「締切」が怖くなくなる!?文芸翻訳者が紹介した「締切守」のご利益が話題に 「欲しい」の声、相次ぐ

山本 明 山本 明

 文芸翻訳者の越前敏弥さんが、「締切守(しめきりまもり)」の画像を「全国の著者・訳者の皆さん、ぜひおひとつどうぞ!」という文言とともにTwitterに投稿し、大きな反響を呼びました。出版関係者ならずともこの御守を求める人は多かったらしく、投稿には学生、社会人を問わず「欲しい」という声が届いています。いやはや…人の世における、「締切」というものの絶対的な威力と影響力を思い知らされますね!

 話題になったツイートによると、「締切守」は、エンタテインメント企業・KADOKAWAによる日本最大級のポップカルチャー発信拠点「ところざわサクラタウン」(埼玉県)内にある「武蔵野坐令和神社(むさしのにますうるわしきやまとのみやしろ)」、通称「武蔵野令和神社(むさしのれいわじんじゃ)」にて販売されているとのこと。

 ツイートした「越前敏弥 Toshiya Echizen」(@t_echizen)さんは名優トム・ハンクスが主演を演じた映画『ダ・ヴィンチ・コード』などの原作である、ダン・ブラウン著「ロバート・ラングドン教授シリーズ」(KADOKAWA)の翻訳を手がけるほか、古典ミステリーの大家エラリー・クイーンの『Xの悲劇』(KADOKAWA)などの新訳で知られる翻訳者です。

 著名な翻訳者である越前さんは、はたして「締切守」を購入したのでしょうか?また御利益もあったのかをお聞きしました。

切実な思いから「締切守」を購入。その後、一度も締切を破っていない

――「締切守」を最初に見た時、どう思われましたか?

 苦笑しました。と同時に、すてきなネーミングだとも思いました。この日は、KADOKAWAの人に案内してもらって、ところざわサクラタウンを1日まわることになっていて、その最初に神社に寄ったので、ちょっと宣伝のつもりでツイートしたんですが、こんな大騒ぎになるとは思いませんでした。御守の持つ潜在的なパワーが炸裂したんでしょう。

――御守は購入したのですか?

 もちろん、決められたお金をお納めして、ひとつ授かりましたよ。水色の「白銀」です。ほかの色も含めて『エヴァンゲリオン』を 髣髴(ほうふつ)させる 色と名前ですが、決めたのは単にさわやかな色で、心の清らかな人間になれそうだったからです。

――以前のインタビューで拝読しましたが、翻訳者になられた当時は締切まで2、3週間あるお仕事でも3日で仕上げられていたそうですね。今回、御守を授かる際はどんな願掛けをしましたか?

 自分の著書『翻訳百景』で、「締切は守るものではなく、攻めるものだ」なんてかっこいいことを書いていますが、実際には自分もしじゅう尻に火がついているので、切実な思いからひとついただきました。

――「締切は守るものではなく、攻めるものだ」…名言です!投稿が拡散しました。

 これまで、何千リツイートもされた経験は何度かありますが、そういう場合、かならず一定数のリプライやコメントが的はずれだったり攻撃的だったり、ちょっといやな思いもしたものです。ところが、今回はそういうのが皆無と言ってよく、みんなで楽しんでいる感じがしました。

――「ファンレターに同封しよう」と推し作家への贈呈の提案など、楽しいコメントが届いていましたね。

 いちばん多かったのが「自分もほしい!」で、つぎが「◯◯さんに送りつけたい!」とか、「これは締切を守らせる側(編集者など)が持ったほうがいいのでは?」とか。自分が文芸翻訳者なので「全国の著者・訳者のみなさん」と書きましたが、すべての人にとって、身につまされる問題なんでしょうね。学生と思われる人たちもずいぶんリプライをくださいました。「(パズルゲームの)ぷよぷよに似ている」というのもずいぶんありました。 

――御守はどこに置いていますか?また御利益は実感されていますか?

 とてもとても大切なものなので、効力を最大限に発揮してもらうために、自分の著訳書を並べた本棚の前に置いてあります。「重版招き猫」の隣です。

 その後、一度も締切を破っていないので、御利益はあると思います。こういうものをいただいたことが(特に編集者たちに)知れ渡ってしまったので、締切を守れるよう、より慎重に心がけていると言ったほうがいいかもしれません。それも御利益だと言えますね。

「武蔵野坐令和神社」に「締切守」の御利益について、聞きました

 さらに、御守を授与している「武蔵野坐令和神社」広報の櫻井なづきさんに、話題になった「締切守」についてお聞きしました。

――「武蔵野坐令和神社」で祀(まつ)っておられる神様について教えてください。

 武蔵野坐令和神社ではお祀りしております二柱(※)の御祭神(天照大御神・素戔嗚命)を総称して「言霊大神」と申します(※柱は神様の数え方)。「言霊大神」とは、文芸・芸術・芸能といったコンテンツの表現に顕れる神の御稜威(神の威光)のことです。そのため詩歌や小説、音楽や絵画、映画や舞台、アニメ・コミック・ゲームなどの多種多様なコンテンツの発展や、芸道上達の御利益があるとされます。

――「言霊大神」と「締切守」との結びつきや御利益についても教えいただけますか。

 コンテンツの発展や芸道上達の第一歩として、締切を守る大切さと必要性は大いにあるかと存じます。当社で頒布しております「締切守」には定められた締切を守り、より良い芸道もしくは仕事などを成し遂げられるようご祈念した御守です。

――「蘇芳」「綾波」「白銀」と、色が3つありますが、意味があるのでしょうか?

 締切守の色の名前はそれぞれ日本の言葉にあやかって名付けたり、伝統色の名前を用いました。蘇芳は黒みを帯びた赤色の染料となる植物の名前より、綾波は「波の綾」という日本語から転じて、白銀は銀世界のような雪の色味から着想を得て。色による御利益の違いはございませんので、お気に召された御守をお受けいただければ幸いです。

――この御守を求める人は、どのような心持ちで持てばよいのでしょうか?また出版関係者ならずとも、レポートの締切を抱える学生さんやさまざまな納期を抱える社会人の方々にも、この御守の御利益はいただけるのでしょうか。

 御守とは神様の依代であり、神様の分身です。肌身離さず持ち歩き、大切に扱っていただければ幸いです。持ち歩くことが難しければ、神棚もしくは目線よりも高い清潔な場所にお祀りください。またKADOKAWAの邸内社ゆえに締切守は出版関係者のための御守と思われる方もいらっしゃいますが、多種多様な締切に悩まれている皆さまにお持ちいただける御守です。

◇◇

 「締切」とは、出版関係者以外でも有限の時間を生きる我々全てにとって、各々果たすべきタスクを遂行する際には必ず存在するもの。その難関をぜひ、「締切は守るものではなく、攻めるものだ」という強い気持ちと「締切守」のご加護と共に乗り越えていきたいですね。

■「締切守(蘇芳 綾波 白銀)」 各800円(税込)

【越前敏弥さん情報】
■note 越前敏弥 Toshiya Echizen(オフィス翻訳百景)
https://note.com/t_echizen
■Twitter 越前敏弥 Toshiya Echizen
https://twitter.com/t_echizen

【武蔵野坐令和神社】
■公式サイト
https://musashinoreiwa.jp/

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