木工の「工」と「藤」をつなげて「工藤」…宮中の修繕などを担当していた藤原氏がルーツ 俳優・工藤阿須加の名字に受け継がれる由来

森岡 浩 森岡 浩

プロ野球・福岡ソフトバンク元監督工藤公康の長男で、俳優の工藤阿須加。TBS日曜劇場「ルーズヴェルト・ゲーム」で社会人野球の投手を演じて話題を集めたが、実は野球経験はないという。最近では映画「ゴールデンカムイ」に出演した他、山梨県で農業をしていることでも知られる。

 

「工藤」という名字は、下に「藤」がついて「とう」と読んでいることでわかるように、藤原氏の子孫である。

平安時代の貴族達は、自らの姓を中国風に一字にして音読みした。清原氏は「清(せい)家」といい、清少納言は「清(せい)」という名乗りで、清原氏の一族であることがわかる。

同じように、菅原氏は「菅(かん)家」、大江氏は「江(ごう)家」といい、藤原氏は「藤(とう)家」と名乗っている。つまり、「藤(とう)」と名乗ることで藤原氏の一族であることを示していた。

平安時代に朝廷を席巻した藤原氏は一族の数が極めて多い。そのため、「藤原」だけではどの家か区別がつかず、「藤原」という姓とは別に家の名乗りを使用するようになった。

その際、位の高い公家の場合は、あえて「藤」を入れなくても藤原氏の一族であることは自明だったが、中・下級の官僚だと全く新しい名字を名乗ってしまうと藤原氏の一族であることが伝わらない。そこで、「藤(とう)」という言葉を入れた名字を名乗るようになる。

伊勢国の藤原氏は伊勢の「伊」と「藤」をつなげて「伊藤」、加賀の藤原氏は加賀の「加」と「藤」で「加藤」という具合だ。

宮中の修繕などを担当する役所である木工寮の官僚となった藤原氏の一族は、「木工寮」の「工」と「藤」をつなげて「工藤」と名乗った。これが「工藤」の始まりである。

のちに伊豆の地方官となり、嫡流は伊東を本拠として「伊東」氏と名乗るようになるが、一族には引き続き「工藤」のままの家も多かった。

現在は東北と九州東部に多く、とくに青森県に集中している。青森市・弘前市・五所川原市をはじめ、津軽の市町村では最多の名字となっているところが多く、県全体でも圧倒的な最多名字である。東北以外では大分県に多い。

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