「鎌倉殿の13人」で非業の死 全成殿を偲ぶ可憐な花…ちょっと待った!それ毒持ってるよ!

竹内 章 竹内 章

NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で、新納慎也さん演じる阿野全成の壮絶な最期が描かれた8月7日放送の第30回「全成の確率」。貴重な癒しキャラのあまりに悲劇的な退場に視聴者が打ちひしがれる中、ドラマに続く関連番組「『鎌倉殿の13人』大河紀行」のワンシーンを見逃さなかったTwitterユーザーがいました。「頼家に謀反を疑われ鎌倉を追われた全成。」のテロップとともに映された可憐な花に、「その花ちょっと待てーそれ、ナガミヒナゲシ!毒持ってる」という全力ツッコミのツイートが注目されています。

劇中、全成は死の直前、ひたすら呪文を唱え、激しい雨風と雷を起こしますが、市原隼人さん演じる八田知家によって命を落とします。「吾妻鏡」では下野国、現在の栃木県で討ち取られたと記され、「紀行」では供養のための五輪塔がある栃木県益子町と所領があった静岡県沼津市が紹介されました。冒頭シーンは、全成の死を偲ぶかのようなナガミヒナゲシ。赤みを帯びた花は、死の直前流れる血を見て「実衣」と妻の名を叫んだ全成を思わせました。

このシーンについて、イラストレーターのウラケン・ボルボックス(@ulaken)さんが「ちょっと待てー!全成を忍ぶみたいな風に出てきたその花ちょっと待てー!それ、ナガミヒナゲシ‼️、2000年以降全国に拡散した繁殖力がヤバすぎる外来植物!しかも毒持ってる!気軽につんだり、種蒔いちゃダメだよ‼️」と的確な解説を自身のアカウントに投稿。「あれそんなヤバい外来草だったんか」「こっち方面は時代考証してなかったってことね」「「うちのお庭にもほしいわ」ってなっちゃいそうな可憐さだからこそ、こういう情報は大切だ」などのコメントが寄せられています。

ナガミヒナゲシは、ヨーロッパ地中海沿岸原産のケシ科の一年草。高さは20~60センチメートルまで成長し、4月頃から6月頃にオレンジ色の花を咲かせます。道端や空き地などの日当たりのよい場所でよく見られ、きれいな花を咲かせる一方で、繁殖力が強く、雑草化のリスクがあります。国の特定外来生物には指定されていませんが、他の植物の生育を妨げる成分を含んだ物質を根から出すため、生態系に影響を及ぼすことが心配されています。さらに、アルカロイド性の有害物質が含まれており、素手で茎を触ったり折ったりすると、手がかぶれるおそれがあります。

投稿者に聞いた

あんな可憐な花を咲かせるのに、それほど厄介な存在とは…。ウラケン・ボルボックスさんに聞きました。

ーナガミヒナゲシが登場した時は

「ドラマの余韻に浸っていたところに、本のために勉強したばかりの有毒外来植物が出てきたので、ギョッとしました。このタイミングでなぜその花?とは思いましたが、劇中で全成が実衣に「赤がよく似合う」と言うセリフがあったので、恐らく連想させる要素として花が赤いナガミヒナゲシの映像が使われたのだと思います」

ーナガミヒナゲシについて

「引用リツイートでたくさんの方がツイートされていましたが、よく見かけるけど、そんな花だとは知らなかったというのがほとんどです。実際、2000年以降に全国至る場所で増え続け問題になっている割に、見た目が可愛いのでイマイチその問題が認知されていない植物です」

身近なところにいる毒を持つ動植物

ウラケン・ボルボックスさんは、120種以上の有毒動植物と小ネタをまとめた著書『すごい毒の生きもの図鑑 わけあって、毒ありです。』のイラストを担当し、編集作業の中でナガミヒナゲシについて学んだそうです。同書はさまざまな種類の毛虫も紹介していますが、チャドクガに刺された自身の経験から追加したといいます。

「いきもの図鑑といいつつ、三分の一ほどは植物が占めています。ニラとスイセンを間違えて食中毒を起こしたり、グロリオサの根をヤマイモだと思って食べて死亡事故を起こしたり、毒に関する事故は毎年ニュースになっています。実際私もこの本の作業中、山に行った際、有毒昆虫のヒメツチハンミョウをうっかりつかみそうになり、危うく毒液を浴びるところでした。身近なところに毒を持つ動植物はゴロゴロしていますが、知識を持つことで被害を食い止めることができます」

また、著書『侵略!外来いきもの図鑑 もてあそばれた者たちの逆襲』では、なぜ侵略的外来種が問題なのか、なぜ駆除する必要があるのかを分かりやすく解説。外来種問題を知る入門編の一冊になっています。

「侵略的外来種の多くは、過去に人間が持ち込んだものが、逃げたり、捨てられたり、放流されたものが増殖し問題になっているものです。結果、在来種を脅かし、年間億単位の農業被害を引き起こしながら、同じような過ちを何度も繰り返しています。飼っている生き物を外に放すことの問題を多くの人に知ってほしいです」

『侵略!外来いきもの図鑑 もてあそばれた者たちの逆襲』→https://publishing.parco.jp/books/detail/?id=128
『すごい毒の生きもの図鑑 わけあって、毒ありです。』→https://www.chuko.co.jp/special/sugoidokunoikimono/

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