場面緘黙症の娘に厳しい叱責、必要な支援も受けられず…娘が名門私立中学で受けた「スクールハラスメント」

長岡 杏果 長岡 杏果

スクールハラスメントとは学校内で発生する「いじめや嫌がらせ」のことをいいます。学校内で教師が立場を利用して子どもに対して嫌がらせをしたり、無視をしたり、時には暴力を振るうスクールハラスメントが後を絶ちません。洋子さん(東京都在住・50代)の娘さんは、名門私立として知られるA中学校に通っていましたが、複数の教師からスクールハラスメントを受けたといいます。

――A中学校に入学されていかがでしたか

伝統のある学校なので、規律正しく、一人ひとりに愛情をもって教育をしてくれると信じていました。しかし、入学してから分かったのですが生徒たちに不平等な扱いをする学校でした。数えきれないほどのハラスメントを教師たちから受け、娘は留年しました。娘が受けたハラスメントはおもに以下の6つです。

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▽場面緘黙症の娘に対して厳しい叱責

娘には場面緘黙症(ばめんかんもくしょう)と発達障害の傾向があり、先生に対してうまく自分の思いを伝えることが難しく、いつも先生から叱責されていました。もし、このまま意思表示ができないのであれば「退学にする」と担任と教頭に脅されました。留年時には、初対面の担任から「はっきりと意思表示できないので、あなたは非常に幼稚だと思います」と非難されました。

▽学校は特別支援教育の存在を黙っていた

娘の中学校では手助けが必要な生徒には「特別支援教育」を行なっていました。診断の有無にかかわらず支援と配慮を受けられるはずでしたが、学校は私たちにこの制度のことを黙っていました。娘は長期不登校になっても欠席扱いのままでした。

▽お友だちとのお付き合いを禁止

クラス替えの際にも、支援が必要な生徒には手厚い配慮がなされていました。しかし娘が留年したところ、今まで娘を支援してくれた友だちとのお付き合いを禁止されました。理由は新しい友だちができないからということでした。もし約束を守らなければ退学にすると、退学をほのめかされたこともありました。

▽改訂された教科書の情報がもらえず

私立中学校も本来教科書は無料です。ただ、すでに学校が人数分を注文した後に娘の留年が確定したため、改訂科目については教科書を購入する旨を学校側と合意していました。しかし、学校からは改定された科目について一切連絡はありませんでした。授業がはじまってから、全科目の教科書が改訂されていたことを知り、急いで全科目の教科書を購入しました。

▽「退学勧告には従うこと」との誓約書

留年する条件として、署名した誓約書には発達障害の娘には苦手なことが列挙されていました。改善する努力が足りないと教師が判断した場合、退学勧告には同意するといった内容でした。また遅刻をしたら退学にされても異論はないといった内容もありました。ですが、娘が決まった時間に登校したにもかかわらず、担任からは遅刻扱いをされ叱責されました。

▽別室で教師2名から長時間の持ち物検査を受ける

娘の学校には持ち物検査をするときは一斉にするという規定がありました。しかし担任はクラスの生徒たちを集めて、娘がスマホ違反をしていないか聞き、クラスメイトが「携帯を2台持っていたと思う」と話したため、娘だけ別室に移され教師2名から2時間以上にもわたる持ち物検査を受けました。一方で、担任は校内でスマホゲームをして遊んでいる生徒を見かけても見逃していました。

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娘は理不尽な扱いを受けるたびにとても傷ついていました。

――スクールハラスメントは最終的には解決しましたか?

ハラスメントに苦しみ文部科学省や都の相談窓口などにも相談しましたが「私立の学校は指導監督できません」との返事で、スクールハラスメントは解決しませんでした。最終的に娘は系列の高校に入学させてもらえず、他の高校へ進学しました。私立の先生方には法律や規律を守って責任を持って仕事をしていただきたいです。

――教師からスクールハラスメントを受けた場合どうすればいいでしょうか

教師からのハラスメントは一人で悩まずに周りに助けを求めてください。教師からハラスメントを受けている場合は証拠を残すためにもボイスレコーダーを持たせて、日々のやり取りを録音し記録に残してください。本来、学校とは子どもが安心して過ごせる場所でなければなりません。いかなる事情があろうとも、教師が子どもを傷つけていい理由にはなりません。親御さんはまずはお子さんの安全を最優先に考えてあげてください。

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この件について、東京都の私学課の担当者様に話を聞いたところ、私学で教師からハラスメントを受けても「私どもには私立学校への指導権限はない」とのことでした。

ただ、このような問題に直面したときの対応策として、「事前に学校側にしてほしいこと、お願い、聞きたいことをまとめた上で校長先生と話し合いをすること」を勧められ、「私学課から直接の指導はできませんが、学校の管理職の方へ保護者の方から相談があった旨はお伝えすることは可能です」との説明がありました。

もし学校を強制退学になる可能性がある場合「強制退学とは一番重い懲戒処分という扱いになり公式にも記録が残ってしまうので、その点も含めて一度法律の無料相談や教育に詳しい弁護士に相談してみてください」とのことでした。

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【私立の学校の窓口】
都道府県の私学課
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/009/001.htm

【国公立の学校の相談先】
都道府県の教育委員会
https://www.mext.go.jp/b_menu/link/kyoiku.htm

【法テラス】
https://www.houterasu.or.jp/index.html

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