お笑いコンビ「オズワルド」の伊藤俊介との交際を発表した蛙亭のイワクラ。本名は岩倉里美である。
「岩倉」と聞いて真っ先に思い出すのは、明治維新で活躍した政治家岩倉具視だろう。年配の方には、かつての500円札の肖像画としておなじみだった。
この岩倉家は公家で、名字は所領のあった山城国愛宕郡岩倉村(現在の京都市左京区)に由来する。江戸時代は中級の公家だったが、幕末維新に具視が活躍したことで明治時代には華族の中で最高位の公爵となっている。
ちなみに、俳優加山雄三の母は女優小桜葉子で岩倉家の分家の生まれ。従って加山雄三と岩倉具視とは遠縁にあたる。
さて、「岩倉」という名字は公家以外にも多い。というのも、愛知県に岩倉市があるなど、各地に「岩倉」という地名があり、そこに住んだ人が「岩倉」を名字にしたからだ。では、「岩倉」とはどういう意味なのだろうか。
「倉」のつく名字は意外と多く、名字ランキングのベスト1000には「小倉」「倉田」「朝倉」「大倉」「板倉」「高倉」「倉持」「石倉」「倉本」「米倉」「熊倉」と「倉」のつく名字が11個も入っている。
現在、「倉」というと大事なものをしまっておく倉庫を連想するが、これらの名字をみると、倉田、倉本、熊倉など、倉=倉庫とするとルーツの場所が理解しづらいものがある。
実は「くら」という言葉には別の意味がある。小学館「日本国語大辞典」をひくと、「くら」には「谷」という漢字をあて、古代では谷間の意味があったと記されている。また、「地名用語語源辞典」(東京堂出版)では切り立った岩壁などを「くら」と読んだとある。
そうすると、「倉田」は谷間の田、「倉本」は切り立った岩壁の下となり場所が想像しやすい。また「くま」も古くは奥まった場所や湾曲している場所を指すため、「熊倉」は熊のいる谷ではなく、谷の奥まった場所のことだろう。
とすると、「いわくら」とは岩のゴツゴツとした谷間のこととなる。「谷」と書いて「くら」と読むのは難読のため、いい意味の漢字をあてて「岩倉」としたものだ。
窪地の「窪」に対して「久しく保つ」という意味で「久保」と書くなど、地名や名字には同じ音のいい意味の漢字をあてることが多かった。「くら」に対しては「倉」や「蔵」という漢字をあてて、地名や名字とした。
現在、「岩倉」は沖縄以外に広く分布している。とくに静岡県、和歌山県、香川県、宮崎県に多く、イワクラも宮崎県出身である。