安倍元首相銃撃で世界にさらした“平和ボケ”の日本 「危機管理意識の欠如が、この国を自滅に追い込む」

治安 太郎 治安 太郎

安倍元首相の死去は歴史に残る1ページになりそうだ。日本では東京の増上寺や地元山口の事務所、事件現場など各地に大勢の人が弔問に訪れ、安倍元首相に最後の別れを惜しんだ。影響は国内だけでなく全世界に広がり、米国や欧州、アジアやアフリカなど多くの国々の指導者が安倍元首相に哀悼の意を表明した。昨今、日本と中国、ロシアの関係が悪化するなか、プーチン大統領は、「犯罪者によって日露の善隣関係の発展に貢献した傑出した政治家の命が奪われた」と死を惜しみ、習国家主席も「日中関係改善の努力を進め有益な貢献をした」と安倍元首相を評価した。

外交安全保障的にも、安倍元首相を失ったことは日本にとってマイナスだ。安倍元首相は当時問題だったトランプ大統領と良好な関係を築き、日米同盟、日米関係の安定に大きく貢献し、中東やアフリカ、東南アジアや中南米など各地を訪問する地球儀外交を展開し、日本のプレゼンスを国外に示してきた。また、日本では従来行使できなかった集団的自衛権の行使を可能とする政府解釈に変更するなど、流動的に変化する国際情勢に見合うように、日本の安全保障政策を発展させてきた。

世界情勢を戦略的に捉える安倍元首相が亡くなった一方、今回の事件からは世界の基準を把握せず、危機管理意識が欠如した警察の現状が浮き彫りとなった。元首相といえども安倍氏の知名度は抜群で、しかも大事な選挙中ともあれば、徹底した警備が敷かれるべきだった。しかし、安倍元首相の演説の際、SPや警察は前面ばかりを意識し、その背後に完全にスケスケだった。しかも、1発目の発砲から2発目までは数秒の沈黙があったはずなのに、誰も安倍元首相を防護するとか、安倍元首相を倒すとかせず、そのまま標的となり銃撃を受けることとなった。筆者自身、警察で経験があるわけではないが、今回の事件で海外の軍や情報機関の友人たちから聞くと、「明らかに警察の失態だ」、「日本の警察の危機管理意識はどうなっているのか」、「元国家指導者の警備では常識的に考えてあり得ない」などといった厳しい意見ばかりだった。

これは明らかに日本と海外の危機管理意識の差、もっといけば“平和ボケ”した日本の姿を国外に示すことになった。日本国内は世界各国と比較しても犯罪が少なく、治安がいい。しかし、その日本を取り巻く安全保障環境は世界的にも深刻だ。日本は米中対立の最前線にあり、北朝鮮は核ミサイル開発を続け、北方にロシアという現実的脅威を抱えており、そのギャップが日本の未来にとって最も恐ろしい。どこかの国が攻めてきたり、ミサイルが飛んできたとき、日本の自衛隊や警察は本当に機能するのだろうか。今回の事件は、我々日本が危機管理意識を改めて再考する機会となるべきだ。

日本の欠如した危機管理意識こそが日本を自滅に追い込むのだ。

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