花王サニタリー研究所は、大阪大学大学院連合小児発達学研究科(谷池雅子教授、毛利育子准教授)の指導と協力のもと、紙おむつによる腹部へのしめつけが乳幼児の睡眠にどのような影響を与えるのかを検討、このほど研究成果を発表しました。その結果、しめつけ力が小さい紙おむつを着用すると、眠っている間の活動量が少なくなり、心拍数が低くなることが判明。さらに、中途覚醒回数(寝入ってから朝起きるまでの間に、6分以上覚醒していた回数)が少なくなる傾向にあり、起床時刻が早くなることもわかったそうです。同社によれば、「しめつけられないことにより睡眠の質が向上し、深い睡眠が増加した可能性があると考えられる」としています。
今回の研究成果は、第69回日本小児保健協会学術集会(2022年6月24〜26日・三重県/オンラインハイブリッド開催)にて発表されたといいます。
同社は、ベビー用紙おむつ開発のための基礎研究として、乳幼児をよく理解するためにさまざまな視点から研究に取り組んできたといい、そのうちのひとつとして、乳幼児の睡眠の研究を行なっているそうです。
乳幼児の睡眠評価は難しく、病気のない正常乳幼児の睡眠研究事例は多くないといいます。今回は乳幼児の自宅における普段通りの睡眠を生理測定する検討を行なったそうです。
紙おむつによる腹部へのしめつけが、乳幼児の睡眠へ与える影響を評価
昼夜の覚醒・睡眠のリズムが確立してきた生後6〜12カ月の乳幼児14人を対象とし、養育者に生理測定を依頼して自宅で試験を実施。対象者には、腹部へのしめつけ力が異なるパンツ型紙おむつを、それぞれ平日の夜に5日間着用してもらい、そのうち3日間の睡眠中の様子を赤外線カメラで動画撮影し、活動量計と心拍数計を装着してもらって測定。そのほか、睡眠日誌、事前・事後アンケートを養育者に記入してもらったといいます。
睡眠日誌または撮影データから、体調不良が確認された日は解析から除外し、最終的に11人を評価対象として、測定したデータおよび日誌を解析。睡眠中の活動量や心拍数、中途覚醒回数や起床時刻などを評価したといいます。
紙おむつのしめつけ力が小さいと、睡眠の質が向上
睡眠への影響を評価した結果、「しめつけ力が大きい紙おむつB」に比べて「しめつけ力が小さい紙おむつA」を着用したほうが、睡眠中の1時間あたりの活動量が少なくなり、入眠後3時間の最頻心拍数が低くなることもわかったといいます。子どもの睡眠中の活動量は睡眠が深いほど少なくなるため、深い睡眠が増加した可能性があるといいます。
また、入眠直後のノンレム睡眠(睡眠中にも関わらず活発な脳活動がある「レム睡眠」に対して、脳の活動が低下している“さらに深い睡眠”。脳と体を休息させる役割を持ち、子どものからだの発達に重要と言われている。通常、入眠直後に現れる)時と推定される期間の最頻心拍数が低いことは、交感神経系(自律神経のひとつで、活動している時や緊張・ストレスがある時などに働く神経)の活動が低いことを示し、睡眠の質が良い状態であると考えられるといいます。
さらに、「しめつけ力が小さい紙おむつA」を着用したほうが、寝かしつけにかかる時間と中途覚醒回数が減少する傾向にあり、起床時刻が早くなることが判明。しっかりとした睡眠をとることができたため、起床時間が早くなった可能性があると考えられるそうです。
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調査結果を踏まえて、大阪大学大学院連合小児発達学研究科・毛利育子准教授は、「睡眠は脳発達に非常に重要です。とりわけ乳児期には脳が最も発達するため、十分な長さの良質の睡眠が必要であることが近年明らかになってきました。よい睡眠のためには子どもをとりまく環境も重要です。体に直接触れるおむつの装着感は子どもにとって非常に重要な環境要因です」と説明。「よい睡眠がとれることは、今後の子どもの発達にも大きく影響する可能性があるため、養育者には体のサイズに合っていることはもとより、しめつけなどできるだけお子さんに負担がかからないおむつを選択していただきたいと思います」と述べています。