ヘルパー・プロドラマー・カスタマーサクセス 「3つの顔」を持つパラレルワーカーになるまで

20代の働き方研究所/Re就活 20代の働き方研究所/Re就活

近年、「副業」という働き方が様々な職種・年代で注目されていますが、「本業」の傍らに取り組む「副業」ではなく、複数の本業に“並行”して取り組む「パラレルワーク(複業)」という働き方にも注目が集まっていることをご存じでしょうか。今回お話を伺った黒田ひかりさんは「ヘルパー」「プロドラマー」「カスタマーサクセス」と3つの本業を持つパラレルワーカーです。まだ副業・パラレルワークといった言葉が無かったころから、無意識のうちに複数の仕事を並行するようになった黒田さんのお話から、パラレルワークの魅力を探ります。

海外でもライブを行うプロドラマー

―プロドラマーとして楽曲もリリースされている黒田さんですが、ドラムという楽器に触れたきっかけはどのようなものだったのでしょうか

小学6年生の時に音楽の授業でドラムを演奏する機会があり、「カッコいい!」と思ったことがきっかけでした。その後、17歳にライブハウスで演奏をするようになってから今日に至るまで、ずっと音楽活動を続けています。

―ドラムを演奏することが仕事になったタイミングはいつからでしょうか

28歳の時にオファーをいただき、報酬をいただきながらバンド活動を行うようになりました。様々なミュージシャンのサポートを経験し、あるバンドでは、国内・海外のライブハウスやバーでライブを行うなど、プロドラマーとして非常に多くの仕事をさせていただきました。

新型コロナウイルスの影響で海外でのライブができなくなり、そのバンドでの活動は休止しているため、現在はソロ活動を積極的に行っています。2020年には自主制作でEP「Wine Circus」をリリースしましたし、休日はスタジオで練習をしたり、ライブハウスで自分の曲を演奏したりしています。

―小学生のときから音楽への情熱を持ち続けていらっしゃるようですが、ご自身で振り返ってみていかがでしょうか

振り返ってみると、変わった部分と、変わっていない部分、どちらもあると思います。10代の頃は「とにかく楽しい」「ライブできることが嬉しい」という 想いが強くありましたし、20代の頃は所属しているバンドを成長させたいという想いや、ドラマーとしてのキャリアを考えることもありました。

現在は自由に好きなことをやりたい気持ちが大きくあり、オリジナル作品を作りたくてソロEPを作ったり、叩きながら歌ったりと、新しい挑戦を自由に行っています。逆に「もっと上手くなりたい」「音楽に対して良いドラムを叩きたい」という純粋な想いは10代の頃と変わりありませんね。

 働くなら人の役に立つ仕事がしたい

―10代から現在に至るまで音楽活動を続けこられたわけですが、そんな中でヘルパーとしてのキャリアも歩むようになったのにはどのようなきっかけがあったのでしょうか

10代の頃は音楽スタジオで日々ドラムの練習をしながら、音楽活動をするための資金として清掃やコンビニなど、様々なアルバイトをして生活をしていました。ヘルパーの仕事を始めたきっかけは音楽業界の知り合いで、介護職をされている方と話をしたことです。

ヘルパーの仕事は、音楽活動をずっと続けてきた当時の私にとっては未知なことだらけで、だからこそとても興味を持ったことを覚えています。また、訪問介護の働き方であれば、曜日や時間も完全に固定で、音楽活動の時間も確保できる点もマッチしていましたし、なによりせっかく働くなら「人の役に立つ仕事がしたい」と考え、ヘルパーとして働くようになりました。

―そこからはヘルパーのお仕事も、現在に至るまで長く続けてこられたわけですね

21歳で入職して以来、出勤日数こそ減りましたが、20年経った今も変わらずに同じ事業所で仕事をしています。重度障がいをお持ちの方向けの訪問介護を専門としているのですが、「目の前の人の役に立っている」というやりがいは今も変わりありません。無くてはならない仕事、やり続けたい仕事だと常日頃から感じています。

更なるチャレンジは、これまで以上に思い切りが必要だった

―そして、現在はクラウドケア(ヘルパーと利用者をマッチングするWebサービス)で「カスタマーサクセス」としてもお仕事をされていますよね

最初はクラウドケアにフリーランスのヘルパーとして、副業をする感覚で登録をしました。これまで障がい者の方向けの介護をしていたのですが、高齢者介護や、保険適用外の介護など、違う現場を知ってみたかったんです。空いた時間に仕事ができる点や、毎回違う方とお会いする点などにおいて、クラウドケアはとても魅力的でした。

―その後、クラウドケアよりカスタマーサクセスとしてオファーを受けた時の気持ちを教えてください

登録の際に面談を行い、何度かヘルパーとしてお仕事をさせていただく中でオファーをいただきました。オファーを受けるまで「カスタマーサクセス」という職種があることも知りませんでしたし、考えてもみなかった選択肢だったので、とても驚きました。最終的には「知らないことだから挑戦してみたい」という、介護業界に足を踏み入れたときと同じような理由で入社を決めました。

ただ、ヘルパーとしての介護業界経験はありましたが、ずっと音楽と介護の“現場”で仕事をしてきたので、オフィスワークというものが初めてで、これまでとは比べ物にならないくらいの思い切りでしたね。「デニムで出社していいんですか?」なんておそるおそる質問をしたのを覚えています(笑)。

―実際にカスタマーサクセスという仕事をされてみていかがでしたか

年齢に関係なく、様々な経験をしてきたヘルパーさんたちと出会うことができるのが、とても面白いと感じています。それが常に新しい気づきになっていて、自分のヘルパーとしての仕事にも活かすことができています。

パラレルワーカーとして働く中で感じること

―現在の「カスタマーサクセス」「ヘルパー」「ドラマー」3つのスケジュールをお伺いできますか

月曜から木曜まではクラウドケアにてカスタマーサクセスに従事しており、金曜と土曜は以前と同じ職場でヘルパーを、日曜は音楽活動に充てて練習やライブを行っています。

―とてもハードなスケジュールですね。どれかを辞めてしまいたいと思うことはないのでしょうか

それぞれがやりたいことなので、辞めたいと思ったことはありません。今主軸となっているのはカスタマーサクセスの仕事ですが、障がい者向けのヘルパーも、介助させていただく方の生活に無くてはならない存在であるというやりがいを常に感じていますし、音楽活動は10代から変わらず楽しくて、今でもライブ活動を通してお客さんに楽しんでいただきたいという想いを持っています。

―パラレルワークによって得られるメリットは、どのようなものだと感じていらっしゃいますか

仕事には「楽しいこと」も「大変なこと」がありますが、それを感じるポイントは仕事によって様々です。それぞれの仕事でしかできない経験をすることで、視野が広くなることがメリットだと感じています。

大きな問題に直面した時でも、広い視野で見ればそこまで大きな問題ではないと思えるかもしれない。そうやってすぐに立ち直ることができたり、躓くことが少なくなりました。

―それぞれの仕事の経験や知識が活かせるだけでなく、視野が広がるというのは確かに大きなメリットになりそうです

視野が広くなると、人生そのものを楽しめる幅も広がっていくのではないかと考えています。だからこそ私は「これだ!」と感じたことには、思い切って挑戦をするようにしているんです。

興味があるものに対しては、時間を無理やりにでも作って、足を踏み入れてみることをオススメします。実際に携わっている人の話を聞いたり、一緒にやってみるといったコミュニケーションを積極的にとってみて下さい。

―チャレンジしてみても、長く続かないこともあるかと思います。黒田さんなりの継続の秘訣はありますか

モチベーションを維持するためには強い「好き」という気持ちが必要です。そして「好き」には様々な方向性があっていいと思っています。自分の場合はヘルパーなら「役に立ちたい」、ドラムなら「楽しい」、カスタマーサクセスなら「満足してもらいたい」、などそれぞれの理由があります。どんな時に楽しいと思えるのか、どうして好きなのかをしっかりと考えてみると良いかもしれません。

―黒田さんが今後もっとやってみたいことはありますか?

プライベートではワインが好きで、ワインエキスパートという資格も取得しています。最近では社内でワイン仲間ができたので、一緒に「ワイン部を立ち上げたいね」なんて話をしています。これは今のところ趣味ですが、突き詰めていく姿勢は他の仕事と変わりありません。「やりたい!」と思ったことにはこれからも積極的に取り組んでいきたいですね。

【株式会社クラウドケア カスタマーサクセス・黒田ひかりさん】
小学生の頃からドラムを始め、プロドラマーとして国内外でのライブ活動を経験。2020年には自主制作によるEP「Wine Circus」をリリースした。ヘルパーとしてのキャリアも20年以上積み、その経験から介護業界でカスタマーサクセスの仕事にも従事する「パラレルワーカー」。

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