【漫画】中学校の先生の言葉が、今も心をラクにしてくれる「まだ頑張れそうです」 漫画に託した作者の想いを聞いた

太田 浩子 太田 浩子

 約20年前の中学の入学式で、先生がかけてくれた言葉を描いた漫画が、ツイッターで支持を集めています。漫画を読んだ多くの人が勇気づけられたその言葉とは…。作者のイラストレーター・漫画家「キリ@月曜に犬のマンガUPする人(@kiriillust)」さんに話を聞きました。

 「いまも忘れられない、入学式での熱血教師の話」という6枚の漫画を投稿したキリさん。これから始まる中学生活に明るい気持ちになれない当時のキリさんが、入学式に出席しているところから漫画が始まります。

「ヤダな〜 友達できるのかなぁ。いじめられたらどうしよう…。小学校でもキツかったし、中学だってロクなもんじゃないに決まっている。」

 そこに、のしのしと壇上にあらわれた生活指導の先生が、大声で話を始めます。「ヒィ〜、熱血教師。私の担任じゃん〜」と追い打ちをかけられるキリさん。ところがその先生は「小学校生活は、ダサイやキモいなどと言ったり言われたりきつかったなぁ。おつかれさん!」と労い、中学生活もまだそういう気持ちに悩まされる…だから「クラスメイトは、漫画のキャラクターだと思え!!」「それが心をラクにするコツだ!」と話し、「でも困ったらオレに言えよ」声をかけたあと、またのしのしと退場していきました。

 その言葉を聞いた生徒たちは、人を否定するのではなくキャラクターとして受け入れればいいのだと気がつきます。クラスメイトのことを「なんとかキャラ」だと思えば、自分とは異なる部分も認めやすくなる。気軽なキャラ設定は生徒の心をラクにして、先生と一緒に笑顔になれたことが描かれました。最後にキリさんは「先生、私も大人になったけど あの心の持ち方は今に生きてます!」と締めくくっています。

 作者のキリさんは、普段は愛犬との暮らしを描いた漫画「豆しば こつぶ」を毎週月曜日に発表しています。いつもとは異なる熱血教師の漫画を投稿した理由について、「もしかしたら、この時の自分のような子が今もいるのでは? 漫画にしたら、そんな子に届いて、少しは楽になるかもしれない..」と思ったからだと話します。

「中学生の息子に見せたいと思いました✨ありがとう」
「職場でも通用しますよね。これ。先週から新しい職場で働いていますが、それぞれのキャラがあっておもしろい。自分は何キャラか?まだ馴染めてない気がするので素も出せていませんが…。これから見つけてもらおうと思います😁」
「今のクラス友達一人もいなくて過去一でツライけどこれ見たらなんか泣けてきた。良い先生だな…」
「なんだか泣いてしまいました。生活指導というと細かな生活のルールを話しそうなものなのに(大体が鬱陶しいし耳に入らないですよね)、思春期の子どもたちに対してなんて的確な祝辞なんだろうと。」
「キャラクターという言葉を使うことで、個性を受け入れさせやすく、かつ割りきりをさせたんですね。」
「なんてわかりやすい先生の言葉!✨👏 思春期の頃って自分と違うものへの 恐れとか残酷さとかあって それがイジメに繋がったりしますよねー 周りの子供たちにもぜひ伝えたいです」
「感動しました😭 まだ頑張れそうです 折れそうになったらまた見て頑張りたいと思います(´;ω;`)」

このように、キリさんの想いはしっかりと届き、中学生に限らず幅広い年齢層からコメントが寄せられて、17.5万を超える“いいね”がついています。

「思った以上に反響があって驚いてます。みなさんご自身の経験を書いてくださったり、良い先生だと褒めてくださったり感謝でいっぱいです。たくさんのご意見感想をいただき本当にありがとうございました。」(キリさん)

 コメント中で特に多かったのが、自分もこんな先生に出会いたかったというものです。先生との出会いは「運」だから、母親である自分が代わりに伝えて味方になりますというコメントもありました。

 この時期の教師の影響力は大きく、救われることも傷つくこともあります。今の子どもたちに、キリさんのように宝物になるような先生との出会いがあることを願わずにはいられません。キリさんは今でも、嫌なことを言われた時などに先生の言葉を思い出して心をラクにしているそう。

 入学式で先生の言葉を受けたあとのクラスは、どんな雰囲気だったのかキリさんに聞きました。

「毎日めまぐるしく状況が変わっていく中学生の時期ですから、漫画のようにはいきませんが、先生の存在はやはり大きくて、熱血先生のクラスの時は他の時期に比べダントツで過ごしやすかったので今でも感謝しています」

 ツイートが話題になったことがきっかけで、後日、熱血先生と電話で話すことができたキリさん。「熱血先生も私がこの話を覚えているとは思ってもなかったようで、今回話題になったことをお伝えしたら喜んでくださいました」。熱血先生は校長先生になり、3月に定年退職されていました。先生は、これまでのキリさんの頑張りに「おつかれさん」と変わらないあたたかい言葉をかけてくれたのだそう。会話の詳しい内容は、キリさんのnoteにまとめられています。

■「今も忘れられない熱血教師の話〜その後約20年ぶりの会話〜」(note) https://note.com/kiriillust/n/n71673aa75267

■「豆しば こつぶ」(cakes連載) https://cakes.mu/series/4190

■単行本「豆しば こつぶ ––はじめまして」(Amazon) https://www.amazon.co.jp/dp/4863111940

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