野外炊具(やがいすいぐ)とは、陸上自衛隊が装備する野外での炊事専用の特殊車両のこと。トレーラー上に炊飯器や万能調理器を積載し、トラックなどに牽引されて必要な現場に移動。演習場などで隊員に温かい料理を提供するだけでなく、災害にあった被災地では避難所などに展開し、被災者への炊き出しにも活躍しています。
2022年9月3日と4日に開催中の『もしもフェス渋谷2022』において、野外炊具を使用した自衛隊員によるカレーの炊き出しが行われています。『もしもフェス渋谷2022』とは、2019年まで開催していた『渋谷区総合防災訓練(SHIBUYA BOSAI FES)』の流れをくんで「代々木公園でみんなで楽しく防災・減災を考えよう!」という普及啓発する新たなイベントのことです。
日本で最初に誕生した連隊がカレーの炊き出し
カレーの炊き出しをしたのは、陸上自衛隊第1普通科連隊重迫撃砲中隊。第1普通科連隊は、東京都練馬駐屯地にある日本で最初に誕生した連隊で、第1の番号を有することで、創隊当時から「頭号連隊」とも呼ばれています。
カレーの炊き出しに使用したのは、「野外炊具1号」の改善型で、2010(平成22)年から調達を開始した「野外炊具1号(22改)」。調理能力は200人分の主食と副食を同時に45分以内に調理でき、6個のかまど、皮むき器、スライサーを装備し、炊飯や汁物、焼き、煮る、炒め、揚げることも可能。今回は通常よりも量を半分にして約400人分のカレーを炊き出ししました。
かまどの燃料は灯油で、電力供給やコンプレッサーを必要とするためホンダ製発電機を中央に設置。食材が入った冷蔵、冷凍庫はトラックで運搬し、調理は移動中でも可能とのことですが、隊員いわく実際にやったことはないそうです。
疲れきったカラダや心に元気を与える自衛隊カレーの味は?
この日はスライサーや皮むき器は使用せずに、別テントで隊員が手作業でジャガイモ、人参、玉ねぎなどを丁寧にカットしていました。カレーはビーフカレーで、使われているルーはS&Bやハウスなどをブレンド。カレーの特徴を聞くと「いたって普通」とのことで、駐屯地によっても違うそうです。カレーの作り始めは午前10時頃からで昼の12時にカレーを配り始めていました。珍しい自衛隊カレーが無料で食べられるとあって長蛇の列でした。
気になる味はそれほど辛くなく、ご飯は固めでしっかりとした歯ごたえがあり、具材もゴロゴロとしたワイルドな感じがいかにもミリメシ感を出していました。福神漬とラッキョウはお好みでいれるスタイル。具材やレシピ、味も大事ですが、陸上自衛隊員が野外炊具で作った栄養価が高く温かいカレーを食べられるということに価値があるのです。もし、被災地や避難場所で食べられたら、疲れ切ったカラダや心を回復させてくれるでしょう。
普段は滅多に食べることができない野外炊具を使ったカレーは、今後もイベントで見かけたらぜひ味わっていただきたいものです。それも作るところから見ると、なおいっそう美味しく感じるでしょう。