業界初!? 期間限定で近江牛のTボーンステーキが食べられる焼き肉店 大阪・北新地

山本 智行 山本 智行

 イタリアンテイストを取り入れた大阪・北新地の高級創作焼肉店「北新地はらみ」が近江牛のTボーンステーキを新たなメニューに加え、業界をざわつかせている。すでにディナーコースとして「はらみ本店」「はらみ別邸」で提供。食通や肉好きをうならせている。焼肉店が国産和牛三大ブランド「近江牛」をTボーンの形で出すのは極めて異例なんだとか。期間は6月12日まで。理由を確かめるため、早速、のぞいてみた。

 焼肉店がTボーンステーキを出す。あの近江牛とはいえ、肉つながりだから「当たり前やん」「驚くほどでもないか」と思っている、そこのあなた。それは間違い。物事はそんな単純ではないようだ。

 まずは取り巻く環境が変化したことが大きい。例のBSE問題で制限されていた国産の骨付き肉の提供が2年前に解禁され、下地が整った。「北新地はらみ」グループのマネジャーでJSA認定ソムリエの岡田洋明さんが言う。

 「お客さまにおいしいもの、驚いてもらえるようなものを出せないか。新たなメニューを考えているときに、何とかTボーンステーキを、という思いは常にあったんですよ」

 構想2年!可能にしたのは仕入れルートの確保だ。新鮮なままの状態で50キロに相当する半頭買いができることとなり、道が開けた。

 「冷凍では肉の良さを保てないんです。解凍すると、水分が出るときにうま味まで抜けてしまいますから。これだけの量の近江牛を安定的に仕入れるのは結構大変なんですよ」

 その上、骨を切断する作業は文字通り、骨が折れる。実際に電動ノコギリを使ってカットしていく現場を見たが、かなりの重労働。これも焼肉専門店が嫌がる理由のひとつだが、ここでは料理長の笠井学さんはじめ、スタッフみんなどこか楽しげに取り組んでいた。

 そこまでして提供したいTボーンステーキ。その名の通り、肉にT字の骨がつている。魅力はジューシーなサーロインと、やや少なめながらあっさりしたヒレの部分に分かれており、一度に2種類を味わうことができるところだ。”肉の王様”と言われるのも分かる気がする。

 それがまた近江牛(滋賀)というのだからたまらない。何しろ、近江牛は松阪牛(三重)、神戸ビーフ(兵庫)と並んで三大ブランド牛とも言われ、その歴史は約400年。肉禁食の江戸時代に彦根藩から味噌漬けにした牛肉が将軍家に養生薬として献上されていたという。

 一方の「北新地はらみ」は大阪の老舗イタリア料理店「ポンテベッキオ」で修業した服部融快(ゆうかい)さんがプロデュースし、2017年7月にオープン。希少部位のハラミを中心にこれまでの焼肉店になかった高級感とイノベーティブさを提供することでたちまち人気店になった。余談ながら新地界隈では3階までの高さがある玄関扉が話題にもなっている。

 今回、Tボーンステーキをいただいた「北新地はらみ別邸」は2018年7月にオープン。こちらは一段と高級感があり、紹介制で完全予約制となっている。お肉はスタッフが焼いてくれ、仕上げにブランデーでフランベすることで肉のうま味を包み込み、外はカリッと、中はジューシーなまんまでいただくことができる。見ているだけで思わず口元が緩むが、口に運ぶと至福の極み。あぁ、この世に生まれて良かった~。

 しかも、焼肉店ならではの良さは、皿にもられたお肉の焼き加減を自分好みにアレンジできるところ。さらにサーロインの霜降りを味わいつつ、ヒレの良さも同時に堪能できるのだからもう何も言うことはない。

 Tボーンステーキを提供している店は数あれど外国産がほとんど。店側によると「焼肉店で近江牛の、となると初めてでしょう」とのことだった。すでに「北新地はらみ」「北新地はらみ別邸」では自慢のハラミ料理もついた「Tボーンステーキコース」(1人前1万6500円、税別)を用意。6月12日まで期間限定で提供する。

 なんだ。6月で終わりと残念に思っているあなた。その心配は無用だ。うれしいことに9月、北新地でTボーンステーキがメインの「IAKU」をオープンするとのこと。いまから待ち遠しい。

北新地はらみ 電話06-6341-4118
北新地はらみ 別邸 電話06-4256-8505

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