子どものこんな行動には、こんな対応をするべきという、いわゆる「マニュアル」が世の中には溢れています。パターンの違いに戸惑ったり、知っていても実際にはできなかったりすることも多く、悩むこともあるかもしれません。
でも、相手を思いやる気持ちがあれば、難しくないのかもしれないと思えるツイートが話題です。保育士・放課後児童支援員(学童の支援員)の投稿者「きしもとたかひろ(@1kani1dai)」さんに聞きました。
「4歳がつまずいてグズりだしたのを見て8歳が『痛くない?』と心配していたので励ますつもりでつい『大丈夫やんな』と声をかけたら、小さい声で優しく微笑みながら『大丈夫って聞いたら大丈夫って答えないといけないみたいやから…さ』と諭されて素直に反省した35歳であった。」
さらに、きしもとさんはツリーにつなげます。
「『できれば気遣ってやっておくれよ』という笑顔の『さ』だったので『ご…めん…そうやんな』と素直に反省したのでした。テクニックでのそれは意識していたけれど、優しさとして相手を思ってのそれが大切なんだよなって改めて。こんなんばっかりやけど気づけたのなら次から気をつけていけばいいよね。」
日々、多くの子どもと接するプロでありながら、子どもの声に耳を傾けて失敗を認めるきしもとさん。そう考えると、ほんの数人の子どもを育てる保護者が、日々に追われながら子どもの気持ちを思って声をかけることは簡単ではないと感じます。もしも8歳さんのように考えられたら、お互いにストレスを減らすことができるかもしれませんね。きしもとさんに、お話を聞きました。
──ツイートに「ハッとした」「気をつけよう」というコメントが集まって、6.1万を超えるいいねがつきました。きしもとさんは、このツイートでどんなことを伝えようと思われたのですか?
「大丈夫って聞かれたら大丈夫って答えてしまうから、痛いところは?と聞いた方がいい」というのは聞いたことがあったし実践していたものの、それをテクニックとしてではなく、自然とその子を思って出てきたことに驚いたんです。
つい「正しい関わり方」というような考え方をしてしまうけれど、関わり方の正解というよりは、本来は相手への思いやりからくるものなんだなと。その気づきを共有しようと思ってツイートしました。
──たしかに、その子を思えば、痛いところがあるか心配するところから始まるように思います。よく子どもの気持ちに寄り添うとか言いますけど、そう言ってしまうとまたテクニックみたいに聞こえる。難しいですね。でも、8歳さんは自然に思いやることができるのですね。普段からそういう気遣いができる子なのでしょうか?
僕の4歳さんへの声かけについてよく注意されることはあります。「もうちょっと優しく言ってあげて」とか、8歳さんを褒めると「4歳さんも褒めてあげて」とか、大切な存在のようで、その子が悲しくならないように思いやっている姿はよく見ます。
──8歳さんに言われて反省したあとはどうされたのですか?
8歳さんには「ほんまやな、ごめん」と返答し、4歳さんに「ごめんな、痛いところないか?」と8歳さんの聞き方を真似して声をかけました。とくに変わりはなかったですが、僕の中での反省は大きかったです。
──これまでも子どもから言われたことに、ハッとするような経験が?
子どもの言葉でハッとする経験はよくあります。子どもたちの言動で気づくこともあれば、自分がやったことで子どもが辛そうにするのを見た時に、よくないなあと反省したり。普段から大事にしたいなとか気をつけたいと思っていることがうまくできず、失敗したり気付かされたりしながら試行錯誤しているという感じです。
──これまでの気づきで対応を変えたら、大きな影響があったというようなものはありますか?
大きな影響というのはほとんどないです。気づいて気をつけようと思っていてもできなかったり、わかってるのに失敗しちゃったりすることの方が多いんですよね。でも、その積み重ねでお互いのつらい思いとかしんどい時間とかが少しずつでも減ればいいなと思うし、それができているんじゃないかと実感することは多くあります。
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「お互いにしんどくなく過ごせたら…」と、子どもへの思いやりを積み重ねていくうちに見えてきた大切なことを、きしもとさんはイラストたっぷりのエッセイにしています。9月15日には単行本「大人になってもできないことだらけです」が発売されました。
■きしもとたかひろさんプロフィール
保育士・放課後児童支援員(学童の支援員)として子どもと関わる中で、感じたり気づいたことを文章にしたりイラストにしたりして共有しています。子どもも大人もしんどくない子育てや保育を実現するための一助になれたら幸いです。
■「大人になってもできないことだらけです」(単行本)(9月15日発売)[Amazon] https://www.amazon.co.jp/dp/4046816635/
※きしもとたかひろさんより
子育てや保育で「うまくいった」と思えることってほとんどなくて、日々後悔と葛藤の繰り返しで、そんな中でも今回のツイートのような小さなできごとで「そうそう、自分はこんな存在でありたいんだよね」って立ち返って少し前向きになれるんですよね。そんな風に、失敗して悩んだり葛藤したりしながらも、そのたびに大事にしたいことを確認して書き残してきたエッセイです。わかっていてもうまくいかない、こんな自分じゃダメなんじゃないか、と日々悩みながら子どもたちと向き合っている方の手に届いて読んでもらえたら嬉しく思います。
■「怒りたくて怒ってるわけちゃうのになぁ 子どもも大人もしんどくない子育て」(単行本)[Amazon](子どもとの関わりで気をつけたいことを具体的な場面に合わせた漫画に) https://www.amazon.co.jp/dp/4046808527/