元の飼い主から団地の敷地中に放し飼いにされ、お水もご飯ももらえない日が続いていたミックス犬・ナッツ(推定13歳・メス)。暗い夜も、雨の日も、外に放され、ごはんもお水も飲めなかったナッツは、泥水も平気で飲んでしまう、虫も球根もプラスチックも、口に入れられるものはなんでも食べてしまう野犬のような状態になっていました。
ある日のこと、ナッツは団地の2階の窓から外のアスファルトに投げつけられました。その様子を見ていた住人の通報で、警察にビニールでくるまれ保護され、翌日には腰の骨折により動物病院に入院。これまで、首輪もリードもしたことがなく、もちろんケージにも入ったことがなかったナッツは、相当暴れたのか動物病院の先生から「飼うことは難しいでしょう」と言われてしまいます。
新しい引き取り手がいなければ収容施設に送られる予定だった
入院した際の動物病院の先生の判断から新しい引き取り手が見つからなければ、収容施設に送られる予定だったナッツ。
しかし、元飼い主の隣に住む、のちに新しい飼い主になる家の娘さん夫婦がナッツを陰でかわいがっていた経緯があり、「新しい飼い主が見つかるまで、うちで預かる」という話に落ち着きます。ただし、新しい飼い主さんの心の中では直感的に、「ナッツはこのままうちの子になるワンコだ」と思ったそうです。
相当怖い思いをし、動物病院でも大暴れしたナッツは、新しい飼い主さんの娘さんに抱っこされると、安心したように目をクリクリさせます。このときのナッツの顔は今でも忘れられないと飼い主さんは言います。
ときに野犬のような行動をするナッツを、その都度愛情をもって接する
ただし、もともとは人懐っこいナッツも、どこか野生化しているようなところがあり、飼い始めた当初は、病院のケージからなんとかして出ようとしたのか、ガリガリし過ぎた様子で鼻が剥げてしまっていました。
また、新しい飼い主さんとお散歩に出掛けても、コンビニ近くで誰かが捨てた食べカス、食べ終わった後の焼き鳥の串、夏場にセミの死骸などをパクパク食べてしまったりすることもありました。
こういったときも新しい飼い主さんは、根気強くナッツに接し、「こういうのを食べちゃダメ。出しなさい」と奪い取り、その際に噛まれてしまったこともありました。今もお散歩中にクンクンし始めたり、何か獲物を見つけたような急いだ足取りをとった際には特に注意しています。
また、推定5歳になる頃には、オネショをよくするようになり、病院で診てもらうと、腎臓病と判明。一緒に寝ることを諦め、療養食に切り替えました。水をあまり飲みたがらないナッツに水を飲ませるようにし、たくさんあげていた犬用のおやつもいったんは禁止に。そのおかげで今は腎臓病も良くなり元気になりました。
ナッツの健康を祈りながら、これから先も一緒に過ごせることを幸せに思う
やがて、新しい飼い主さんとナッツは団地を離れ、娘さん夫婦が暮らす滋賀県(飼い主さんいわく『びワンコ県』)に移住。この頃からナッツとの過ごし方が変わり、ワンコカートデビューをしたり、ナッツと一緒にフリーマーケットを出店したり、それまで以上にナッツと過ごす時間が増えていきました。新しい飼い主さんは「こういった生活がずっと続くといいな」と語りますが、最近またも事件が……。
あるとき急にナッツの歩き方がおかしくなりました。冒頭の通り、ナッツは2階から放り投げられたせいで、腰の骨折を経験しています。この影響で「いつか歩き辛くなる日が来るのではないか」と新しい飼い主さんは心配していましたが、残念なことに的中。ナッツの前足に関節痛があることが判明しました。この他にも、甲状腺機能低下症、気管支炎などもあります。推定13歳のナッツ、年齢的に言えばすっかりシニア犬なので、体の不調が多く出てきています。
それでも新しい飼い主さんは、物言わぬナッツの様子をいち早く察知し、その都度病院に連れていくなど、愛情をもって対応をしています。新しい飼い主さんは、「コロナ禍以降、住まいのある滋賀県の名所をナッツと一緒に出かけられないのが少々残念」と言いながらも、「これから先の生活にもナッツがいることを幸せに思う」と未来への思いも語ってくれました。きっとナッツも新しい飼い主さんとの生活を嬉しく、楽しんでいることと思います。
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