兵庫県尼崎市立花にある布団店「トミヤ」さんには9歳になる看板猫のRUKAちゃんがいます。初めて買い物に来たお客さんは「あれ、こんなところに猫がいる」とびっくりするそうです。店内でくつろいでいるのが専らで愛想をふりまくというわけではないけれど、存在感は大。RUKAちゃん目当てのお客さんも多いそうです。
先代看板犬を亡くしたことで最初は躊躇していたけれど
9年前、店主の河越さんの娘さんがペットショップでひとめぼれしてしまったのがノルウェージャンフォレストキャットの子猫。ただ、河越さんは、それほど乗り気ではありませんでした。
「実は、もう20年以上前のことですが、飼っていた犬を亡くし、こんな悲しみはもう二度と経験したくないと思っていたんです」
その犬はトミーと名付けられ、看板犬として愛されていましたが、その出会いが衝撃的だったのです。
「僕がまだ高校生の時、母親が店番をしていたら商品の上に子犬が置かれていたんです」
見れば、まだへその緒もついている子犬。放っておけないので、河越家で引き取ることになりました。
「トミーは店でちょこんと座っていたり、車が好きで一緒に配達に行ったりしていました」
トミーは18歳で亡くなり、河越さんの悲しみが大きくて二度と生き物は飼いたくないという気持ちになっていたのです。それが猫を飼うことを躊躇した理由です。
しかし、娘さんの熱意と可愛さに負けて迎えることになったRUKAちゃん。娘さんの部屋からは出さず、世話をするという約束でしたが、ある日、RUKAちゃんがいつの間にか、2階の家族の居間に。なんと、体が小さかったのでゲージの隙間からすり抜けたのでした。
「それからは、ドアも自分で開けて、たびたび下に降りてくるようになり、最後はお店にまで出てくるようになりました」
お店でくつろぐRUKAちゃんは、たちまちお客さんたちのアイドルに。中にはおもちゃ持参の人や写真を撮ったり、絵を描いたりする人もいるそうです。
家出騒動にひやりとしたことも
そんなRUKAちゃんは8年前、家出騒動を起こしたことがありました。夜遅く帰宅した河越さんがドアを開けた拍子に飛び出して外へ。必死で探しても見つからず、それから毎日のように探し、チラシを作り、いよいよ貼ろうとした朝、ひょっこり帰宅しました。
「少し痩せていましたが、病院で診てもらっても異常なしだったのでほっとしました」
今でも、たまに商品の隙間に隠れていると、慌てて名前を呼んで探しますが、それからは家出することはないそうです。
「猫を飼ったことはなかったけれど、気まぐれで、のんびりした姿に癒されます。お客さんにも気分で甘えたりして、会話のきっかけにもなり、たまにいい仕事してくれますね」
そんなRUKAちゃんもそろそろシニア世代。いつまでも元気で長生きしてくれることを一番に願う河越さんでした。