「こないだ堺伝匠館行った時に飾られてた包丁のシャンデリアが狂気的で良かった。」とkai.jpさん(@kaijp_1)が投稿した写真が話題です。きらびやかな包丁が300本、天井から連なり…「落ちてきたらまず助からない」「これラストで落ちてきてラスボス倒す流れですね」など、多くのコメントが寄せられています。実物の魅力を聞き、さらに日本が誇る大阪・堺の包丁に迫るべく同館を現地取材しました。
リプ欄には、「少女革命ウテナの百万本の剣を思い出しました」「ダモクレスよりやばいやつ!」「映画『未知との遭遇』に登場する、マザーシップを彷彿とさせる」「ザ・ワールド!!時は動き出す!」「小学生『らんねえちゃん、ここ綺麗だね〜』」「金田一少年とかの殺人トリックで使われそう」「影牢とかに出てないキミ?って感じ」と、アニメなどさまざまな作品の世界観に例える人が続出―。
それと同時に想像力をかきたてられるのか、「巨大UFOの下から出てきてすごいビーム出しそう」「異能力バトルで刃物を出現させる系の能力者の序盤の必殺技を再現したかのような光景に見えて鳥肌です」「化け物に追われた時、最後、運良くあった包丁シャンデリアの根本撃って怪物に致命傷与える決定打になりそう」「昔の刑事ドラマとかだとこの辺りでドンパチやって悪役が落ちてきたこれに巻き込まれる奴(伝われ)」と、このシャンデリアの出番を想像したドラマが繰り広げられました。
また「大地震の時、真下にいたら生きた心地しないww」「此処の下に立つだけでおしっこちびりそう」「真下に寝っ転がりたい こえええええええけど」など、恐怖を感じる人も。そこで、「わりかし低い位置で飾られてるのと、分厚いガラス板で囲われていたので、安全面もしっかり考慮されていたかと」と追記し、同館の魅力を説明していたkai.jpさんにお話を聞きました。
徐々に包丁の形になる、凝ったデザインに感動
――こちらに来館したきっかけは?
現在「さかい利晶の杜」という施設で、人気ゲームシリーズ『モンスターハンター』と堺包丁とのコラボイベントが開催されています(2022年9月4日まで)。堺市全体の施設を巡るフォトラリー企画もあり、そのひとつに「堺伝匠館」があったので初めて訪問させていただきました。
――包丁シャンデリアを見た第一印象や感じた事は?
包丁の展示室に入るや否や、とにかく「わっしょ〜」と言葉にならない声が出ました(笑)。最初はあまりの迫力に興味を惹かれたのですが、よく見ると上段から下段になるにつれて、原料の鉄塊から徐々に包丁の形になるという凝ったデザインに「なるほど!」と感動しました。安全対策がされていたので、怖いと言う印象はあまりありませんでした。
――投稿後の反響についてご感想は?
ネタとして楽しんでくれている人が多く、「映画やゲームのラストでこれが落ちてきてラスボスを倒しそう」「ジョジョ3部のザ・ワールド」など皆さんの内なる厨二心がくすぐられてるな〜とニヤニヤさせていただきました(笑)。
――同館を見学したことで、感じた事があれば教えてください。
マイ包丁を作れるワークショップなども開催されているので、夏休み中親子で楽しめるのではないかと!堺市に引っ越してきたのは去年の秋頃で、漠然と「古墳」「包丁」「千利休」の街くらいにしか思っていませんでしたが「堺伝匠館」や点在している資料館の展示を拝見し、いかにして「産業の街・堺市」になったのかを知ることができたと思います。歴史や文化、技術の伝承を重んじるすばらしい街だと思います。
約300本の包丁で「今までに見た事のないもの」を
そこで、早速kai.jpさんを魅了した「堺伝匠館」(堺市堺区)へ。同館は「堺伝統産業会館」を今年3月に全館リニューアルし、6月に新たな愛称が決定した施設。入館は無料で、堺打刃物をはじめ、線香、注染(ちゅうせん・染め物)、昆布などの展示・体験・販売を通して伝統あるものづくりの魅力を発信しています。
2階の「堺刃物ミュージアム」に入ると、目に飛び込んでくるのが、この包丁のシャンデリア。上部からの光に反射する刃が美しく、個人的には美術品を鑑賞している気分に―。「堺伝匠館」の担当者に詳細を聞きました。
――こちらを作られたきっかけは?
このミュージアムだけ昨年の秋に先行して開館したのですが、ひとつシンボリックなものを作りたいと思いました。入った途端すぐ目につき、インパクトのあるものを!と。そして「今までに見た事のないもの」を目指しました。
――なるほど!たくさんの包丁が使われていますね。
地元の包丁職人が手がけた約300本が使われていますよ。サイズは直径100cm、高さは125cmほどになります。
――見どころを教えてください。
正式名は「火刃七(HIBANA)」で、堺打刃物の特徴である鉄を打った際に放たれる火花に基づいています。そして、上から下に向かって、「火」を放つところから始まる「刃」物づくりを「七」段階で紹介し、工程ごとの素材や製作過程を表現しています。
――いちばん下の包丁が完成型なのですね。見ながら学べる展示ですね!実現するまでに、困難はありましたか?
展示スペースには入れないように安全面も考慮しましたので、特に反対意見なども出ず完成することができました。ただの包丁というよりひとつの作品として、とらえていただけましたら幸いです。
――今回のSNSでの反響についてはいかがですか?
見る方によってさまざまな表現で、世界観を広げていたのが興味深かったです!コロナ禍の影響などで観光のお客さまは以前ほど多くなく、リニューアルしてからもまだそれほど認知度が高くないので、SNSで話題にしてくださって大変有り難いです。
――他にもユニークな包丁など多数展示されていますね。堺ならではの魅力とは?
堺の包丁は機械生産の「抜き物」とは異なる「打刃物」です。軟鉄と鋼を1000℃の炉で熱して金槌やハンマーで叩き、打ち延ばしながらながら形を整える鍛造(たんぞう)技法で、叩くことで強度が高まります。そのため極上の切れ味を生み出すと言われています。
また「鍛冶」「研ぎ」「柄付け」と各専門の職人が分業制で仕上げるのも特徴です。コロナ禍前は、全国はもちろん海外からも包丁を買い求めるプロの料理人が多数来られていました。
――最後に、来館される方へメッセージをお願いします。
包丁などは生活道具のひとつですので、展示をきっかけに「すごい!使ってみたい」と思ってくだされば嬉しいですね。そして、1階には堺の名品がそろうショップもありますので、実際に使うことで伝統産業が身近なものとして根づいてくれたら幸いです。
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日本を代表する刃物生産地と知られる堺。展示室では古墳築造のために、鉄器づくりの技術集団が集められたという説や、港町として鉄砲、煙草(葉を刻む包丁が必要)の伝来を受け、いち早く金属加工を極めていった歴史が分かりやすく解説されています。
また1階のショップには、約1000本もの堺包丁がズラリ。切る食材や左利き用など用途に合わせてセレクトでき、1万円以下の一般向けに加え、奥には料理人向けの高級包丁も(40万円を超えるものも!)。「堺伝匠館」へのアクセスは阪堺電車の阪堺線「妙国寺前駅」より南西へ徒歩で約3分。
「堺伝匠館」
大阪府堺市堺区材木町西1-1-30
10:00~17:00 ※第3火曜休(祝日の場合は翌日休)
公式サイト https://www.sakaidensan.jp/
「モンスターハンター×堺 コラボイベント」https://www.sakai-rishonomori.com/event/mh_sakai2022/