所長は今回の調査で分かったこととして「アートに触れる機会の多さは寛容性の高さと相関がある」と話した。絵画や音楽、演劇など芸術に触れる機会が多い地域に住む人々は寛容性が高まる傾向があるという。「アートには、多様な見方を提供するという側面がある。アートに触れることで、人それぞれに違う考え方や感じ方があるのだと視野を広げることができる」と解説した。

 島原所長は「寛容性が低い状態は経済の失速などにもつながり、地方創生を阻んでしまう可能性がある」と危惧した。また「例えば職場などで、若いやつは黙っていろという雰囲気があると、異論をはさみにくくなる。これでは新しいアイデアが試されなくなってしまう」と話した。

 たしかに島根県の企業や地域社会にはありそうなことだ。他人と違うものを持っていても排除されない風土は住みやすさだけでなく、地域活性化ともつながってくるとは、これからの地方にとって大きなテーマだと思った。

 寛容性、全国最下位の島根県。移住者や若い人は暮らしにくさを感じているのかもしれない。「つながりが強い」ことは良い面だと思うが、「自分の価値観を他人に強要せず、振る舞いやマナーに気をつけること」は、一人一人が今日からでもできること。寛容性の低さが地方創生を阻む可能性があるなら、社会全体で考えていかなくてはいけない。

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